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ひばかり

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小説まがい

2007/07/28
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カテゴリ:小説まがい
akatyan00

真っ赤に広がる草原を、ちょん髷の少年が走っている。
歳の頃は十二、三位だろうか。
ちょん髷だけでも充分奇矯であるけれど
彼の服装がまた更にその極みで
上は背中に「猫イラズ」と黒筆文字で書かれた水色の鯉口シャーツ
下はいかにも祖父の御下がりといった趣、見るからに寸法の大きな
所々汚れ染みの付いた駱駝股引を
Y字型サスペンダーで吊り上げているのだけど
その股引、尻の部分が直径二十糎ほどの円形に切り抜かれており
尻丸出し状態である。

わたしはその後ろ姿を草の上にひとつ設置した座椅子に胡座をかき
皿に盛り付けた蛙の腿肉練乳がけを箸でつつき
こりこり食しつつ眺めている。
あの~おっ、子っは~っ、何処お~っ、の子~おっ、こんな夕暮れ~
なんて流行歌の一節、しゃくり上げるような歌い回しが
妙に強調されて頭をよぎるも、今は夕暮れ時ではなく
ちゅんちゅら雀のさえずる朝焼けの時分である。
よって、わたしは蛙の腿肉練乳がけこれを朝食として食しつつ
目前の奇妙な景色を眺めているといった状況である。

少年の行く手には、鮮やかな黄色い水をたたえた湖が広がっており
風は無く水面穏やか。
いや、一見水に見えるが、その質感は液体ではなく
ゼリーのような半透明半固形物質であるらしく
凝らして見ると、ぷるぷる小刻みに揺れている。

全力疾走する少年は更に勢いを増し、湖に飛び込むべく
その踏み込み地点となるであろう水際に到達する直前
何かに躓いたらしく、期待に反し呆気なく
べたん、と草の上うつ伏せに倒れ込んでしまった。
わたしは食事の箸を止め、身を乗り出して
さて、どうするのか、と成り行きに見入っていたのだけれど
倒れたまま動こうとしない彼は、そのままの姿勢で
口元にある赤い草を、むしゃむしゃおもむろにはみ始め
やがては唐突にぶりぶりと脱糞し始めたので
ただでさえ不快な光景、まして食事中であるわたし
さすがに、げっとなり目を逸らし座椅子ごと彼に背を向け座り直す。

と、そこにいつの間に現れたのか
左頬に絆創膏を貼り付けた初老の男が立っている。
身に纏っているのは、極めて身幅の狭い江戸むらさきのタンクトップ一枚ぎり。
その両脇からは乳頭がはみ出していて、その上にも絆創膏が貼り付けてある。
更には陰部丸出し。といった一見してあほと判る風体で
定まらぬ視線を不安定に泳がせつつ、にしゃにしゃ頬を緩め
「僕、赤城君。赤ちゃんでーす。ひひん、ひひん。」と云う。
わたしは怪訝に思い「なにか用ですか?」見上げつつ問うと
少々驚いた様子で彼、「倒木。 倒木。 倒木。」と四方を指示する。
しかし、当然ながら彼が指し示した先には何も在りはしない。

しかして当方の困惑にお構い無しの彼、今度はけたけたと笑いながら
自分の頭髪をむしり始める。
わたしは食事の皿に、むしり取られた毛が混入すると厭なので
立ち上がり、そろそろと後ずさり。ところが自身の可視圏域外である頭の上
きれいにむしりきれない箇所の存在に気付いた彼
それに気付くと、もう気になって仕方が無い、居ても立ってもおられん様子で
無言のうちに「むしってくれ」と云わんばかりこちらに頭を突き出し
更には駄々っ子のごとくに地団太踏み踏みにじり寄ってくる。

むしられて、はらりはらりと舞う毛毛毛。

おい、皿に入るじゃねえか、この野郎!って、絵にも俳句にも成りゃしない。
ましてやたとえ百歩に余る歩数、譲りに譲って
見た目が類似してると仮定したとしても
料理に振りかける、刻み海苔の代替品になど成り得る筈もない。

さすがに頭にきたわたしは、足元に落ちていた金槌を拾い上げると
祭り太鼓でも打つかのごとく、柄の部分で力一杯、カン、カン、カン!
まだらの頭に食らわしてやった。

かかかっ、やってやったよ。どうだ、思い知ったか、あほめ!

