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天の道を往き、総てを司る

天の道を往き、総てを司る

9話後編

ベヘモスの剛腕がマッカランのM9を叩き潰さんと振り下ろされる。
後方へ飛び退き、頭部機銃を連射するが装甲に到達する前に見えない壁のような物に弾かれる。

「チィッ!」

舌打ちしながらも40mmライフルで反撃を試みるが……やはり見えない壁に弾かれてしまう。

「くっそぉぉぉっ!」

マークエルフがマインブレードを構え、飛びかかる。
振り下ろされたナイフも見えない壁に遮られ、装甲を傷つけるまでに至らない。
飛び回る虫を弾く人のような動作で腕を振り、ベヘモスはマークエルフを弾き飛ばす。

「うわぁっ!」

「一騎君!」

岩礁に叩きつけられそうになったマークエルフを咄嗟にマークツヴァイが受け止める。
体格的にはさほど変わりのないベヘモスとファフナーではあるが見えない障壁により攻撃の全く通らないベヘモスが圧倒的とまでは言わない物の優勢にたっている。
単純に一撃の破壊力でファフナーに劣るM9では太刀打ち出来ないのは当然と言えば当然だった。

(まさかアーバレストと同じような装備を搭載しているとはな……っ)

マッカランが忌々しげに呟く。
詳しいことは聞かされていないがアーバレストも目の前の巨大な機体と同じような障壁を張る事が出来る事は知っていた。
そして、半年前にも似たような装備を持った赤いASを相手に宗介がアーバレストでそれを撃退したとも報告で聞いている。
それが意味する所はアーバレストならばこの化け物を倒せる可能性があると言う事。

(アーバレストでなければまともに太刀打ち出来ないという事か……っ!)

しかし、裏を返せばアーバレスト以外では倒せる可能性が全く無いに等しいと言うことだ。
ファフナーの攻撃ですら弾かれるのだ。M9の攻撃では到底貫けるような障壁ではないのだろう。
同じ装備に対抗するにはこちらも同じ装備を使う……すなわち、アーバレストが唯一の有効打となり得るのだ。

「大尉! あと数分でアーバレストが応援に来てくれるそうです!」

「よし……全機、何としても持ちこたえろ! ファフナーの二人も無茶はするな!」

「了解!」

「わ……わかりました!」

「あ……はい!」



一方、ベヘモスの戦いを観戦しつつ危険が及ばないであろう安全な位置……少しばかり離れた所にある高台の上で戦闘を見物していた男の元に部下が走り寄ってくる。

「アルヴィス内部に侵入していたチームが全滅しました」

「あらら……カイはどうしました?」

「はっ、カイはビーコンを確認していますので無事かと思われますが」

部下が全滅したと言うのに全く気にもしていないのか、男は眼下の戦闘を眺め続けながら答える。

「ふむ……カイには一度戻るようにと連絡を。従わない場合は二度と戦いに出さないと脅しでもかけなさい」

「はっ!」

敬礼し、部下は男の元を走り去る。
それと入れ違いになるようにルミナが少しふらついた足取りで男の元へと現れた。

「おや……帰ってきましたか。随分と……ボロボロですね」

流石に驚いたのか男は目を見開く。
今の彼女はボロボロという表現が良く似合っていた。身につけている黒のアンダースーツは少し破け、腕に巻き付けていた鎖は消えている。
更には口からは血を流し、痣も出来ている。彼女には今まで何度か厳しい戦闘を課してきたがこれほど傷ついたのは初めてだった。

