2008/02/24(日)22:46
伊藤比呂美さんを聴きに行く。
この土曜に、県立図書館で第十五回「萩原朔太郎賞」受賞記念講演会『現代詩の新たな
地平をめざして』と題された伊藤比呂美さんの講演に行ってきました。
彼女の名前を知ったのは『良いおっぱい悪いおっぱい』。80年代半ばに多くの方に支持された
育児エッセーです。産前産後に読まれて、救われる思いになった方もたくさんいらしたようです。
残念なことに私は出産経験が無いので、参考にしようにも出来なかったわけですが、たくましく真っ
直ぐぶれることの無いことばたちそのままの印象で、08年の県立図書館大研修室に伊藤比呂美
さんはいました。
そのときのお子さんは思春期を向かえ、新たなパートナーとともに受賞作
『とげ抜き 新巣鴨地蔵縁起』 に登場しています。それではエッセーなのかと言う
と、そうではありません。「萩原朔太郎賞」は現代詩を対象とする文学賞です。
でもこの作品、審査で小説か詩かという議論があったそうです。なんかややこしいなぁ、それに、
現代詩だし・・・。と、思うかもしれませんが、詩人の彼女にとって小説は別物だったようです。
『世阿弥』から『とげ抜き・・・』まで、伊藤さん独特の溌剌とした語り口で詩の歴史を語り、
芥川賞候補にもなった2作の小説を書いた時のことを語り、詩に戻ったときの様子を「水を得た
河童」のようと語り、詩は心の奥のドロドロを行間の中に入れ込めると語り。
「説教節」に共感し、言葉のリズムを意識して出来上がった今回の作品では、夫や子供がいるカリ
フォルニアの自宅と、介護が必要な父母のいる熊本と、生まれ育った巣鴨を行き来する様子が
詠われています。
ロングヘアで、おしゃれな印象を受けるその姿からは想像つかないほどの「苦」を背負いながら、
かつて子育ての女達の不安を救った彼女は、けして絶望で留まらない言葉をリズミカルに紡いで、
介護や思春期の子供たちとの葛藤に疲れ果てている人たちを「説教節」のように救いたいと語って
いました。
伊藤比呂美作品