|
カテゴリ:パロディ
オレの名はフライング・フライマン。長いのでフライマンで結構だ。おっと、フライディとは言うなよ。それは、ステディな関係だけだ。 もっとも、この名前も、今日で お別れだ。高校生の時にハエのパワーを得てヒーロー稼業にデビューしたオレだったが、今日は一児の父になる記念だからだ。 結婚して3年、誕生する子供の将来の為にも、ヒーローなどと言うヤクザな副業からは足を洗わなければならない。これからはカタギの公務員として、生きていく覚悟だ。 記念すべき引退日、1件の銀行強盗と2件のスリ、5件のコンビニ強盗を片付けたオレは、衣装を仕舞い、ワイフの病院へと向かった。
息せき切って──人間らしく──病室に飛び込んだオレの眼前に、血まみれの室内が映った。 妻は...いや、言いたくない、その状態は。 「くそっ!」 そう叫んで窓を飛び出すのが、精一杯だった。
空を落ちながら、衣服を脱ぎ去る。下からはコスチュームそっくりに変化した地肌が露出し、背中のスリットからは羽が飛び出した。すぐさま羽を震わせ、水平飛行を開始する。 もう、他人の目など、気にする余裕は無かった。
複眼が血の航跡を捉え、追跡は すぐに開始された。妻と子供のカタキは、必ず この手で獲らなければ ならない。
オレは、航跡を辿り、敵の居場所を突き止めた。倉庫街に ある倉庫の ひとつに、ソレは潜んでいた。 オレは、自分を隠そうともせず、ソレに接近した。 「来タナ」 ソレは、荷袋の上に しゃがみ込んでいた。ずいぶんと小柄だ。 ソレは、オレを感知し、下から睨みつけた。その不気味な複眼で。 「死ね、ク●野郎!」 オレは、コミックコードを逸脱したセリフを口走りながら急降下し、ソレに殴り かかった。 ソレは、避ける素振りも見せず、笑顔を返し、こう言った。 「はじめまして、パパ」 次の瞬間、オレの拳は、ソレを砕けたトマトに変えていた。 呆然としたオレは、荷袋に めり込んだままの腕を引き抜く事もせず、その体勢で固まっていた。 抜けば、自らの手が、血で汚れている事を目の当たりにする事になるからだ。オレは、本能的に悟っていた。 アレは...その成長に、普通の人間でしか無い妻が、母体が堪えられなかっただけなのだ、と。 妻の死、そして家庭の崩壊は、すべてオレの責任だった。オレ自身の。
数時間後、我に返ったオレは、仲間の元へ飛び立った。新婚ホヤホヤの仲間の元に。 ──同じ悲劇を繰り返させては いけない。 すべてが片付いた時、オレは責任を取って命を絶つ つもりである。 【追記】 ルーク・ケイジと、フランクリン・リチャーズに。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2010.07.01 00:22:02
コメント(0) | コメントを書く
[パロディ] カテゴリの最新記事
|