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天の道を往き、総てを司る

天の道を往き、総てを司る

第4話 ギガノスの青き鷹

「とりあえず・・・脱出出来たな」

そう言ってフラガがため息をつく。
なんとか脱出に成功し、緊張の糸が切れたのか他のクルーもその一言で全身の力が抜けたように体をシートに沈める。

「まだ気を抜くには早いぞ。レーダーからは目を離すなよ」

気が緩みすぎないようナタルが釘をさす。

「脱出には成功しましたが・・・・これからどうします?物資も詰めるだけ詰めましたが・・・十分ではありませんし」

ダグラスが難しい顔でマリューに言う。
モルゲンレーテから物資を詰めるだけは積むことが出来たが十分ではなく、特に機体の予備パーツなどが不足している。
アークラインは元々が連合軍で少数生産されているPTゲシュペンストのカスタム機であるために今ある分が無くなってもどこかゲシュペンストが配備されている部隊から部品を分けてもらえればある程度パーツ流用が聞くがストライクやD兵器はそうはいかない。
ストライクは最新鋭の機体でありモルゲンレーテにあった予備パーツは工場の全壊でほぼ失われただでさえ予備パーツが少ない試作器なのに数が不足。メタルアーマーであるD兵器も同様だ。
メタルアーマーのメインフレームは全て共通の物であるために敵機を拿捕したりデブリとなっている機体を回収すればなんとかなるが細かいパーツや装甲までは手元にある分だけで手一杯だ。
機体だけでは無い。アークエンジェル自体の弾薬や予備パーツ、もっとも重要である食料と水なども十分な量を詰め込めていないのだ。
このままでは貧困で全滅してしまいかねない。近くの連合基地か何処かで補給を受けられればよいが・・・・・・。

「そうね・・・・何処かで補給を受けたいところだけど・・・・・・」

「艦長、自分はフロンティアサイドへと向かうことを具申します」

「フロンティアサイド?」

マリューの言葉にナタルが頷く。
コントロールパネルを叩き、メインモニターに詳細を表示する。

「フロンティアサイドは連合所属のコロニーです。此処でなら、ある程度の補給は見込めると思いますが・・・・・・それにサナリィ支社もありますし」

サナリィとは連合のMS開発を請け負っている民間企業の事だ。
15年前から現在まで連合軍主力の座を守っているMSドートレスもサナリィの開発である。最近はPT開発にも手を伸ばしているらしく少数のゲシュペンストが配備、さらにドートレスに続く次期主力MS候補まで配備されていると聞く。

「なるほど、ストライクのはともかく。アークラインの予備パーツは手に入る可能性あるって事ね」

「D兵器の予備パーツはどうします?」

「そりゃ、その辺を漂ってるメタルアーマー回収してバラせばなんとかなるんじゃねぇの?」

「確かに、メタルアーマーのメインフレーム部分だけならばそれで何とかなりますが・・・・」

「なら、決まりだな。とりあえず何でもいいから補給を受けなきゃ始まらん。」

フラガはそう言ってマリューを見やる。マリューも頷き指示を出す。

「本艦はこれよりフロンティアサイドへと向かいます。進路を取れ、アークエンジェル発進します」

マリューの指示でアークエンジェルはフロンティアサイドへと航路を向けた。


格納庫の隅っこに山積みにされた小さなコンテナの上でキラ、ケーン、タップ、ライトは疲れ切った表情でダウンしていた。

「疲れたぁ・・・・」

「「「右に同じ・・・・」」」

キラに続いてケーン達も呟く。
機動兵器の操縦というのはかなり疲れる行動なのだ。4人はいきなり乗って実践を経験した疲れるのも無理はない。

「ケーン達は良いよねぇ・・・・基本動作は全部サポートコンピュータがやってくれるんだろ?」

「まぁな、それでも疲れるんだよ。基本動作はともかく細かい制御はほとんどこっち持ちなんだぜ?」

と、すでに10分ほど愚痴りあっている。
整備員はその4人に見向きもせず機体の整備を行っている。

「こんなのが月に着くまで続くのか・・・・だりぃ・・」

と、ケーンが両手を大きく広げコンテナの上に寝っ転がる。タップ、ライトもそれに続き寝ころぶ。
キラも寝っ転がりながら先の戦いで思わぬ再開を果たした友人の事を思い出していた。

(アスラン・・・・なんで君がザフトにいるんだよ・・)

「これはまた・・・見事にダウンしてるわねぇ・・・・」

コンテナの上に寝っ転がっている4人の所にクレアがトレー片手に歩いてくる。
トレーの上にはミネラルウォーターが入ったボトルが丁度5つ用意されておりクレアはそれをキラ達に手渡して自分もコンテナに座る。

