エドガー・ライス・バローズ ベスト10
生まれついての不精で、いつも損ばかりしている没っちゃんな性格なのだが、「ど
うせ いつかは死ぬ!いや明日 死ぬかも?!」と思い直し、好きなように書いてみ
る。
私は自他共に認める…と書きたいところだが、他人様には 殆ど披露していないバ
ローズ ファンである。その証拠に、創元推理文庫SF(創元SF文庫)とハヤカワ文庫
SFは全巻揃えている(未訳分とバージョン違い、小西訳を除く)。また、ルポフの
「バルスーム」も持っている。ほとんどは80年代に新刊で購入した(「ターザンの密
林物語」のみ、近年、ネットで古書を求めた)。そんな中からオススメの10冊を選び
たいと思う。上位は客観的に、下位は主観を交えて選択した。
なお、創元信者なので、両社から出版されている場合、創元タイトルを優先した。
1 火星のプリンセス
1 ターザン(類猿人ターザン)
3 月のプリンセス/月からの侵略(月の地底王国/月人の地球征服)
4 時間に忘れられた国(時に忘れられた世界、ほか全3巻)
5 ルータ王国の危機
6 石器時代から来た男
7 南海の秘境/風雲のメキシコ
8 ポロダ星での冒険/タンゴール再登場
9 金星の火の女神/金星の魔法使
10 モンスター13号(モンスター・マン)
次点 美女の世界ペルシダー(ペルシダーに還る)、アパッチデビル/ウォーチーフ
同率1位となった「~プリンセス」と「ターザン」だが、これは火星シリーズの第1
巻とターザン・シリーズの第1巻であり、バローズの商業小説としても1,2番目に発表
されたものであり、入門編に相応しいだろう(執筆順は1,3)。これで馴染めなけれ
ば、その人は、まずバローズの小説を読まない方が良いだろう。時間と金のムダだ
し、精神衛生上も良くない。
3位は2冊ずつランクインしているが、月シリーズ(ムーン・シリーズ)3部作であ
る(2巻目に第3部も収録されている)。アメリカの単行本では1冊に纏められている
が、かなり省力されているらしい。未来SFであり、3部ともジャンルが違う(それぞ
れ順に、スペースオペラ(月での冒険)、ハードSF(ディストピア)、西部劇調の
SF)。アカ嫌いの方、管理社会の嫌いな方が読むと感情移入できると思われる(第2
部に)。バローズが「単なるアクション小説の書き手」で終わっていない点が3位に
選んだ理由である。「火星」との関係は序盤のみ。また武器の設定が「火星の秘密兵
器」に流用された。
4位は、一見、コナン・ドイルの「失われた世界」の亜流に思われるが、進化に焦
点を当てた作品となっており、やはりバローズの着想に感服する。
5位は冒険小説であり、SFでは無い。「ゼンダ城の虜」(だっけ?9)をモチーフ
にした作品で、早い話が「王子と乞食」だが、主人公とヒロインの一途な想いに感動
させられる。
6位は故・厚木淳 推薦である。バローズのベスト5に入るそうだが、悲恋モノであ
る事、またオチが●オチになっている点を減点し、6位とさせて頂いた。とは言え、
主人公ヌーの一途な想いは(略)。
7位は、リチャード・A・ルポフ推薦。バローズの小説は、一概に主人公は男性らし
く(心身ともに)紳士的な存在だが、この2作(アメリカ版は1冊)の主人公は なら
ず者であり、女を殴る事を「男らしさ」だと思っている無頼漢である。とは言え、次
第に紳士に目覚めていく訳だし、「ターザン」における「出自/育った環境の違い
(ヒロインとの)」をリアルにした、とも言える。冒険小説としても面白いが、南海
の孤島に室町幕府由来(?)の「オダ」氏の子孫が現地の人食い人種と混血してサム
ライ文化を伝えている(歪んでしまっているが)あたり、ニヤリとするかカッと す
るかは 個人の自由だろう。第2部の詩人も良かった。ぜひ続編を…って、もうムリだ
が。
8位は「さい果ての星の彼方に」の第1部と第2部で、「金星の魔法使」に収録され
ている。本来は3部ないしは4部作として構想されたが、バローズの寿命が尽きた為、
未完。第1部は「火星のプリンセス」のリアル版とも思える。第2部はスパイ物で、
「金星の独裁者」を読んでいなければ楽しめる…気がする。「~独裁者」より短いが
同工異曲的な構成なので、時間の無い方に。
9位は独断と偏見で。そもそも金星シリーズは、「バローズの亜流」と言う出だし
(「金星の海賊」)で、第2巻「金星の死者の国」で、飛行艇アノタールが登場して
以後、やや趣を変える事に成功している(火星と違い、フライング・マシンは これ1
機しか無いのだ)。第4巻「~火の女神」は4部構成で、バローズ末期の「連作短編」
形式である。第3部「アメーバ人間と博物館」では、ヒロインのドゥーアーレーが単
独行動し、活躍している。これはバローズのヒロインとして例外的な描写で、しかも
ここは三人称で描かれている(本来は主人公の一人称)。また、「~死者の国」でゲ
スト(サブヒーロー)として登場したキャラが再登場し、以後「~魔法使」において
も主人公とタッグを組んでいる(ヒロインは「~魔法使」には登場しない)。この
「アメーバ人間~」から「~魔法使」までは面白いのだが、そこに辿り着くまでに3
巻+2部も回り道しなければならず、また焼き直しのような話を読むのも苦痛なので、
この順位に留めた。
10位は人造人間テーマで、主人公ブラン(13号)の真摯で悲痛な想いに共感させら
れる。ネタバレは避けるが、オチは ちょっと…。まぁ伏線は張って有ったが。後に
「火星の合成人間」に一部設定が流用された。
次点その1。まずはペルシダー・シリーズの第7巻。創元版は3部まではキチンと訳
してあるが、第4部はダイジェストである。これはハヤカワ版が第4部の版権を持って
いた為で、やむなく この時からハヤカワ版も集め始めた(武部先生のイラストが良
いのに…)。面白いのだが、ターザン・シリーズなどからの焼き直しが目立つ為、次
点とした。しかし、デヴィッドが主人公であるにも関わらず、準主人公と同格で三人
称で進行する点は良かった。また、アー・ギラク(ペルシダー語で「老人」)と呼ば
れる地上人、サブヒロインのオー・アアのキャラが立ち過ぎている。正味、第4巻~
第6巻に関してはマンネリ気味だっただけに、ポイントは高い。第1巻と第2巻も面白
いが、あえて今回は外した。
次点その2。アパッチ・シリーズの正続編で、一言で言うと「ターザンの焼き直
し」。しかし滅び行くアメリカ・インディアンの描写(歳を取るにつれ、戦いを倦む
ようになるジェロニモとか)、ヒロイン・アシュケイネイの悲劇(厚木淳いわく「野
菊の墓」)など、心を打たれる。
以上、焼き直しが多いので、初期と最末期に偏った感は有るが、「密林の謎の王
国」、「失われた大陸」、「石器時代へ行った男」なども十分に面白いし、「火星の
幻兵団」、「火星の交換頭脳」も お気に入りである。