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テーマ:本のある暮らし(4604)
カテゴリ:Business
・小井土正亮の『「教える」を手放す 人とチームの自律を引き出すコーチング』、本書の出発点は、とてもシンプルだ。人を成長させようとして、つい「教えすぎてしまう」問題である。上司は部下に正解を教える。リーダーはメンバーに細かな指示を出す。経験者は新人に自分の成功法則を伝える。一見すると親切な行為だ。しかし、それを続けるほど、相手は「自分で考える」機会を失っていく。小井土正亮が提唱するのは、そこで一歩引くこと。「教える」ことを完全に否定するのではなく、相手の中にある答えや可能性を引き出し、自ら考え、行動できる状態をつくる。そのための方法として、コーチングの考え方を個人だけでなく、チームづくりにも広げていく。 ・マネジメントにおいて、最も難しいのは「何を教えるか」ではない。「いつ教えないか」である。経験のある上司ほど、自分の中に答えを持っている。だから部下が困っていると、「こうすればいい」「自分ならこうする」と、すぐに答えを渡してしまう。短期的には仕事が進む。しかし長期的には、部下が「上司に答えをもらう」ことに慣れてしまう。本書が目指すのは、この関係から抜け出すことだ。答えを与える人から、問いを投げる人へ。これが「教える」を手放すという言葉の核心にある。 ・コーチングとは「何もしない」ことではない。ここは誤解してはいけない。「教えない」というのは、放置することではない。むしろ、相手をよく観察し、問いを投げ、話を聴き、必要なときには支援する。つまり、口を出さないことではなく、口を出す目的を変えることが重要になる。「どうすれば正解を教えられるか」ではなく、「どうすれば本人が自分の頭で考えられるか」を考える。この視点に立つと、上司の役割も変わる。 ・本書で重要なのが「自律」という考え方だ。自律とは、単に自由に行動することではない。自分で考え、自分で選び、自分で決め、その結果に責任を持つ。つまり、主体的に仕事を進められる状態だ。組織にとっても、この自律性は極めて重要になる。上司がすべての判断をしなければ動かないチームは、規模が大きくなるほど限界がくる。逆に、一人ひとりが状況を判断し、互いに連携できるチームは、変化に強い。 ・『「教える」を手放す』は、「部下に何を教えるか」を説く本ではない。「部下が自分で考えられる環境を、どうつくるか」を考える本だ。優秀なプレイヤーほど、管理職になった瞬間に「自分の正解」を手放す必要がある。自分が答えるのではなく、問いを置く。自分が動かすのではなく、動ける環境をつくる。自分が成果を出すのではなく、他者が成果を出せる状態をつくる。30代・40代のビジネスパーソンにとって、本書の本当のメッセージはここにある。リーダーの仕事とは、前に立って人を引っ張ることだけではない。一歩後ろに下がり、相手が自分の足で歩き始めるのを待つことでもある。「教える」を手放すことは、リーダーとして何もしなくなることではない。むしろ、自分がいなくても人とチームが動く未来をつくることなのだ。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2026.09.09 00:00:15
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