「とりあえず、お疲れ。初陣にしちゃ良い方だったわよ」

「そ・・・そうっすか?」

「ええ、結構いい線いってたと思うわ。はっきりいって下手に士官学校出てきた連中よりは数倍以上マシよ」

何気なくクレアは士官学校で頑張ってきている人たちの努力を一蹴するような発言を口にする。

「えっと・・・名前なんでしたっけ?」

「クレアよ。クレア・レナード」

「クレアさんは士官学校出てないんですか?」

ライトの疑問はもっともだ。士官学校出ならばそのように士官学校を馬鹿にしているような発言はまずしないだろうと思っているからだ。
それに対しクレアは素っ気なく答える。

「出てないわよ。なんてゆーか・・・・小さい頃から軍の遊撃隊みたいな所にいたから自然と軍人になってたって言うか・・・・・俗に言う現場の叩き上げって奴よ」

見た目、自分たちと対して年齢が離れていないだろうクレアが叩き上げで少尉にまで上り詰めてるだけでかなり凄いのだが小さい頃から軍に居たという方が彼らを驚かせた。
一体どういう経験してきたのだろうか。

「ところで・・・・君、さっきから顔真っ赤だけど・・・どーしたの?」

クレアがキラの顔を覗き込む。先ほどからキラは顔真っ赤にして黙り込んでミネラルウォーターをひたすら飲んでいる。
その理由が自分にあるなどクレアは思ってもいない。今のクレアはパイロットスーツを着ているのだがジッパーを降ろし上半身の部分だけ脱いで黒のタンクトップというラフな格好なのだが・・・・・・。
一般レベルで美少女の部類にはいるクレアは女性としては理想的なスタイルをしている。それがシャツの上からでもしっかりと確認出来る上に多少の色気(本人は自覚なし)を出しているため真横に座っており、こういう事に対して免疫が皆無なキラは緊張のあまりに黙り込んでいるというわけだ。
クレアを初めて見たとき(綺麗な人だな~)と思っていただけにキラの緊張はもの凄い事になっている。無論、クレアはそんなこと知らないわけで。

「お~い。生きてる~?」

と顔を覗き込んでいるのだからキラはますます顔を真っ赤にし黙々とミネラルウォーターを飲む以外に何も出来ない状況に陥っていた。
ちなみにそれを見ていたケーン達3人組はその様子をケラケラ笑いながらトール達にも話して笑いの種にしてやろうともくろんでいた。


ヴェザリウスブリッジではクルーゼとアデスが難しい顔で現在の状況報告を聞いていた。
手持ちのジンは残り2機、シグーは両腕損失、奪取したばかりのデュエルは左アイカメラ損傷、バスターに至っては腹部装甲被弾、右肩駆動系及び各所の配線が千切れるなど散々な姿になっている。
戦死者も少なくはない。もっとも、ディアッカはヘルメットの中で戻してしまったためにある意味で死以上の苦痛を味わったのだが。
一番酷いのはヴェザリウスとガモフだ。直撃しなかったとはいえ陽電子砲の攻撃を貰ったのだ、その損傷は決して軽くは無い。今も応急措置でなんとか航行している状態だ。

「最悪だな・・・・・まさか、返り討ちにあうとは思っても見なかった。」

クルーゼが呟く。自信たっぷりに出撃してこのざまだ。表情には見せないが内心穏やかでは無いだろう。

「例え戦闘データがあろうとも、私は軍の笑い者決定だよ、これでは」

(ただでさえ、嫌われてるのだから長い事笑われるのだろうな)とアデスは胸中で呟く。
クルーゼはザフトの中でもトップレベルの部隊を率いる優秀な指揮官であると同時にトップレベルの嫌われ者でもある。
というより、彼を好いている人間がいるのだろうか? とも一時期、真剣に考えたこともアデスにはある。

「一度、本国へ帰還するしかないでしょうね」

「ああ、これでは追撃したくてもできんしな・・・・しかし、アレを放っておくのは面白くない」

そう言うとクルーゼはしばらく考え、通信士に話しかける。

「ギガノス軍巡洋艦フンボルトがこの近くの宙域にいたはずだ。連絡を取れ」

「ギガノス軍に連絡を取るのですか?」

「ああ、ザフトとギガノスは同盟関係にある。手柄は逃すがあの戦艦はいずれ我々の驚異となり得る。早いうちに始末せねばな」

そう言いながらもクルーゼは内心、ザフトの事などどうでもよく思っている。
はっきり言ってザフトが戦争に勝とうが負けようがクルーゼはどうでも良いのだ。
しかし、今はまだ自らの目的のためにザフトは必要だ。それにアークエンジェルが驚異になり得ると言う評価は本心からの物である。ザフトではなく、自らの驚異になり得るからなのだが・・・・・・。

