078902 ランダム
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天の道を往き、総てを司る

天の道を往き、総てを司る

第二話

アトランティスから出撃したMS部隊が周辺の空や海中に展開し、迫り来る敵MS部隊を待ち受ける。

「敵MSの所属は不明。機種の特定も不可能……全機、油断するな!」

ガルーダに乗るアキラが指示を飛ばす。
モニター越しにも敵MS部隊の姿を確認出来るようになった瞬間、戦闘が開始された。
灰色の機体を持つガルーダと黒い装甲のイカロスが空中で激突する。

「堕ちやがれっ!」

ゲイルの駆るガルーダのマシンガンから薬莢と共に吐き出される弾丸がイカロスを撃ち抜き破壊する。
しかし、その近くで別のガルーダがイカロスのビームサーベルに上半身と下半身を両断され爆散。
別の所ではイカロスをビームサーベルで串刺しにした直後、背後からマシンガンの押収を受け撃破されるガルーダの姿もある。

「当たれっ!」

ヴァハのビームライフルから放たれたビームがイカロスの胸部を貫き破壊する。
サリアはすぐに別の敵機を目視するとそれへとヴァハの機体を走らせる。

「なっ……早……っ!」

イカロスのパイロットがマシンガンで迎撃するよりも早く引き抜かれたヴァハのビームサーベルがイカロスを袈裟斬りにする。
ヴァハの機動力はイカロスのそれを上回り、確実に一機ずつ撃墜していく。

「へぇ……アトランティスにあんなMSがあったんだ」

ガルーダをマシンガンで蜂の巣に変えたイカロスのコクピットでフェルが呟く。
マシンガンの弾倉を予備の物と取り替え、モノアイでヴァハを睨み付ける。

「アイツは私がやる……っ!」

フェルはビームサーベルを抜き、ヴァハへと機体を突撃させる。

「はあああああっ!」

「っ!」

それに気付いたサリアもヴァハのビームサーベルでイカロスの斬撃を受け止める。
ビームの刃がぶつかり合いエネルギーがスパークする。



「何がどうなってんだ……全く……」

海中……戦闘が行われている地点より更に深い深度に身を潜めたディープワングのコクピットでマグナは呟いた。
アトランティスへ戻ろうにも戦闘がハッチのあるポイントのすぐ近くにまで及んできた為に戦闘が行われていない海底近くまで一度潜ったのだ。
戦闘に巻き込まれれば作業用装備のディープワングではどうしようも無いのだ。

「さて……こっからどうすっかなぁ……」

アトランティスへ戻る為に浮上しようにも真上では戦闘中であり突っ切るのは危険。
かといって此処に何時までもいるわけにはいかない。此処まで戦場が移動してくる可能性も無くはないのだ。

「……まてよ、そう言えば」

ふと、マグナは記憶の片隅にあったアトランティスの構造図を思い出す。
見たのはかなり前で自信は無いが確か海底近くに何かしらのハッチがあった筈だ。
それが見つかればMSはともかく人一人抜ける事ぐらいは出来るだろう。
マグナは早速ディープワングを泳がせ、曖昧な記憶を頼りにハッチを探す。

「確か此処だったような……おっ」

海底へ伸びる支柱の中で最も太い中央支柱にハッチの開閉ハンドルを発見する。
丁度人一人が苦もなく出入り出来る程度の大きさだ。やはりMSは乗り捨てていくしかないだろう。

「親父さんには怒られるかもだけど……しゃーねぇよなぁ」

ため息混じりに呟きながら、マグナはコクピット内部の気圧を調節しヘルメットを被る。
MS用のパイロットスーツはそのままダイバースーツとしても機能する……酸素の量も十分だと確認してからハッチを開放し水中へと出る。
中央支柱の開閉ハンドルを回し、ハッチを開く。中央支柱は海底で事故が起きた際に海上都市へと続く緊急避難口等の役割も果たしている。
此処を抜ければ都市の最下層に出れる筈……以前も利用した事があるマグナはためらう事無く支柱内部へと入りハッチを閉じる。
排水ボタンを押し、流れ込んだ海水を排出し終えてからマグナは備え付けの梯子を昇っていった。



アトランティス近海上空で白と黒の巨体が交差する。
ヴァハとイカロスのビームサーベルが何度もぶつかり合い、その度に火花を散らしエネルギーをスパークさせる。

「このパイロット……ッ!」

「なかなかやる……新型!」

同時に脚を振り上げ互いの腹部を蹴り飛ばして間合いを取る。
サリアはヴァハの胸部に装備されたマシンキャノンを連射しイカロスを牽制する。
それと避けながらフェルはイカロスの空いている左手にマシンガンを握りしめヴァハへと連射する。

