イタリアでモロッコごはん

今日は衛生学のテストの日！

もう一週間程前から学校のみんなは

「どうしよう、テストのことを考えると頭痛いわぁ。」

「朝働いて学校に来て夜は家仕事して、いつ勉強しろってのよ！」

「ねぇ、あなた勉強した？」

「20年もテストなんて御無沙汰しているのに
　どうやって机にかじりついて勉強しろっていうのよ！」

と、うるさいうるさい。

みんな腹に抱えている思いを誰に聞かせるでもなく吐き出している。


この誰に聞かせるでもない大きな声の独り言は
イタリア人の得意とするところ。

日頃から別に誰に言うでもなく、授業で先生が説明中でも
ガンガン自分の言いたいことを発言している。

それは先生の説明している内容を聞いて思い出した
全く関係ないコトだったり、突然思いついたジョークだったり...。

みんなの発言（独り言？）に本気で耳を貸していたら
全然授業が進まないので、先生はソレをほぼ無視して説明を続ける。


日本人の私は殆どそんな独り言は叫ばない。
みんなにとっては恐らく吐き出さなければ気持ち悪い独り言も
私にとっては「叫ぶ」ことは「ムダな体力を使う」こと以外の何モノでもないのだ。

したがって、
「Delizia、あなたいつも静かね。」
「日本人ってみんなこうなの？」

などとよく言われる。
日本人は少なくとも授業中は叫ばない気がするけど...。


さてさて、テスト前でみんなの気が立っていて
どうにも叫ばなければいられない状況らしい時も、
私は叫ばなかった。


すると、みんな私に脅威を抱き始めた。

「ねぇ、Delizia、あなたはもう、大学時代にやった内容だから
　テストなんてバッチリなのよね？」

おいおい、私は余裕があってフフンと静かにしているわけじゃないのよぉ～っ！


全文イタリア語のノートをチラリと見るのでさえ怖くて
毎晩何か理由をつけては勉強から逃避しているのに...。

叫ばないのは、ただでさえ無い体力をムダに消費しないためなのよぉ。

イタリア人に混じって学校にいるだけで
エネルギーすり減らしているっていうのに...。

ハァ。

こういう風に胸の内で思っていることは
イタリア人の前で叫ばないことには伝わらない。
疲れる...。


でも私は胸の内で思っていることとは裏腹に
態度はデカイのでさらに周りの人には脅威を与えてしまうらしい。

昔から「テスト」とか、みんながビクつくことに構えたことがないのだ。
「緊張感」が無いというか、結果を気にしないというか。
極論を言うと、どうでもいいというか...。


結局、このテストに向けての勉強も、逃げに逃げて
テスト前日にやっと始めた。

ら、やっぱりイタリア語で取り組む勉強は普段の3倍時間がかかり
たったの４ページ分しか勉強できず、その後に続く膨大な量の課題は
バスの中でとりあえず読もうと、ほぼ放棄したのである。



やってきましたテストの日。

衛生学のテストは５時半から。

２時半から始まる栄養学の授業には、半分の人しか来ていない。
みんなこの授業はサボッて家で勉強して５時半に間に合うように来るらしい。

一週間前から叫び続けたみんなは、今日は緊張のあまり静かにしている。
訴えるのは「気分が悪い」だの「頭が痛い」だの
叫ばずにみんな低い声で吐き出している。

テスト勉強を始めるのも遅すぎたし
ほぼ諦めモードのDelizia。
０点じゃないといいな...などと思っていたところに
教室に事務員のオバサンが入ってきた。


「え～っと、衛生学の先生だけどね、
　熱を出されたらしくて、
　今日は休講です！」


......


「キャ～！」
喜びのあまり、ここぞとばかりに叫んだDelizia。

しっかり勉強してきた人は
「え～っ！またこの緊張を来週まで持ち越すのぉ～？」


どうやらココロから喜んでいるのは私だけ？

みんなは直前の緊張が体に悪いと、どうやら早く終わらせたかった様子。


そこに家でひとしきり勉強してきたガブリエレが到着した。

「先生熱出してテスト延期だってよ。」

「え～っ！昨日から寝ないで勉強したのに！」


なんとも皮肉な結果となりました。

ぐうたらDeliziaに勉強の時間を与えていただきありがとうございました！


でも来週は栄養学のテストもあるのでダブルパンチ。
気合入れてがんばりやす。