「それに、フンボルトには・・・・今、鷹がいるはずだ」

クルーゼの言葉を聞き、アデスはもちろん他のクルーも目を見開いた。

「鷹・・・・マイヨ・プラートですか?」

改めてアデスはクルーゼの狡猾さというか何というか・・・・・・ある種の執念深さに驚いた。
ギガノスの青き鷹、マイヨ・プラートといえばギガノス軍最強とも言われるエースパイロットである。彼が率いる一個小隊が連合軍の艦隊を全滅させたという恐るべき戦績すら持つ。
ナチュラルだがその腕はザフトの誰もが認めている。クルーゼも一度だけ模擬戦で戦ったのだが全く互角の勝負を展開したのだ。その勝負は結局引き分けに終わったが下手すれば負けていたかもしれないと思っている。
クルーゼはその日以来、フラガ以外に認める二人目のナチュラルとして彼の名を刻んでいる。もちろん、自らの驚異となり得るのでいずれ消えて貰う存在なのだが。

「ああ、あの戦艦・・・・いつまでの名前が無いと敵とはいえ不便だな。これより足つきと呼称するが・・・・。そのデータを送ってやれば鷹も動くだろうさ」

アークエンジェルの形状を思い出しながら言う。あの戦艦のカタパルトがまるで足のように見えるから足つき とストレートなネーミングだが敵艦のコードネームなどこんなものである。

「データを・・・そういえば、足つきの戦力にメタルアーマーが3機いましたな・・・」

「案外その3機。ギガノスにとっては大きな落とし物かもしれんぞ」

クルーゼは含み笑いを浮かべつつ呟く。
その様子をアデスは不信感混じりの視線で眺めていた。


ヴェザリウス談話室。
アスラン、イザーク、ディアッカ、ニコル、ミゲルの5人は其処に集まっていた。戦闘後、此処に集まるのは彼らのお約束のような物である。

「で・・・ディアッカは戦闘中に戻したってわけか」

戦闘での出来事を聞いたミゲルが笑いながらディアッカをからかう。
帰投した彼のヘルメットは胃液と消化されてなかった食事にまみれておりメカニック全員、彼の身を心配すると同時に笑い者にしていたのだ。
アカデミーからのつきあいであるアスラン達も同じである。

「お前ら・・・人ごとだと思って笑いやがって・・・・」

「フン、戦闘中に戻したキサマが悪いんだよディアッカ。無様だな」

イザークがクールな表情を崩さずに冷たく言い放つ。表面上はクールだが内心は腹がよじれるぐらいに笑っている。

「イザーク・・・・お前、覚えてろよ」

皆がディアッカを笑い者にしている中、アスランだけは深刻な表情を浮かべ窓の外の宇宙空間を眺めていた。
連合のガンダムに乗っていたキラ。なんで奴が連合の機体に・・・・・・。

「・・・・クソッ!!」

苛立ちのあまり拳を近くの自販機へと思いっきり叩きつける。
ドンッ!!という大きく響く鈍い音に何事かと4人はアスランへと視線をむける。

「アスラン・・どうしたんです?」

ニコルが心配そうな表情で話しかける。
アスランは深呼吸してから顔をむけ答える。

「いや・・・なんでも無い」

そう言って拳を自販機から離す。と同時に自販機のスイッチが狂ったように連続して光り出し取り出し口から中身である缶飲料があふれ出る。

「「「「「あ・・・・・・・」」」」」」

蛇口を全開で捻った水道の水のごとくあふれ出しアスランの足下に散乱する無数の缶飲料。
その後、駄目になったこれらの飲料の代金そして自販機の修理費はアスランが全額負担した事は言うまでもない。


ギガノス軍巡洋艦フンボルト。
下手なコロニー並の・・・・・・というか見た目はコロニーそのものである巡洋艦のブリッジのシートに腰掛けている艦長らしき中年男性にオペレーターが報告を入れる。

「艦長、ザフト軍クルーゼ隊のラウ・ル・クルーゼ隊長から入電です」

「クルーゼから?」

それを聞き、艦長は明らかに不満そうな顔を浮かべる。
クルーゼはザフトだけでなくギガノスからもトップレベルで嫌われているのだ。下士官やパイロットの間でこっそりと行われた「上司にしたくない男ランキング」ではダントツで一位をキープしている。
ちなみに2位との票差は500以上に及ぶとか及ばないとか。

「・・・内容は?」

「はっ、連合軍の新型戦艦の迎撃要請ですね・・・・コードネーム足つきとあります。データをモニターに表示します」

ブリッジのメインモニターにアークエンジェルとクルーゼ隊の交戦記録が映し出される。
それには艦長だけでなくブリッジクルー全員が息をのんだ。ジンはおろかクルーゼのシグーまでも退ける性能を持つ機動兵器が5機。
更には陽電子砲を装備し凄まじいまでの対空砲火能力。今までに自分たちが相手にしてきたどの戦艦とも違う。
中でも一番興味を引いたのはガンダムではなく3機のメタルアーマーだ。