「くっ!」

空戦装備のスラスターを吹かし、弾丸を避けながら海面へと急降下しつつ6連装小型ミサイルポッドを起動させ全弾一斉に発射する。
フェルはイカロスを加速、上昇させ弧を描きながらミサイルの追跡を退けていく。
急停止をかけ、足裏のスラスターを利用した宙返りでミサイルの背後へと回り胸部の機関砲で撃ち落とす。

「そんな攻撃が……私に通用するだなんて思うなっ!」

ミサイルの爆煙を突き破り、イカロスは加速して間合いを詰めビームサーベルをヴァハへと振り下ろす。
スラスターを全開で吹かしサリアはその斬撃を回避。海面に叩きつけられたビームサーベルが大きな水柱をあげる。

「当たれ!」

姿勢を立て直し、海面を滑るように後退しながらヴァハのビームライフルを向ける。
トリガーを引きビームを放つ。フェルは咄嗟に機体を強引に捻らせビームを回避……直撃は避けたが右腕の装甲を僅かに焼かれる。

「くっ……コイツめ!」

アトランティス直上でもゲイルの駆るガルーダがマシンガンの弾丸をばらまき、イカロス二機を撃墜していた。
すぐに他の友軍を確認……何機かのガルーダが被弾したり撃墜されているが何とか持ちこたえているようだ。
海中の方までは流石に把握できないが何とか持ちこたえているだろう。

「ん? ってヤバッ!」

レーダーに反応がありそちらを向いた直後、ビームが一直線に向かってきた。
機体をずらして直撃を避けるが左足を貫かれ破壊される。

「うおっ!  なんだってんだ!?」

ビームが放たれた方を見る……其処には黒い装甲に巨大なウィングを持ったMSがあった。
見るからに重装甲で他の敵機、イカロスとは明らかに違う機体である。

「隊長機って奴かよっ……ついてねぇなっ!」

やけくそ気味に叫んでマシンガンを連射。
敵機、ダークレイブンはマシンガンの弾丸を的確に避けながらガルーダとの間合いを詰めビームサーベルを振るう。
咄嗟に機体を捻らせるが今度はマシンガンを握っていた右腕を切り落とされる。

「なっ……強すぎだろ!?」

このMSのパイロットは他の連中に比べて桁違いに強い。
どうあがいても自分が敵う相手ではないと悟り、ゲイルはガルーダを反転させダークレイブンから逃げる。

「……フン」

ダークレイブンのコクピットでレオス・フルベートは鼻を鳴らし逃げるガルーダから興味を無くしたとでも言うように視線を離し、別の敵機へと向かう。
逃げる敵など倒してまで撃墜数を稼ぐつもりも無いし何より戦果をあげるという事自体、レオスには興味がない。
ただ与えられた任務をこなし作戦を成功に導くためにすべき事を成す……それだけだ。
すぐさま次の敵機の姿を確認するとダークレイブンの翼を広げ、それを狩る為に加速する。

「アトランティス管制塔! ゲイル機強制着陸するから道開けろぉ!」

答えを聞く前に通信を切り、アトランティス軍部エリアの甲板へと落下と言う名の強制着陸を行う。
衝撃でウィングがへし折れたり左腕が変な方向に曲がってしまったりと機体の状態は更に悪化するが仕方がないと自己完結。
ハッチを開き、コクピットの外へ飛び出しそのまま格納庫へと駆け込む。

「なんか使えるMS無いのか!? もう一度出る!」

「ガルーダもディープワングも出払っててもう無いよ!」

整備班の言葉に「一機ぐらい探せばあるだろ」と小声で反論しながら格納庫を見渡し……一機のMSが目に入った。
メンテナンスベット毎寝かされ今から何処か別のドックへと運ばれるようだ。

「一機あるじゃねぇの!」

ゲイルは駆け足で階段を駆け下り、そのベットに寝かされたMS……フォルセティの上に階段の踊り場から飛び降りる。

「おい、ゲイル! 何してる!?」

「コイツで出るんだよ!」

「なっ……フォルセティは隊長用の機体だぞ!?」

「始末書なら俺が書くから今回は見逃せ! 危ないからさっさと離れてろ!」

そう言ってコクピットに滑り込み、ハッチを閉じる。
計器を作動させ、メンテナンスベットの拘束具を引きちぎりながら機体を起こす。
同じベットに固定されていたマシンガン二丁を手に取りそのまま格納庫のハッチへと歩いていく。

