「祭」とダービートレーナー
眠れないので、ベッドからもう一発。この「祭」は、ダービーウイークが始まる前の日に川崎のダイソーで購入し、ずっと行動を共にしてきた。川崎から佐賀へ。佐賀から盛岡へ。盛岡から門別へ。門別から大井へ。大井から姫路へ。姫路から名古屋へ。そのせいか、妙に愛着が湧いてしまった。しんどいときに「祭」を見ると、テンションが上がって。乱雑な扱いをして少し破れてしまったときには、激しく取り乱して。しかもこの「祭」の裏面には、全国各地のダービージョッキーのみなさんのサインが書き込まれている。105円の「祭」は、夢が詰まった宝物になった。ところが。東海ダービーが終わって30分が経過した頃、大変なことに気がついた。しまった。倉地学騎手に、サインをもらってない!しかし気づいたときには、倉地騎手はすでに競馬場をあとにしていた。まいったな……。楽天競馬さんにも、「Tシャツにサインもらってきて」と頼まれているのに。しゃあない。明日の朝、弥富トレーニングセンターまでサインをもらいに行くか。いや待てよ、明日は全休日かもしれないぞ。全休日にトレセンに行っても、倉地騎手に会えないんじゃないか?弥富は名古屋からけっこう遠い。最寄り駅からトレセンまでのタクシー代もばかにならない。頭を抱えていると、目の前を角田輝也調教師が通った。あっ、角田先生、明日って全休日ですか?「ん、どしたの? 倉地のサイン? 俺がもらってくるよ。そして井上さんの家に送ってあげる」東海ダービーの表彰式前。角田調教師は、口取り撮影を終えたダイナマイトボディを曳く厩務員さんにこう言った。「クーリングダウンは、表彰式が終わるまでここでやって。ファンから見えるところで」年間最多勝記録の日本記録を保持するダービートレーナーは、優しさでできている。