「D兵器・・・・クルーゼに少しは感謝せんとな。ますます嫌いになったが」

艦長が忌々しげに呟く。
モニターに写っているメタルアーマーは数ヶ月前、ギガノス本国から何者かの手引きにより連合の手に渡ってしまった最新鋭機なのだ。
その手引きをした内通者は連合に亡命してから数日後に何者かに暗殺されたがメタルアーマーの所在まではつかめなかった。
そのメタルアーマーが連合の戦力として運用されている映像を見せらたのだ。もちろんクルーゼの嫌みなのだろうがこれはこれで感謝するべき情報だ。

「すぐに大尉に報告しろ。戦闘になるぞ」

「ですが、足つきの航路が・・・・」

「おおよその検討はつく。それよりも大尉に報告しろ」

「はっ!」


フンボルト居住区に設けられた一室。
部隊指揮官の為に用意された広くそれなりに豪華な装飾が施された一人部屋だ。無論、フンボルトの某木星帰りの船並のサイズというデタラメな広さのお陰で用意できた広さである。
その一室の奥におかれた机の上で山積みにされた書類とにらみ合いを続ける一人の男の元へ艦内通信が届く。

『マイヨ・プラート大尉。至急、ブリッジまでお越しください』

それを聞き、男は書類とのにらみ合いをやめペンを置く。
この男こそ、ギガノスの青き鷹と呼ばれるマイヨ・プラートである。

「・・・書類の整理も満足に出来んとは・・・・わかった、すぐに行く」

通信を切り、席を立つ。
本国から久しぶりに戻ってすぐに貯まっていた書類の整理を始めたのだが途端にブリッジへの呼び出し・・・・・・忙しい事このうえないと心の中で呟く。
部隊長と言えば聞こえは良いが実際は雑務に追われて大変なのである。
いつまでも心の中で愚痴っても仕方がないのでマイヨは部屋を後にしブリッジへと向かった。


ブリッジにあがったマイヨは早速、言葉を失った。
メインモニターにはクルーゼ隊のMSを退ける連合の新型機動兵器。そして・・・D兵器が写っていたのだから。
マイヨはD兵器に対し浅からぬ因縁を持っている。D兵器を連合に手渡した亡命者というのが彼の実父、ラング・プラートであるからだ。

「D兵器に関する情報をこんな形で手に入れるとは・・・・・不本意だがクルーゼには感謝せねばな」

情報を送ってきた相手がクルーゼだというのは気に入らないことこの上ないがそれでも感謝せねばなるまい。
マイヨとしてはD兵器へのケジメを付けたいと心の底から願っていた。父親の裏切りという事件で彼は上層部から疎まれる存在になっているがそれでも下士官達の信頼が厚く今でも失脚せずにこうして大部隊を率いている。
自分を慕ってくれている下士官達やギガノス軍総統、ギルトール総帥への忠義の為にもD兵器へのケジメは必ず自分の手でつけねばならないのだ。

「艦長、足つきの航路の目星は?」

「あの状況から見て満足な物資はつめれてないでしょう。おそらく手近な連合のコロニーなりに補給を受けにいくと」

「ふむ・・・ヘリオポリスから一番近い連合のコロニーは・・・・」

オペレーターがヘリオポリスを中心とした宙域図を出す。
あの辺りはオーブを初めとした中立国のコロニーが集まっているだけに連合のコロニーは目立つ。案の定、すぐに見つける事が出来た。

「フロンティアサイドか・・・・足つきは此処へむかうだろうな」

「十中八九、そうでしょう」

「よし、フンボルト最大船速。フロンティアサイドへと向かうぞ、メタルアーマー隊はブリーフィングルームへ10分以内に集合させろ!!」

マイヨの指示がブリッジに響き渡る。
フンボルトはゆくりとフロンティアサイドへと航路を変更しアークエンジェルを追い始めた。


アークエンジェル居住区。
格納庫から戻ってきた途端、キラは早速笑いの種にされていた。
キラに気づかれぬように先にこっそりと居住区に戻ってきていたケーンが多少の情報操作を含め格納庫での出来事を話しすっかり「キラはクレアに一目惚れしてる」という認識が友人間に広まったあげくに定着していた。
まぁ、笑いの種にされた本人は当然面白くないわけで。