「あぁ……うん。ちょっとね」

左手の親指で口から流れる血を拭いながら呟く。
拭った血を見つめ……僅かに笑みを浮かべる。

「ご機嫌のようで、悦に浸っている所すみませんが……何があったのか、話してくれますか?」

「……戦ってて初めて楽しいと思えた子を見つけた。それだけ」

「……は?」

いまいち要領を得ないルミナの答えに首を傾げる。

「あの子は私の獲物……誰が何と言っても私が殺すから……リーアは私の獲物。邪魔したらアンタでも殺すから」

笑みを浮かべたままルミナは近くの木を背に腰掛ける。
血が付いた親指を眺めながら、時折聞こえてくる「ウフフ」とかいう声が不気味だが男は気にせず眼鏡を直す。
ああ見えてかなりの戦闘狂であるルミナが戦いで笑いが絶えないほどに楽しいと感じる事など自分が知る限り一度だけだ。
本当に心の底から楽しいと感じなければ彼女は笑わない。

(何処の誰かは知りませんが……ルミナを笑顔にした事には同情しますよ)

顔も知らない誰かを心の底から同情しながら、視線を眼科のベヘモスへと移す。
状況は優性だが、あのベヘモスは今だ試作段階。それにパイロットも搭載しているラムダドライバを完全に使えるか否かと言えば否だ。
せいぜい機体の維持と障壁程度にしか使えない……用は動かして一応の戦闘がこなせる程度のレベル。ラムダドライバを用いた攻撃は不可能と言う事。
それでも状況を優勢に持ち込めるのはベヘモス自体の性能とラムダドライバ様々といった所なのだ。

(データは取れるだけ取っておけば上も文句は……言うでしょうけど、いざって時は機体放棄ですかね)

頭の中でそんな事を考えつつ、男は眼下の戦いの観戦に集中した。



港に仰向けで倒れていたリーアはかすかに伝わってくる振動に気がつき、体を起こした。

「何……これ?」

弱いが確かに伝わってくる振動……それもかなり連続してだ。
何なのかは解らないが直感的に戦闘か何かだと感じる。

「戦闘……? うっ……!」

不意に頭痛が走り、頭を抱えて蹲る。
頭の中、様々な光景がまるで稲妻のように激しく流れていく。



―――すまない……私には……


今にも泣きそうな顔で謝罪の言葉を呟く男。


―――試作…………ナ…………投与


数人の白衣を着た男が手に何かを持っている。


―――マルス……専……わ…………商品……


マルスのコクピットの中、モニターに映る数人の男達。




「うっ……ぁ……」

其処で頭痛と映像の流れが収まった。
頭の中、流れてきた映像には全て靄がかかったように曖昧ではっきりしなかった。
しかし、リーアはその全てに覚えがある。思い出せないが確かに覚えがあるのだ。

「なんだろ……さっきの……」

靄がかかったままというのは気分が悪いが今はどうしようもない。
頭を軽く振りながら立ち上がると同時に正面の山の向こうで爆発が起きた。

「爆発……?」

確実に何かが彼処で起きている。恐らく戦闘……それも機動兵器を用いた物だ。
リーアがそう感じると同時にすぐ横の海面から何かが飛び出し、リーアの前に着地する。
漆黒の装甲に身を包んだ機体、マルスが腹部のハッチを開いた状態でリーアの前に跪いている。

「マルス……」

どういう仕組みか知らないが自分に付き従う騎士のように、出現する漆黒の機体。
リーアは迷うことなく腹部のハッチからコクピットへと乗り込む。

「……起動」

無意識の内に浮かんでくるマルスの使用法に従いリーアは機体を起動させる。
音声認識でコクピットの計器を作動させ、ハッチを閉じさせる。
次にセンサーがリーアの体格を読みとり記録されたデータと称号……一致した証拠にモニターに光が灯る。
全システムが立ち上がり、ゆっくりとマルスが立ち上がる。