「仕方ない! ゲイル、ぶっ壊したら承知しないからな!」

整備員の一人が叫びながらハッチを開く。

「サンキュ、んじゃま……ゲイル・ライバート、出るぞ!」

ペダルを踏み、背中のジェットエンジンを作動させフォルセティの紅い機体が空へと舞い上がる。
基本操作はガルーダとさほど変わりないが、スペックの違いにゲイルは驚く。

「加速が全然違う……流石、新型って所か!」

ガルーダのそれよりも早く最高速度に達したフォルセティの性能に笑みを浮かべ、ゲイルは両手に握るマシンガンを構える。
目標は正面にいる敵機、イカロス3機。こちらに気付いたのか3機のイカロスは連携の取れた行動でフォルセティへと向かう。

「新型! マーサカス少尉が戦っている奴の他にもまだあったか!」

「一機だけで突っ込むとは!」

イカロスのパイロットが叫び、マシンガンを向け引き金を引く。
ゲイルはレバーを引き、フォルセティを捻らせ弾丸を回避。お返しとばかりにマシンガンから弾丸を景気よく吐き出す。
弾丸はイカロスの胴体を捉え、蜂の巣状態にしてそれを沈黙させ爆散させる。

「もう一丁!」

二丁のマシンガンを同時に放ち、更にイカロスを一機穴だらけにして撃破する。

「こ……この新型、何という機動力を! おのれぇぇっ!」

残った一機はビームサーベルも引き抜き、やけくそになったのかマシンガンを連射しながら突っ込んでくる。
ゲイルはそれを巧みに避け、フォルセティを変形させる。
脚部、腕部を折り畳み、バックパックを展開……数秒足らずでフォルセティは戦闘機を模した形態へと変わる。

「変形しただと!?」

イカロスのパイロットが驚いている隙にゲイルは機体を加速させる。

「喰らえ!」

機首のバルカンと両サイドのビームキャノンを同時に連射。
イカロスは避ける間も無く貫かれ、フォルセティが横を通り過ぎた直後に爆散した。



「よっ……こらせっと……」

アトランティス最下層、一部を自衛軍がて使用している他は緊急時以外誰も訪れない薄暗いエリアにマグナは顔を出した。
床のハッチから這い出るとそれぞ閉じて、きっちりハンドルを回してロックする。

「やれやれ……中央支柱昇るのはホントに疲れるぜ……ったく」

海底から最深部まで梯子を使って昇るのは相当の労力を必要とする。
疲れた両腕を軽く振りながらマグナは周囲を見渡す。

「此処来るのも久しぶりだからな……さて、どっちだったっけか……」

頭を掻きながら、マグナは適当に薄暗い廊下を歩き出す。
此処を最後に訪れたのは去年の頭で道は殆ど覚えていない……その上に、最近自衛軍が少し改装したとかで道が変わったらしいので適当に進むしかないのだ。

「……ん? 此処かな……っと」

適当に見つけた梯子を上がり、近くにあったドアを開いて中に入る。
其処はさっきまで歩いてきた場所とは違い電気が通っているのか非常に明るかった。
その上、それらしき設備も整えられている。同じなのは人気が無い事ぐらいだ。

「あら……?」

マグナはその空間に足を踏み入れながら少しばかり戸惑う。

「此処って……最近改装されたって場所か、もしかして」

だとすれば軍のエリアに無断で足を踏み入れたことになり、問題になる。
マグナは「あちゃー」と呟きながらも人気も無いし、此処から上に出れるかもと道を探し始める。
MS用の倉庫か何かになっているのか空いているメンテナンスベットが幾つか見かけられる。

「……ん?」

倉庫の二階を歩いていると不意にメンテナンスベットに固定された一機のMSが視界に入った。
ディープワングやガルーダと違い、まるで人間の目を連想させる二つのカメラを持った青い装甲のMS。
両肩には機体の全長とほぼ同じぐらいある大型のシールドが取り付けられ、全体的に重厚なシルエットを持っている。

「軍の新型か……?」

正面からそれを見上げ呟く。
噂だけなら何度か聞いた事がある軍が開発しているという戦闘用のMSかと何となく思う。
戦闘中だと言うのにこんな所にしまわれているのは欠陥でもあるのか、それともテスト中でまだ使用できないのか。

「ま、俺には関係無いか」

軍人でも無いし、戦闘用MSに興味も無い自分には全く関係無い事だ。
まぁ、民間人では滅多にお目にかかれない軍の新型をこうして見れただけでもある意味ラッキーなのかもしれない。
やがて見ているのも飽きたので移動しようとした直後、激しい振動が襲いかかる。