「ケーン、覚悟は出来てるよねぇ?」

噂を広めたケーンを壁際に追い込み指をボキボキと鳴らし鬼のような形相で不気味な笑みを浮かべていた。
はっきりいって怖い。

「ア・・アハハ・・・キ・・キラ君。話せば、話し合えばわかる。暴力はいけないよ、うん」

ケーンは必死で慈悲を請うが今のキラに相手の話を聞くという考えなど微塵もない。
情け容赦ない悪魔を目の前にした彼の運命は決していた。

「抹○のラス○ブ○ッド!!」

「ゲブァッ!!」

ケーンの悲鳴が木霊する。
一方、トール達は罪を全てケーンになすりつけ食堂で暢気に茶を啜っている。

「ケーン、君のことは忘れない。多分」

「キラって怒ると怖いしねぇ・・・・」

「うん・・・」

自分たちの身代わりとなり犠牲となった友の冥福を頭の隅っこで祈りつつ自分たちが無事である喜びを噛みしめている。
かなり薄情な友人達であるがやはり自分が可愛いのが人間である。
ちなみにタップとライトは何故か格納庫の隅っこでボコボコにされのびていた所をマードックに発見されるがそれはまた・・・・・・別のお話。


居住区で起きた惨劇などなどつゆ知らず、アークエンジェルはフロンティアサイドへの順調な航海を続けていた。
クルーの大半が実戦経験皆無の下士官。艦長のマリューは技術士官の成り上がり。パイロットは二人を除いて民間人の少年達。
おまけにブリッジクルーの数が足りてないという結構悲惨な状況なのだがへリオポリスでクルーゼ隊の戦艦に打撃を与え追撃不可能にしたことでクルーに安心感が漂っている。

「あと半日もすればフロンティアサイドへ到着・・・・このまま何事も無くすめば良いけれど」

「まだ、油断は出来ませんよ艦長」

CICの席に座ったままのナタルが言う。
ダグラスも席を外しているため今現在、ブリッジで安心感を持っていないのは彼女だけだ。

「本当に安心できるのはフロンティアサイドに到着してからです」

「・・・そう、ね」

どうもナタルから不信感丸出しの視線をぶつけられているマリューは顔を向けずに答える。
はっきりいって彼女は苦手だ。元々、技術士官であり艦の指揮など未経験であるマリューにとってはガチガチの軍人タイプであるナタルは苦手に思える。

「念のために第二戦闘配備をしいた方が良いと思われますが・・・」

「敵がいないのに?」

「いないからこそです。どこから不意打ちを食らうかわかりま・・」

ナタルが最後まで言葉を言い終える前にレーダー手であるチャンドラが叫び声を揚げる。

「12時の方向に反応!!巡洋艦クラスと思われます!!」

「なんだと!?何処の巡洋艦だ!!」

「ライブラリ照合・・・・ギガノス軍巡洋艦フンボルトです!!」


「敵はあのクルーゼ隊を返り討ちにしたほどの部隊だ。油断するなよ」

ブリーフィングルームでパイロットスーツに身を包んだマイヨが部下達に言う。
どんな相手であっても油断すれば命取りになりかねないのが戦争だ。

「所詮は戦艦一隻と侮るなよ。解散!!」

ブリーフィングルームからすぐに格納庫へと向かいそれぞれの機体に乗り込んでいくパイロットを見届けマイヨも自らの機体へと向かいながら指示を出す。

「先方はプラクティーズに任せる。準備が整いしだい、随時出撃せよ」

『了解。大尉殿のお手を患わせる前に沈めて見せますよ』

青いメタルアーマー、ゲルフのパイロット。ダン・クリューガーが答え発進する。
それに続きゲルフのカスタムタイプであるヤクト・ゲルフ、レビ・ゲルフが発進。その後、量産型メタルアーマーであるダインが4機、ゲバイが4機出撃する。
マイヨもメタルアーマーへと乗り込み発進準備を進める。

「足つきとやら・・・その実力、見せて貰おう。マイヨ・プラート、ファルゲン出るぞ!!」

マイヨ専用に開発された青紫のメタルアーマー、ファルゲンが出撃。部隊の後方につく。
鷹の爪が大天使を狙っていた。


ギガノス軍に見つかった事はすぐに艦全体に伝えられ第一戦闘配備がしかれる。
格納庫ではパイロットスーツのまま着替えてなかったクレアと丁度、メビウス・ゼロの修理状況を見に来ていたフラガが出撃体勢を整えていた。
月につくまでの間は協力することになっているキラ達もそれぞれの機体に乗り込む。

『フラガ大尉、出撃後の指揮をお願いします。私では艦の指揮で手一杯なので』

「了解、俺と嬢ちゃんでなんとかするから艦長はアークエンジェルを頼む」

マリューの通信に気楽に答える。
通信を終えるとメビウス・ゼロが左舷カタパルトへと運び込まれ発進体勢へとはいる。

『システムオールグリーン。進路クリア、フラガ大尉発進OKです』

「ムウ・ラ・フラガ。メビウス・ゼロ出る!!戻ってくるまで沈むなよ!!」

右舷カタパルトにはアークラインが運び込まれ発進体勢を整えている。少しでも発進時間を短縮するために左右のカタパルトを同時に使用しているのだ。
メビウス・ゼロが出た後の左舷カタパルトにはストライクが運び込まれエールストライカーを装備されている。ドラグナー3機は後部ハッチからの出撃となる。

