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テーマ:本のある暮らし(4598)
カテゴリ:Life
・つみきちの『知らない間に嫌われる言葉、話すたびに好かれる言葉』、本書は、「言葉遣いのマナー」を説く本というより、善意がなぜ人を傷つけるのかを考えるコミュニケーション論だ。2026年4月刊、サンマーク出版。著者のつみきちは、一般社団法人好かれる言いかえラボ代表理事で、セミナー講師、司会者、元ラジオパーソナリティ。109個の具体的な「言いかえ」を通して、人間関係のすれ違いを減らすことを目指す。 ・本書は、物語のような筋書きがある本ではない。中心にあるのは、日常の何気ない一言だ。「励ましたい」「褒めたい」「感謝したい」「謝りたい」「共感したい」。その気持ちは本物なのに、言葉にした瞬間、相手には別の意味で届いてしまう。 たとえば、 ー「緊張しなくていいですよ」→「緊張しちゃいますよね」 ー「○○しないでください」→「○○してもらえると助かります」 ー「待たせてごめんね」→「待っててくれてありがとう」 ー「若いのにすごいね」→「素晴らしい成績だね」 といった具合に、ほんの少し言葉の向きを変える。本書が扱うのは、単なる言い換えの技術ではない。「自分の意図」ではなく、「相手にどう届くか」まで考えて話すことが、人間関係を変えるという発想だ。 ・「悪気がない」は免罪符にならない。本書の最も重要な指摘はここにある。人間関係のすれ違いは、「そんなつもりで言ったわけじゃない」という言葉から始まることがある。話し手に悪意がなくても、受け手が傷つくことはある。「頑張って」と励ましたつもりが、「まだ頑張りが足りない」と受け取られる。「緊張しなくていい」と安心させたつもりが、「緊張しているのは弱いことだ」と感じさせてしまう。つまり、意図と伝達結果は同じではない。これは仕事でも極めて重要な問題だ。 ・本書の言い換えには一つの共通点がある。それは、相手を評価する言葉から、相手と同じ側に立つ言葉へ移動していることだ。「緊張しなくていい」は、話し手が相手の状態を評価している。「緊張しちゃいますよね」は、相手の感情を受け止めている。「待たせてごめん」は、自分の非を中心に置く。「待っててくれてありがとう」は、相手の行為に光を当てる。つまり好かれる言葉とは、単に耳当たりのいい言葉ではない。相手の尊厳を守る言葉なのだ。 ・タイトルだけを見ると、「人に好かれるための処世術」に見える。しかし、本質はそこではない。むしろ重要なのは、自分の気持ちを捨てずに、相手へ届く形に変換することだ。言いたいことを我慢するのではない。厳しいことを言わないのでもない。同じ内容でも、「あなたは間違っている」ではなく、「こうしてもらえると助かる」と表現する。これは相手への配慮であると同時に、自分の要求をきちんと伝える技術でもある。 ・本書の強みは、難しい心理学理論を振りかざさず、「たった一言の違い」が人間関係を変える瞬間まで問題を小さくしたことにある。一方で、109個の言い換えを覚えるだけでは、本質には届かない。重要なのは「正解の言葉」を暗記することではない。相手は今、どんな気持ちでこの言葉を聞くのか。そこを想像する習慣を身につけることだ。つまり、本書の本当のテーマは「言い換え」ではなく、他者への想像力にある。 ・『知らない間に嫌われる言葉、話すたびに好かれる言葉』は、「好かれるために何を言えばいいか」を教える本ではない。善意を、善意のまま相手に届けるためにはどう話せばいいかを考える本だ。仕事でも人生でも、関係を壊すのは大きな失言とは限らない。むしろ、毎日の小さな一言が、少しずつ人との距離を決めていく。だから本書の最も大切なメッセージは、「何を言ったか」だけでなく、「相手にどう届いたか」までが、自分の言葉の責任であるという一点にある。
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Last updated
2026.09.12 00:00:09
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