嫌な思い出を語る90代の男性
入院の準備をリーダーに指示されてNさんを処置室にご案内した。忙しい中、速攻終わらせようと思っていた。車椅子からゆっくりストレッチャーに自分で移り、上着を脱いで寝てもらった。ルート確保をしようと進めていた。では、チクッとしますよ〜「全然痛くないよ。」「ここの8階に入院したことあるんだけどね。夜中に採血をするって言って看護師さんが二人きたんだよ。でも何も言わずに刺されたのもあって痛くて思わず『いてー』って叫んじゃったんだよそしたら、その看護師さんたちなんて言ったと思う?『他の患者さんに迷惑ですから大声出さないでください!』って言うんだよ。僕だってね、出したくて出したわけじゃないんだよ。その後、そこの長の師長さんの〇〇さんから話をされた時『そのような事実はありません』だなんて言うもんだからああ、やっぱり大きな病院は事実や過ちをもみ消すんだなって思っちゃってもう話す気にもならなくて『もういいです。この件に関しては何ももう言いません』って言ったんだそしたら、師長さんは『ありがとうございます』って言ったんだよ。ただ、一言『すみません』って言葉が聞きたかったのに一度もなかったよ。採血をしたのは若い方でもう一人が指導する人だったみたいだけど。その時、謝罪も何もなかった。悲しそうな声で天井を見つめながらそう話してくれた。私は、その話を聞いて、一方の方の言い分を信じて判断するのは良くないけど気の毒すぎてしょうがなかった。思わず、忙しいのに手を止めて話を聞き入ってしまった。これはしっかり話を聞いてあげなきゃと思った。悲しい出来事の思い出に耳を傾けなきゃと思った。この方は入院生活が不安になっているんだと思った。今回は幸い、その病棟ではないから安心してくださいと伝えた。そして当院の対応が悪かったですねと謝罪した。同時に自分の病院にガッカリした。こんなふうに高齢者に・・・患者に・・・接する看護師がいるのかと思うと患者に申し訳ない気持ちでいっぱいになった。それこそ、自分が日頃から相手への思いやりを気をつけて業務しているつもりだったからそこが欠けている看護師がいると思ったら少し怒れてしまった。やっぱり初心に戻って“寄り添う”とは何か考えて看護しないとと思った。自分もその時、忙しいから早く入院前検査終わらせようという考えしかなかったから今、この人は疾患を抱えて治療のために入院するんだという意識を持って辛いことや苦しいことがなんなのかその人をしっかり看て接しなきゃと我に返った。そしてNさんの思い出の中の看護師たちを反面教師として今回の出来事を捉えたい。