『進路クリア、発進OKです』

「クレア・レナード、アークライン出ます!!」

「キラ・ヤマト、ストライクガンダム・・行きます!!」

二機は同時にカタパルトから射出され戦場へと躍り出る。
その直後、後部ハッチから3機のドラグナーが出撃しメビウス・ゼロを中心に陣形を取る。

「敵は12機か・・・・ちとばかし多いな。」

「ったく、少しは遠慮してほしいわ」

お互いに愚痴りながらリニアカノンとライフルモードのプラズマランチャーを放つ。
それはあっさりと回避され敵機は散開しハンドレールガンを連射しながら襲いかかる。

「チッ!!散開、自分と艦を守る事を第一に考えろ!!敵を落とそうなんて考えるなよ、特に坊主共!!」

フラガの指示で全機が散開しそれぞれ戦闘を開始する。
砲撃戦主体のD-1、D-2、電子戦主体であまり戦闘には向かないD-3はアークエンジェルまで下がり後方支援につとめ、ゼロ、アークライン、ストライクの3機が前衛をする。
アークエンジェルもイーゲルシュテルン他、バリアント、コリントス、ヘルダートなどの武装を起動させる。此処はコロニー内ではなく宇宙空間、味方にさえ気をつければ火器を弾の続く限り撃ち放題なのだ。

「大尉達を援護する。バリアント、コリントス撃てぇーーーーーっ!!」

ナタルの指示でアークエンジェル装備されたレールガンとミサイルが一斉に放たれる。
メタルアーマーの固まっている位置を狙って放たれたそれは敵をしとめる事はかなわなかったが散開させ一瞬の隙を生み出す事に成功した。

「貰ったぁっ!!」

隙を見せたゲバイへメビウス・ゼロが襲いかかる。
リニアカノンとガンバレルを一斉に放ち瞬く間にゲバイを撃墜する。そのまま加速をつけUターン。真下にいたダインを同じく撃墜する。

「ガンバレル!?エンデュミオンの鷹だっていうのかよ!!?」

メビウス・ゼロを見たギガノス兵が驚きの声をあげる。
その隙をつかれダインに乗っていたギガノス兵は真後ろからの一撃に気づかないままこの世を去った。

「戦闘中に動きが止まるなんて素人以下じゃないの?」

背後からダインを撃ち抜いたアークラインは続けてライフルをゲバイへ向け連射。
頭部を左足、胸部を撃ち抜かれたゲバイはそのまま宇宙の藻くずとなり爆散した。

「照準・・・そこだっ!!」

ストライクのビームライフルが火を噴きゲルフを襲う。
ゲルフはそれをレーザーソードで弾くと一気に間合いを積めストライクへ迫る。

「ビームを弾くって・・そんなのナシだって!!」

キラもすぐさまビームライフルを腰の後ろへマウントしサーベルへ持ち替えゲバイのレーザーソードと斬り結ぶ。
エネルギーの刃がぶつかり合い火花を散らす。

「ガンダムを落とせば我らの手柄。しいては大尉殿の功績ともなる!!ここで堕ちて貰うぞ、ガンダム!!」

ダンはゲルフのレーザーソードを振るいストライクと何度も斬り結ぶ。
その間にレビ・ゲルフ、ヤクト・ゲルフと2体のダインが横をすり抜けアークエンジェルへと向かう。

「カール、ウェルナー、足つきを落とせ。ガンダムは私が押さえる!!」

「一人で大丈夫か!?」

「心配ない、このパイロットはド素人の動きだ。我らプラクティーズが素人に負けるはずもない!!」

「確かにな。此処は任せるぞ、ダン!!」

4機のメタルアーマーが真っ直ぐにアークエンジェルへと向かう。

「しまった、アークエンジェルに!?」

キラはストライクを反転させアークエンジェルへ戻ろうとするがゲルフが前に回り込みレーサーソードを振るってそれを防ぐ。

「キサマの相手はこの私だ!!」

「クソッ!!」


「メタルアーマー4機接近!!」

「近づけさせるな!!ヘルダート撃てぇーっ!!」

アークエンジェルから多数のミサイルが一斉に放たれる。
それをハンドレールガンで迎撃しながら4機のメタルアーマーはアークエンジェルへと迫る。

「ドラグナーは何をやっている!?」

「今、迎撃に向かっています!!」

「イーゲルシュテルン起動、援護して!!」

アークエンジェルに装備された機銃が一斉に弾丸を放つ。
と同時にドラグナーがそれぞれの火器を放ちメタルアーマーを迎撃する。

「近づけさせるかよ!!」

「チッ、何という火力だ・・・・ウェルナー、艦底部から回り込め!!」

「わかった!!」

ウェルナーのヤクト・ゲルフが1機のダインをつれアークエンジェルの艦底部へと潜り込む。
しかし、底部にまで装備されているイーゲルシュテルンが二機を激しく追い立てる。

