論理が飛躍しているのに、それと気づかないとき、人は最も危ない。ちょっと古い話だが、90年4月、オウム真理教の麻原彰晃が「オースチンすい星の接近で、日本に天変地異が起こる」と予言し、これを信じた信徒ら約1000人が石垣島に集まったことがあった。海岸でテントを張って2日間セミナーを開いたが、当然何も起こらなかった。こんなバカげた説明を信じ、麻原の飛躍した論理を見抜けなかった人が1000人もいたということに驚いてしまう。後日分かったことだが、教団はその日、東京でボツリヌス菌をばらまいて人為的な大災害を仕掛けるつもりだった。そんな古い話を思い出したのは、きょう「人はウイルスで進化している」(鏡玄泉著)という本を読んだからだ。タイトルに騙されてこの本を手に取った人が、石垣島に駆け込まないか真剣に心配してしまった。著書の内容を私なりに解釈すると、「生物はウイルスによって突然変異的に進化してきた。いまその最終段階にあり、次のウイルスによって生き延びる人と滅びる人の選別が始まる」ということ。最近のエイズや鳥インフルエンザ、SARSなどを例示し、「地球上の天災や地殻変動が30年で4倍になった」と不安をあおっている。そして、そこから論理を飛躍させ、「2012年12月23日までに人類の歴史に一区切りつきます」とかなんとか結論づける。さらに「惑星ニビルの影響か分かりませんが、20世紀の終わり頃から地球全体のエネルギーが上がっています」???。論理的に十分説明できないとき、その間を抽象的な表現で埋める場合が多いが、この本はその悪い見本だといっていい。著者こそ石垣島に行って一晩瞑想にふけってきた方がいい。こんな非科学的な本が図書館などで「自然科学」に分類されているから困ったものだ。自然科学の本は、副詞や形容詞を使わなくても十分説明できるものだし、説明できなければならない。
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最終更新日
June 25, 2004 12:25:46 AM
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