13根源 14変容 15両極 16刷り込み

13 根源(初めての視覚)

究極にあなたが開くと、すぐさま究極があなたに注ぎ込まれる。あなたはもはや普通の人間ではなくなる。超越したのだ。あなたの洞察が、存在の洞察になる。あなたは、存在とは離れていない。自らの根源を見つけたのだ。普通、誰もが根源を知らずに右往左往する。自分の心臓のエネルギー源を知らない。自分の中で誰が呼吸をしているのか知らない。自分の内に流れる生のジュースに気づかない。

その根源は、体ではない。頭でもない。すべての二元性を超越した何かで、煩悩を破る薄伽梵(ばがぼん)と呼ばれている。10方向の薄伽梵(ばがぼん)。

あなたが開くと、あなたの内なる存在がまず経験するのは、上と下の2方向だ。それからゆっくりと落ち着くにつれ、周りが視野に入り始め、残りの8方向に広がる。

上下が出会う点にたどり着いたら、宇宙の果てまで見渡すことが出来る。それから、10の方向すべてにあなたの意識は広がり始める。が、そこへの道はずっと一つだったのだ。

<訳注>薄伽梵(ばがぼん)
サンスクリットでバガヴァット。尊いとか、優れた、煩悩を破るなどの意味があり、仏に対する尊称としても使われる。バガを名詞にすると“食べ物がいっぱいになった”で、満腹になると幸せになるから『幸せ』『幸運』『吉祥』という意味になる。ヴァットは、『~をもっている』という意味なので、『非常におめでたいものを具えている人』『吉祥なる人』で仏陀のことです。

14 変容

禅師は、教師ではない。どの宗教にもいるのは教師だけ。教師は、あなたが体験したことがないことを教え、信じ込ませようとする。というのも宗教体験を客観的事実として表す方法はないのだから。その教師さえ、体験したわけではない。ただ信じることにしてきただけなのだ。教師は、自分の信じ込みを他人に教え込む。禅は、信者の世界ではない。信心深い人たちのためにあるのではない。勇気ある魂の持ち主のためにある。あらゆる信じ込みを捨て、あらゆる不信を捨て、あらゆる疑いを捨て、あらゆる理性を捨て、あらゆる雑念を捨て、純粋に存在そのものに、境界の一切ない存在そのものに
入っていく勇気ある人のためにある。

それは、途方もない変容をもたらす。私に言わせれば、他の宗教が哲学に身をやつしている間に、禅は変容に専念する。それは、根底からの錬金術。あなたは、ただの金属から金に変わる。しかし、その言語表現は、理性や知性で理解できるものではない。愛情あふれたハートからの理解でなければならない。あるいは、ただ聞くことによる理解。その表現が正しいかどうかなどに煩わされることなく、ただ聞く。そしてある瞬間が突然やってくる。あなたにそれが見える瞬間が。生涯逃し続けてきたものが、見える瞬間がやって来る。突然、仏陀が「八万四千の扉」と呼んだものが、開く。

15 両極の統合

紛争は、人間の内側で起こっている。内側の紛争を解決しなければ、外側の紛争は解決されえない。政治は、あなたの内側で起こっている。政治は、雑念の東西両陣営間で行われている。

2つの陣営には、小さな架け橋が1つあり、その橋が壊れたら、事故や生理学上の損傷、その他の理由で壊れたら、人は分裂して、2つの別の人格を持つ。精神分裂症や多重人格が発症する。その橋はこわれやすいもろく、壊れたら、二つの人格を持つ。別の人間であるかのように振舞う。朝には、愛情あふれ、美しい存在だった。夜になるととても怒っていて全く別の人格になっている。朝の自分を覚えてはいない。思い出すことが出来ないのだ。別の気持ちが働いていた。このように人は、2つ人格を持つ。

もし、雑念の両極が消え一つになるほど、その架け橋が強靭であれば、その時には両極の統合が、透明化が生まれる。グルジェフがいつも実存の透明化と呼んでいたものは、雑念の両極が1つになることに他ならない。男性エネルギーと女性エネルギーが、内側で溶け合う。陰と陽が溶け合うこと。右と左が溶け合うこと。論理と非論理が溶け合うこと。プラトンとアリストテレスが溶け合うこと。

16 刷り込み

刷り込まれた仮面をそぎ落とさない限り、本当の自分を知ることはない。本来の個性は、存在に与えられたもの。刷り込まれた仮面は、社会が押し付けたもの。世間で生きるには、刷り込まれた仮面をつけているのが都合がいい。

社会は、個性的な人間には耐えられない。個性を生ききる人間は、羊のように服従しない。個性を生きる人は、ライオンだ。ライオンは、一人で歩む。

羊はつねに群れをなしている。群れの中にいると心地よく楽だと思っている。群れていると守られていて安全な感じがする。襲われても、群れていれば、救ってもらえそうだ。一人ぼっちだとどうなるだろう? 

ライオンだけが、一人で歩む。

そして人は生まれたとき全員ライオンだったのだ。だが社会の刷り込みが始まる。羊にならせようと刷り込まれる。人の頭を羊化するように、洗脳する。その洗脳プログラムゆえに、人は仮面を生きる。当たり障りのない仮面をつける。素直で、都合のいい、とても従順な仮面を。

社会は、人が奴隷になるのを望んでいる。自由に生ききる人を望むことはない。社会が、奴隷を望むのは、社会で既得権益を得ている者たちにとって、従順な人間の方が都合がいいからだ。





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