「なんだと!?真下にまで火器を!!」

イーゲルシュテルンの雨をかいくぐり背後へと抜ける事に成功したヤクト・ゲルフとダインはアークエンジェルのエンジンを狙いハンドレールガンを向ける。

「これで終わってもらおうか!!」

ヤクト・ゲルフのマニピュレーターがトリガーを引く直前、襲い来る砲撃がハンドレールガンを破壊、その余波で右のマニピュレーターも破壊する。

「なんだと!?」

見るとD-2がこちらにハンドレールガンを向け接近しているのを確認できる。

「奴が狙ったのか!!おのれ!!」

アークエンジェルから放たれる弾丸の嵐の中で7機のメタルアーマーが激しい銃撃戦を繰り広げ始めた。


アークラインがライフルで残り一機のゲバイを撃墜した直後、レーダーに高速で迫るメタルアーマーの反応を捕らえた。

「まだいたの?」

その反応がある方向へと向けライフルを狙い撃つ。

「フッ・・・」

アークラインが狙った相手、ファルゲンはそのビームを簡単に回避しながらレーザーソードを抜きアークラインへと迫る。

「なっ・・速い!?」

「堕ちろ!!」

一気に間合いを積めレーザーソードを振るうファルゲン。咄嗟に機体を下がらせるがプラズマランチャーを切り落とされてしまう。
爆発する前に手放し三連装機関砲でファルゲンを牽制しながら間合いを取る。

「コイツ・・・」

「ほぉ、あの一撃を避けるとは・・・・・それなりに腕が立つようだ」

マイヨは機関砲の弾丸を避けながら空いている左手でハンドレールガンを手に取りアークラインへと向けトリガーを引く。
それを避けるがファルゲンは間髪入れずに間合いを詰めてくる。

「くっ・・しつっこいのよ!!」

クレアは切り札ともいえる武装、二連装プラズマデリンジャーを引き出し構えるがトリガーを引く前にファルゲンがハンドレールガンを放ち、こちらに反撃の隙を与えない。
デリンジャーは最後の切り札。確実に相手を仕留めれる時に使わなければならないのだがファルゲンはそれを与えてはくれない。一対一では確実に勝てないとクレアは察していた。

「嬢ちゃん、下がれ!!」

「!?」

突然の通信に驚くが言われるがまま機体を下がらせる。と同時に真上からメビウス・ゼロがリニアカノンとガンバレルを展開しファルゲンへ一斉に砲撃を開始する。
さすがにこれは予測出来なかったのかファルゲンを咄嗟に下がらせるもののハンドレールガンを破壊され左腕は使い物にならなくなってしまう。

「ぐっ!!あの武装・・・なるほど、エンデュミオンの鷹、ムウ・ラ・フラガか!!」

「ファルゲンだと・・・・ってことはギガノスの青き鷹、マイヨ・プラートかよ!!クソ!!」

「面白い・・同じ鷹の異名を持つ者として一度戦ってみたかった相手だ。不足はない!!」

ファルゲンはレーザーソードを構えメビウス・ゼロへと向かい一気に加速する。

「俺と戦おうっての?面白いじゃねぇの・・青き鷹さんよぉ!!」

ゼロもリニアカノンを連射しながらファルゲンへと向かい加速する。

「「おおおおおおおっ!!!」」


ストライクとゲルフの戦いはゲルフの優勢で進んでいた。
機体性能うんぬんよりもパイロットの実力差が開きすぎているのだ。
ゲルフのレーザーソードによる斬撃をシールドで受け止めビームサーベルで斬り返すが、ことごとく回避される。

「フン、その程度で我々に勝とうと言うのか!!」

ハンドレールガンを構えトリガーを引く。
放たれた弾丸をストライクのシールドで防ぐが、一気に間合いを詰めてきたゲルフの蹴りがストライクの腹部を直撃する。

「うわっ!!」

体勢を崩したストライクを更にレーザーソードで斬りかかる。
キラはエールのブースターをフルスロットルでふかし機体を無理矢理にひねらせソードを回避する。

「くっ、往生際の悪い!!」

「このままじゃ・・やられる!?」

エールの足の速さを生かしゲルフから離れるストライク。
ゲルフはそれを追うが足の速さではエールのが圧倒的に上である。逃げるだけなら実力は関係ない。

「ええい、逃げるのか!!」

ハンドレールガンを連射しながらストライクを追うゲルフ。
キラは敵のしつこさに鬱陶しさを覚えながら適当に狙いをつけずにビームライフルをゲルフへと連射する。
狙いをつけていないだけに何処へ撃たれるかわからない。ダンは舌打ちしレーザーソードでビームを弾き防ぐ。
しかし、いつまでもこの状態は続かない。戦いが長引けばこちらが不利だ。