「……ハァ」

モニター意外何もないに等しいコクピットの中で深呼吸し、呼吸を整える。
リーアが両腕で握り拳を作る動作に反応し、マルスも握り拳を作る。

「……飛ぶよ」

リーアの言葉に反応し、マルスのアイカメラが光を放つ。
背中のスラスターが展開し、漆黒の機体は夜空へと飛翔した。



宗介がダナンが停泊中のハッチについた時、その光景に唖然となった。
ダナン格納庫とカタパルトハッチの装甲が内側から突き破られたかのような穴を開けていたのだ。

「これは……何があった!?」

「そ……それが、B1が勝手に起動してそのまま」

手近にいた下士官を捕まえ、事情を聞き出す。
B1が起動してそのままダナンの隔壁を突き破って外に出たと言うことらしい。

「B1には遠隔操作機能もあるというのか……アーバレストは!?」

「機体は無事ですがハッチがこの有り様では……少し時間をください!」

整備員が叫ぶ。
隔壁を突き破る程の衝撃が起きたのだ。ハッチや格納庫を使えるようにするには時間がかかるだろう。

「構わん! アーバレストさえ起動させれば後はこっちでどうにでもなる!」

そう叫んでダナンの格納庫へと走り込み、待機状態だったアーバレストのコクピットに滑り込む。
全システムをすぐさま起動状態にし、四つん這い状態の機体を立ち上がらせる。
このドックからでは海底を通っていくしか外に出る方法がない……アーバレストの背中にはすでに水中潜航用の装備が取り付けられている。

「行くぞ、アル」

『イエッサー』

アーバレストを跳躍させ、B1……マルスが開けた穴を使い格納庫からドックへと出る。
すぐさま反転し、ダナンがアルヴィスへと入港する際に利用した海底トンネルへと飛び込む。
背中の装備を作動させ、アーバレストは水中を突き進む。



『これは……一騎、蔵前、気をつけろ。上空から何か来るぞ!』

「えっ!?」

ジークフリードシステムの総士から聞かされた報告の直後、ファフナーとベヘモスの間に割ってはいるように上空から漆黒の機体が降下してくる。
大きさは丁度ファフナーの半分程度……M9の約2倍と言った感じだ。

「なんだ……このロボット」

「B1!? 何故、此処に!」

初めて見た一騎達とは対照的にマッカランとマオは驚きを隠せない。
ダナンの格納庫に収容していた筈のマルスが突然出現したのだ……この機体は一緒に保護した少女にしか扱えない事は解っている。
すなわち、リーアがこれに乗って現れたと言う事になる。

「……」

周囲の反応を余所に、リーアはベヘモスと正面から対峙し身構える。
姿勢を低くし、両手の拳を握る。その構えは空手でも無くボクシングでも無く中国拳法の類でもない独特の物。
一瞬の間を置いて、マルスはベヘモスへと突貫した。



マルスの出現に驚いていたのはマッカラン達だけでは無かった。
高台の上から観戦を続けていた男の表情がマルスを見た瞬間、微かに険しくなる。

「あの機体は……何故、アレが此処に」

マルスの事を男は誰よりも知っているだけに男の疑問は尽きない。
アレは半年前に脱走し、行方不明となった機体だ。つい最近、上が雇っている傭兵達が発見した物の取り逃がしたとは聞いていたが……。

「まさか此処にいるとはね……」

眼鏡を直しつつ、マルスを睨み付ける。

「……リーアだ」

下の様子が気になったのか、いつの間にかルミナが男の横に立って戦闘を眺めていた。
正確には戦闘ではなく、戦闘を行っているマルスの動きを眺めているのだが。

「あの動きはリーアだ……あんなのも持ってたんだ」

何がそんなに嬉しいのが微かに浮かべている笑顔のまま独り言を呟く。
それを聞いていた男の疑問が一つ解ける。一体誰がルミナを此処まで痛め付けたのかが気になっていたのだ。

(成る程……ナンバー01でしたか。確かに、彼女なら有り得ない事は無いですね)

傭兵達が失敗した後、ミスリルにB1共々回収されたのだろう。
ようやく男の疑問が解けた。少しばかりスッキリした気分になった直後にカイを連れた部下が戻ってくる。

「お、ようやく戻ってきたようですね」

「……ふん」

見るとカイの右腕に銃弾が掠めた後が残っている。
どうやら彼もルミナほどでは無いにしろ、こっぴどくやられたようだ。
ベヘモスの戦闘データもそれなりには集まった。もはや、此処に用はない。