「おわっ!? な……なんだぁ!?」

尻餅をつき手摺に捕まって二階からの転倒を免れたが、壁に亀裂が走り其処から海水が雪崩れ込む。

「おいおい、マジかよ!?」

このエリアはまだ海の中にあり、壁はちょっとやそっとの衝撃では傷一つ付かない強度の筈だ。
それが破られたのだから相当な衝撃を喰らったという事なのだが、今のマグナにはそんな事を考える余裕はない。
流れ込む海水の勢いは凄まじく、このままでは数分もしないうちにこのエリアは水没してしまうだろう。

「クソッ!」

咄嗟にマグナはメンテナンスベットに固定されているMSに飛びつき、コクピットハッチを開放し中へと飛び込む。

「少しの間はこれで持つだろ……っ」

ハッチを閉じ、計器を作動させてモニターをつける。
同時に海水が完全に流れ込みエリア全体が水没する……正に間一髪だ。

「ふぅ……危ねぇ、危ねぇ」

マグナは肝を冷やしながらも、機体のデータをチェックする。
この辺はMSパイロットという職業柄の癖のような物である。

「ふむふむ……水中用MSなわけね。名前は……エーギルガンダムか」

水中用の機体ならば完全に水没してしまった此処に留まっていても大丈夫だろう。
それに時間がたてば隔壁が降りて貯まった海水も外部へと排出される……それまで待てば良いだけだ。
しかし、そうは問屋が降ろさないとでも言わんばかりに壁の穴からネプチューンが顔を覗かせる。

「ゲッ! なんで覗くんだよ……っ!?」

「空で確認された奴の他にまだ新型が……これは良い手土産になりそうだ」

ネプチューンのパイロットはほっと安堵したように呟く。
この穴は彼が放った魚雷の誤射により開けられた物。今回の作戦目的はアトランティスの戦力評価であり、都市そのものを狙った物ではない。
誤射とはいえ、アトランティスに被害を与えてしまったのは流石に不味い。ネプチューンのパイロットは何とかそれを挽回出来ないかと穴を覗き込んだのだ。

「これを持って帰れば……」

穴を更にこじ開け、ネプチューンが内部へと侵入する。

「おいおいおい、こっち来るんじゃねぇよっ!」

マグナは反射的にエーギルのコンソールを操作し、機体を完全に起動させる。
操縦系の基本は乗り慣れているディープワングと対して変わりがないのか、起動までそれ程時間は掛からなかった。
メンテナンスベットの拘束具を引き剥がし、エーギルはその足を進める。

「なっ……パイロットが乗っている!?」

「言っとくけど、これは正当防衛だからなぁ!」

エーギルの左腕を振り上げ、拳をネプチューンの頭部へと叩き込む。

「がああああっ!」

ネプチューンは穴から外へと吹き飛ばされ、エーギルもそれを追って外へと出る。
背中のスクリューエンジンを起動させ海中に静止する。

「ったく……こうなりゃヤケだ。こいつでとっとと反対側まで……ん?」

エーギルを動かしてしまってはもはや後に引けないが仕方ないと開き直り、マグナはこのまま乗り逃げしようとする。
だが、それを阻むようにソナーに反応が捉えられる。数は3機……どれもMSだ。

「おいおい……マジかよ……」

マグナは自分の運の悪さを呪い、苦笑いを浮かべる。
そんな彼を余所に、エーギルへと3機のネプチューンが近づく。

「プロ相手に慣れない機体で逃げ切れるわけねぇしなぁ……だぁ! くそ! こうなりゃやってやらぁ!」

開き直りを通り越し、逆切れを起こしたマグナは操縦桿を握り3機のネプチューンへと突貫した。



空中での戦闘は激しさを増していた。
ヴァハとイカロスのビームサーベルが何度も交差し、文字どおり叩きつけるような斬撃が繰り出される。

「このパイロット……私と互角だと!?」

「コイツ……そろそろ堕ちなさいよ!」

ヴァハの左腕を腰のサイドスカートへと伸ばし、其処に収納されている二本目のビームサーベルを引き抜き振り下ろす。

「っ!」

フェルは咄嗟に機体を引かせるがビームサーベルを握っていた右腕を落とされ、左足の装甲がビームサーベルにより焼かれ溶ける。

「つぅあっ! こ……の新型……ッ!」

フェルはモニターに映るヴァハを睨み付け、今すぐにでも海の藻屑にしたい衝動に駆られるが今の機体の状態ではまともな戦闘すら不可能だ。
悔しさに顔を歪めながら、フェルはそのままヴァハに背を向け撤退する。