一方、食らった本人、少しは怯むかと思いきや、懲りた様子は微塵も無く
突如真顔になったかと思うと、くるりとわたしに背を向け
自身の陰嚢を指で引き伸ばし、もてあそび
「民族博物館ー、民族博物館ー。」
と意味不明な名称を幾度となく連呼しつつ走り去っていった。

まったく、なんなのだろう。

“結構、毛だらけ、猫、灰だらけ”って、“皿、毛だらけ”だよ。

気味が悪いなぁ。いや、この場合、機微が悪い、かな?  
そう、君が悪い。

はははは、滑稽、滑稽、ウコッケイ。

宝くじでも当たらねえかなぁ。


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ヲシテネ。









最終更新日  2007/07/29 07:47:47 AM
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2006/02/09
カテゴリ:小説まがい
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世間を賑わしている事件、新聞の記事より一部。

「山小屋から男の変死体」

××県××郡××村××山、山中、山小屋にて
男性の変死体が発見された。
この遺体は、上記山小屋近くを通りかかった、同××村に住む
地元猟師の男性が小屋内部を覗いたところ異変に気付き
発見に至ったもので、発見当初、遺体は着衣を身に着けておらず
頭部及び性器、四肢の一部が欠落していた。
小屋は内部から鍵が掛けられ、外部からの侵入の形跡が無いこと
並びに同小屋内部より、犬猫、ニシキヘビ等の動物が
保護されていることから、これらの動物がこの男性の死因に携わり
死後、身体欠如部位を食したものとみて警察は捜査を進めている。

    云々。





「こんちはー」と仕事で毎日顔を出す配達先事務所にて
雑誌を読んでるオヤジさん。

開かれたページをちらりと覗くと
そこには「知的な冬ごもり」という見出し。

「ほぉ、冬ごもりですか」

私が冗談半分で言葉をかけると、彼は、ははん、と笑う。
時間に追われている為、話し込むこともなく
そそくさとその場を後にしたので
如何なる雑誌であるのか、その内容すら分らない。

その昔“ サライ ”なんて雑誌をよく読んだが
この手のものにありそうな見出しではある。

しかし、この響き。

「知的な冬ごもり」

いいですねぇ。

音も無くしんしんと降り積もる雪に閉ざされた山中、山小屋。
揺らめく暖炉の炎に、部屋は勿論のこと
ランプの灯りもあたたかい。
私はロッキングチェアに揺られ、紅茶など飲みながら
優雅に読書をする。
膝の上には猫が丸まり、足元には物静かな老犬。

おっ、気が付くともうこんな時間。 職場に向かわなければ。
この雪である、ふもとの村まで徒歩で3時間。
そこから更に駅まで40分、そこで始発に乗り込み
途中、乗り継ぎを3回して、片道およそ8時間の計算である。

慌ただしく身支度をする。
年季の入ったアザラシ毛皮のコートにニット帽。
ラクダ股引(ももひき)の上にナイロン製の防寒作業ズボン
革の手袋、分厚い毛糸のマフラーを首から上、顔半分までを覆う様に
幾重にも巻くことにより外気露出部分はおおむね目のみとなる。
仕上げにかんじきを装着し、小屋の木戸を開け
白銀の世界へ躍り出る。

しかし、辺り一面真っ白でどこが道やら、四辻やら。
両脇に埋もれた木らしき小山があることから
辛うじてその中心が道であると推測出来る有様。

思った以上に雪が深く、思う様に前へ進めない。
山小屋を出てから一時間程経過しただろうか。呼吸が乱れ息苦しい。
口を覆うマフラーをずらし深呼吸をする。
凍付く外気に肺の奥まで凍りそうである。

気がつくとやんでいた雪がまた降り始めている。少々風も出てきた。
“ 早く山を下りねば ”山の天気は変わりやすいのだ。
しかし、行けども行けども、同じ景色。
そのうち吹雪き始め、視界は奪われ、風に煽られ進退不能。
雪の上にまた雪。見る間にずんずん降り積もり
腰まで埋って身動き出来ない。
焦ってもがくも、どうにもならず包み込む雪の布団で眠りたい様な。

いや、ここで寝てはいけない。気をしっかり持たねば。
と、必死で見開く瞼、凝らす視界の遠くに、白い着物の女の姿。
全身透き通るが如く白く、まるで雪の化身。

あれが、昔話で読み聞かされた雪女だろうか?

そう思った直後、突如衣服を全て剥ぎ取られたかの様に
鋭い冷気が全身を駆け抜ける。

ひゅうぅぅぅぅーっ

ああ、俺はここで死ぬのか・・・


いや、ちょっと待て。

お題は「知的な冬ごもり」である。
かような過酷な試練は必要無いのだ。

その生活振りは優雅、且つ自由でなくてはならない。
そう、今一度山小屋に戻ってみよう。
そして明日の仕事のことなど考えず
例えばノルマ達成のご褒美としての長期休暇
若しくは有り余る程の資産家で、働かずとも食うに困らない身分の男が
人里離れた山小屋で悠々自適に暮らす・・・そう、これでいこう。

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最終更新日  2006/02/10 01:01:28 AM
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