「さて、全員揃った所で撤収。これ以上此処にいても意味がありません」

男の指示で部下達が撤収準備を始める。
カイは不満がありそうだったが渋々と言った様子で一足先に高台を後にする。
ルミナは未だに眼下で繰り広げられている戦闘を眺めている。

「ルミナ、撤収ですよ」

「……」

「今回は諦めなさい。アルテミス、持ってきてないでしょう?」

「……わかった」

名残惜しそうにマルスを眺めつつ、ルミナは高台を降りていく。
男も最後にマルスを一瞥し、ゆっくりと高台を後にした。



ベヘモスの巨体から繰り出される一撃をマルスは軽い身のこなしで避け、懐へと潜り込む。

「っ!」

ベヘモスの腹部目掛け、右の拳を突き出す。
しかし、その突きもベヘモスが展開する見えない障壁に阻まれる。
リーアは攻撃が通用しないと見ると後方へ跳び、ベヘモスとの距離を取る。

「……ハァァ」

右の拳を天に掲げ、力が集まる様をイメージする。
それに連動してマルスの右の拳にエネルギーが集中し露出しているフレームが金色に光輝く。
光が最大になったと同時に跳躍し、ベヘモスの頭部目掛け金色の拳を叩きつける。

「はあぁっ!」

ベヘモスの展開する見えない障壁がマルスの拳を阻む。
障壁と拳に込められたエネルギーがスパークし、火花を散らす。
互いに一歩も引かない真っ正面からのぶつかり合い……エネルギーが限界に達し爆発が二機の間に起こる。

「うっ!」

爆発に飛ばされ、マルスは背中から砂浜へ叩きつけられる。
負担がかかったのか右腕から火花が飛び散っている。

「あの化け物は……」

マルスからベヘモスへと視線を向ける。
そちらはベヘモスの頭部装甲が若干焦げた程度であり、ほぼ無傷の状態を晒している。

「チッ、あの爆発でも無傷って反則でしょうが」

忌々しげにマオが吐き捨てる。
マルスの攻撃を持ってしてもベヘモスの張る障壁を突き破る事は不可能だった。
ベヘモスがゆっくりと歩み寄り、拳を振り上げる。
直後、背後の海面からアーバレストが飛び出し手に構える40mmライフルを連射する。
ベヘモスはその弾丸を障壁で弾きながらアーバレストへと向き直る。

「成る程……こいつもラムダ・ドライバ搭載機と言う事か」

マッカラン達が苦戦するのも無理はないと思いながらも内心、宗介も焦りを感じた。
自分はアーバレストに搭載されているラムダ・ドライバを今だに上手く使いこなせていないのだ。
状況は未だにベヘモスの優勢で揺るぎない。

『ウルズ7、来てくれたか』

通信機からマッカランの声が聞こえてくる。

「遅くなりました大尉」

そう言いながら状況を確認。
敵は目の前のベヘモス一機……友軍はマッカランとマオのM9にファフナー、マークツヴァイ、エルフ。
そしてどういう訳かマルスの姿がある。

「大尉、B1はどうするのです?」

『さっきまで敵と交戦していた所を見ると味方だと思いたいが……油断は出来ん。向こうから仕掛けてくるまでは手を出すなよ』

「了解しました」

通信を切り、全神経をベヘモスへと向ける。
相手は常時ラムダドライバによる防御を行っている……対してこちらはラムダドライバを使いこなせていない。
使いこなせない装備は無い物と考えて戦うとするとかなり骨が折れる戦いになるのは免れないだろう。

「……ん?」

宗介はベヘモスの頭部が焼け焦げているのを確認する。
焦げかたからして外部からの要因であるのは明らかだ。

「ウルズ2。敵機の頭部の焦げ後は誰がつけた?」

『ああ、B1よ。結構良い所行ったと思ったんだけど結果があれじゃぁね』

「B1か……」

それを聞いた宗介はベヘモスの動きに注意を払いつつ思考を開始する。
装甲を焦がす程度とはいえダメージを与える事がマルスには出来た……つまり、マルスでもラムダドライバの作る障壁に対抗可能と言うことだ。
焦げ後でもダメージには違いない。問題は、どうやって敵の防御を崩すかだが……。