「はぁ……はぁ……」

二本のビームサーベルをサイドスカートに収納し、腰の後ろにマウントしていたビームライフルに持ち直してサリアはヴァハの機体を飛び上がらせ他の味方の援護へと回る。
同じ頃、アキラのガルーダはダークレイブンとの交戦状態にあった。
ダークレイブンの左腕に内蔵された3連装ガトリングが火を吹き、弾丸をばらまく。

「火力が違いすぎるか……っ!」

マシンガンを放ちながらガトリングを避けるが火力の差が違いすぎる。
ガトリングと併用してビームライフルを使ってくるダークレイブンのパイロットは相当な手練れだとアキラは直感で悟る。
自分も腕には相当自身があるが……敵機との性能差が開きすぎている。

「勝てない事はないだろうが……一対一ではっ」

『隊長! 俺が援護します!』

突如、其処へ通信が入ったかと思うと上空からビームが連射されダークレイブンの動きを止める。

「何……っ!?」

「おおおりゃああっ!」

上空から飛び込んで来る紅い戦闘機……フォルセティはMS形態へと変形し、勢いをつけた蹴りをダークレイブンへ叩き込む。

「ぐうっ!」

衝撃に顔を歪めるがすぐさま操縦桿を操作し、海面に叩きつけられる直前にダークレイブンを建て直す。
すぐさま状態をチェック。さっきの攻撃で駆動系の一部が故障したのかエラー表示が点灯している。

「……流石に、この状態で二機相手は無理だな」

先程まで交戦していたガルーダ一機ならともかく、応援に駆けつけたもう一機も同時に相手に出来ると思うほど自惚れてはいない。
オルトは全部隊に撤退合図の命を出すと同時に自らも撤退した。

「逃げた……?」

「この場はしのげたか……というより、ゲイル。お前、何勝手にフォルセティを持ち出してる」

「あ……いや、その……」



海中では3機のネプチューン相手にエーギルが孤軍奮戦中だった。
マグナはコンソールを操作に適当な武装……バックパックに取り付けられていたツイントライデントを構えネプチューンに突撃する。

「どおりゃぁっ!」

「その程度……ぐっ!」

エーギルの攻撃をネプチューンは避け、間合いを取る。
このパイロットは戦闘経験が無いのか武器の扱いが雑だが動きが素人ではない熟練のそれだ。
戦いの素人と舐めてかかって痛い目を見る可能性があるとネプチューンのパイロットは直感で感じていた。

「攻撃は雑だが動きが……なんだ、コイツは!」

「このままではラチがあかん! 俺が仕留める!」

一機のネプチューンがトライデントを構え、エーギルへと突撃する。
突き出されるトライデントをツイントライデントで受け止め、弾き返す。

「くそっ! こっちは戦闘経験なんかねぇんだからなっ!」

文句を言いつつ、他に武装はないのかと機体データをチェックする。
幾つか表示された武装の内一つがマグナの目にとまる。

「面白そうなのあるじゃねぇの……作業用乗りな俺には打ってつけのが!」

ツイントライデントを構え、今度は自らネプチューンへと突撃する。

「来たか!」

ネプチューンもトライデントを構え、それに対抗。
互いの刃が正面からぶつかり合い、衝撃で手放してしまう。

「今だ!」

マグナが操縦桿のボタンを押す。
左腕が手を放れたツイントライデントへと伸ばされ、二つのアンカーが射出される。
アンカーはトライデントへと巻き付き、ワイヤーを巻き戻してトライデントを再びエーギルの手に戻す。

「なっ!?」

「おおおっ!」

そのままトライデントを振り下ろし、ネプチューンの装甲を切り裂く。
海中では僅かな亀裂が致命傷となる……装甲を切り裂かれたネプチューンは水圧に押しつぶされ圧壊、海底へと沈みながら爆発する。
残り二機のネプチューンの姿は何処にも無い。どうやら撤退したようだ。

「は……はぁ……終わったぁ」

安堵の息を吐き、マグナはエーギルを海上へと浮上しアトランティスの甲板へと上がる。

「……あら?」

直後、自分の目の前にエーギルと似たような二機のMSが空中から降り立ち、行く手を阻んだ。
その二機、ヴァハとフォルセティに乗るサリアとゲイルも驚きに目を見開いている。

「な……なんで、エーギルが?」

「ゲイルだけじゃなかったんだ……勝手に持ち出したの……」

「……今日は、厄日だな」

マグナはコクピットで自分の今日の運勢を呪った。
一難去ってまた一難とは聞くが、もう一難あるとは聞いていないと心の中で神様に文句を言いながら座席に身をあずけた。


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