Book #0804 確率思考の戦略論
・森岡毅・今西聖貴『確率思考の戦略論 どうすれば売上は増えるのか』は、V字回復や再建を果たしたUSJや丸亀製麺などを題材に、「売上とは選ばれる確率を高めるための戦略ゲームだ」と数学的視点で説いた現代のマーケティング書である。・「売れるとは何か?」を確率で定義する。売上は「認知(Awareness)×流通(Distribution)×好意・支持(Preference)」の掛け算で構成され、森岡は特に最後の“選ばれる確率”=プレファレンスを最大化することが肝要だと主張する。・「狭めず広げよ」「重心を衝け」。戦う市場は「コントロールできる領域」に絞り、認知と流通は現状の延長として維持しつつ、プレファレンスを拡張することに集中する。特に水平展開=潜在層へのリーチ拡大を重視しつつ、ブランドの“重心”を明確に据えることで、戦略の軸が定まっていく。・コンセプトこそが確率を動かす鍵。第2・3章では「強いマーケティング・コンセプト」の設計法を丁寧に解説。消費者理解に根ざし、ブランドが“選ばれる脳内記号”となる仕掛けを施すことで、プレファレンスで優位に立つ構図が描かれる。・数式よりも人間の意思、その熱を。数理モデルや統計手法(ポアソン、負の二項分布など)を駆使しつつも、森岡は「数字に熱を込める」ことの重要性を繰り返す。理詰めの先にある泥臭い意思、仮説–検証–改善を回す実行力、そしてマーケターの覚悟こそが、成果を生む本質として描かれている。この本は、仕事や組織、家庭とのせめぎ合いの中で「やり方」ではなく「勝つ確率」を設計したい世代の指南書だ。感情や雑音に左右されず、数字と熱を交錯させながら、「どう戦うか」ではなく、「どう勝つ可能性を高めるか」を読者に突きつける。・『確率思考の戦略論 どうすれば売上は増えるのか』は、売上を数学で捉え、戦略を科学として構造化し、その奥にある“意思”と“覚悟”を描く現代の教科書である。それは、数字と泥臭さの間で自らの軸を研ぎ澄ますための、重厚な羅針盤となる一冊である。確率思考の戦略論 どうすれば売上は増えるのか [ 森岡 毅 ]価格:3,630円(税込、送料無料) (2025/6/18時点)楽天で購入