(一か八か……試す価値はあるな)

ベヘモスを機銃で牽制しながら、アーバレストをマルスの横へと走らせる。

「B1のパイロット……聞こえるか?」

「……え?」

不意に話しかけられ戸惑うリーアを余所に宗介は話を続ける。

「敵の頭部に仕掛けた攻撃かそれと同等の威力の攻撃をもう一度撃てるか?」

リーアは右腕を動かしてみる。
マルスの動作はコクピットのリーアの動きと連動する……マルスの右腕は若干反応が遅れる物の動かせない事はない。
しかし、とてもでは無いがエネルギーチャージには耐えられる状態ではない。
だが、同じ攻撃は無理でも同じ威力の攻撃ならばまだ使える。

「同じのは無理だけど……同じぐらいの威力なら」

それを聞いて宗介の作戦は固まった。

「よし、俺が奴の注意を引きつける……その隙に奴を攻撃してくれ!」

言うが早いかアーバレストは40mmライフルを連射しながらベヘモスへと突撃する。
リーアは足を踏ん張り……右足に力が流れていく様をイメージ。マルスの右足の露出したフレームが金色に光り始める。
背中のスラスターと吹かし、左足で地面を蹴って一気に跳躍する。

「こっちだ、デカ物!」

ベヘモスの足の下を潜り抜け、背中へと40mmライフルを連射する。
障壁に阻まれダメージはないがベヘモスの意識は完全にアーバレストへと向いていた。
その上空でマルスは満月をバックに空中で回転しエネルギーの込められた黄金の足をベヘモスへと突き出す。

「はああああああああっ!」

気合いの入った叫びと共に急降下し、ベヘモスへと右足を突き立てんとする。
それに気付いたのかベヘモスも意識をマルスに向け、障壁を展開し迎え撃つ。
再び正面からぶつかり合うエネルギーの矢と化したマルスと強靱な盾を構えた巨人。
エネルギーがスパークし、二機の周囲を包み込むように紫電が走る。

「く……ううっ」

右足に掛かる負担がリーアの右足にも連動して伝えられる。
障壁を貫けそうで貫けない……出力が足りないのだと無意識の内にリーアは理解する。

(あと……ちょっと……っ)

あと少しだけでも出力が増せば確実にこの障壁を貫ける。
そのリーアの考えに連動したのか、マルスのアイカメラが光を放ちコクピットに様々なウィンドウが表示される。
次々と表示されては消えていくウィンドウ……最後に表示されたウィンドウにはリミッター限定解除の文字が映しだされていた。

「あああああああっ!」

右足を包む金色の光が更に輝きを増す。
出力が一気に膨れあがり、ベヘモスが展開する障壁を貫かんとスラスターを全開で吹かす。
それに耐えきれなくなったのか、ベヘモスの全身から火花が飛び散り……やがて、背中が内側から小規模の爆発を起こす。
その直後にベヘモスを包んでいた障壁は消滅し、マルスの蹴りがそのまま胸部装甲から背面装甲までを貫きベヘモスの巨体に風穴をあける。

「……はぁぁ」

リーアの吐き出す息と共にマルスのエアダクトから熱が放出される。
直後、背後でボディを貫かれたベヘモスの機体が爆発四散した。

「……倒したか」

ため息と共にマッカランは安堵の表情を見せる。
しかし、胸中は穏やかではなかった。竜宮島に襲撃を許したと言う事実と先程まで戦っていた巨大機動兵器。
自分達が敵に回した敵はそんじょそこらのテロ屋レベルではないという事がそれだけでも十分にわかる。

「面倒な事になりそうだな……これは」

傭兵として培ってきた感が告げる。
今回の戦いは今までで最も厳しい物になるであろうと。


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