「いつまでもこうしちゃいられない・・・・一か八かだ!!」

覚悟を決めキラはゲルフへと向き直りライフルとシールドを捨て二本のビームサーベルを引き抜き構える。

「お前はガンダムなんだろ、だったら・・・何とかして見せろよっ!!」

ブースターをフルスロットルでふかしゲルフへと一気に突っ込むストライク。
ダンはストライクパイロットのとった行動に驚きと共に潔さを感じた。

「突っ込んでくる!?その勝負、受けて立つ!!」

ダンもハンドレールガンを捨てレーザーソードを構えストライクへ突っ込む。

「うおおおおおおおっ!!」

「その首、貰うぞ!!」

二体は同時にサーベルの刃を発生させ――ストライクは二本のサーベルをクロスさせ――一振るう。
ぶつかり合うサーベルのエネルギーがスパークし鍔迫り合う。

「ぬうっ!!」

「いっけぇーーーーっ!!」

一本のレーザーソードで二本のビームサーベルを受け止め続けるのは無理だ。
結局押し切られレーザーソードは弾かれ咄嗟にコクピットを庇った両腕は見事に両断された。

「ぐわっ!!これでは、戦闘は無理か・・・・ガンダム、忘れぬぞ」

ダンはゲルフを下がらせフンボルトへと撤退していく。ストライクの姿をその目に焼き付けながら・・・・・・。
一方のストライクは先程の一撃でほぼ全てのエネルギーを使い果たしフェイズシフトダウンを起こしていた。結果的に相打ちである。

「ふぅ・・・」

キラはストライクをアークエンジェルの方へと向け残りの推進剤をチェック。
ギリギリ帰る分は残っている事を確認し帰還するため機体を艦へと向かわせた。


「コリントス、スレッジハンマー、バリエント、イーゲルシュテルン撃てーーっ!!」

ナタルの指示でアークエンジェル搭載火器のほぼ全てが一斉に放たれる。
アークエンジェル周辺にばらまかれる弾丸の雨はアークエンジェル周辺にとりついていた敵メタルアーマーを襲う。

「チィッ!!」

カールは舌打ちしハンドレールガンでミサイルを撃墜しながら後退する。
ダインも弾丸を回避しつつ後退するがイーゲルシュテルンによりアイカメラが破壊される。

「カ・・カメラが!?」

カメラが沈黙した事に動揺したパイロットは飛来したミサイルを受け爆死する。
カールのレビ・ゲルフがアークエンジェルの弾幕に追い立てられている隙にD-1とD-3はアークエンジェルまで下がり甲板上でハンドレールガンを連射する。

「オラオラオラッ!!」

「さっさとあっちに行きやがれってのよ!!」

「ええい!!この火力は突破できん!!ウェルナー、退くぞ!!」

仲間へと通信を入れてからカールのレビ・ゲルフはミサイルを迎撃しつつ後退する。
艦の後方でD-2と戦っていたウェルナーも艦の弾幕に追い立てられていた。

「ぬぅっ!!退くしかないのか・・・・っ!」

ヤクト・ゲルフの火器を一斉に放ちアークエンジェルの火器を迎撃しつつウェルナーも友軍のダインと共に引き上げていった。

「退いたか、策敵怠るなよ。アークラインとゼロ、ストライクは?」

「ストライクは帰還中。ゼロとアークラインは敵と交戦中です」

「艦を移動させてストライクを回収後、大尉達の援護に向かいます」


メビウス・ゼロのガンバレルがファルゲンを狙い撃つ。

「フッ」

ファルゲンはそれを何事も無いように回避し一気に間合いを詰めレーザーソードを振るう。
フラガは舌打ちして機体を捻らせ斬撃を避ける。入れ替わりにアークラインの三連装機関砲がファルゲンを襲う。

「遅いわっ!!」

機関砲の弾丸を避けながらハンドレールガンで反撃する。
アークラインはそれを回避する。

「さっすが、青き鷹ってだけはあるな・・・・手強い!!」

先程から二人相手に一歩も退かず互角の戦いを繰り広げているマイヨに二人は恐ろしさを感じる。
まさか二人で戦ってこうまで苦戦するとは思ってなかったのだ。

「この二機、楽しませてくれる・・・ん?」

ファルゲンのレーダーに撤退する友軍と接近する敵艦がとらえられる。

「こちらが不利か・・撤退するしかないな」

マイヨは機体を反転させフンボルトへと帰還する。

「逃げる?いや・・見逃した?」

その後、合流したアークエンジェルに二人も回収されフロンティアサイドへの進路を再び進む。
そこで待ち受ける事件など知らずに・・・。

続く


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