瀬戸キリスト教会牧師 西風の会代表 堀 俊明  精神障害2級 (躁鬱病,アルコール依存症)

2007/01/13(土)20:00

不二家は旧来の日本型経営の典型である

経済(8)

 不二家の不祥事の詳細が報道されるにつれて唖然としたのは私だけではないと思います。雪印乳業が破綻した経緯を詳細に見られる立場にあった同業者が同じ轍を踏むとは呆れてものが言えません。市場から退場してもらうしかありません。  食品業者が品質管理にミスをすれば人命に関わりますから、品質管理は製造ラインで最優先されるのが常識だと思っていました。中小企業ならいざ知らず大手企業の不二家が品質管理マニュアルの整備・徹底を怠っていたのは驚きです。  消費期限切れの原材料の使用、食品衛生法の規定の10倍の細菌が検出された洋菓子の製造・販売、工場でのネズミの大量発生は品質管理マニュアルが整備されていたら製造禁止、出荷停止、製品回収が想定される緊急事態の発生です。  それに対して緊急事態として対処した痕跡が見られないようです。むしろ昨年11月には事実を把握しながら、「マスコミに発覚すれば、雪印乳業の二の舞いとなることは避けられない」という内部告発を警戒する文書すら配布しました。  経営陣が事態の隠蔽を優先したのはバブル崩壊から何ら教訓を得ていない証拠です。危機管理ができない企業は市場から退場させられるのは常識です。危機管理のミスは経営陣の責任ですが、内外で業績を悪化させた企業は目白押しです。  コンプライアンス以前の経営者としてのモラルの問題です。経営陣は創業者一族だそうですが、創業者の志は雲散霧消したのでしょうか。定年後に再雇用された従業員のミスのようですが、勘では済まされない作業工程からの逸脱です。  ケーキ類の製造には勘に頼らなければならない部分もあるでしょうが、衛生に関しては人為ミスの入り込まない作業工程での管理が必要とされます。品質検査で黒と判定された製品が市場に出回るなどは論外です。ネズミは信じられません。  不二家は旧態依然の経営が続けられていたのでしょう。赤字が続く原因もその辺にあるのかも知れません。創業100年に向けて克服すべき課題が明らかになったのですから禍を転じて福となせばよいのです。むしろ喜ぶべきかも知れません。  今回の不二家の不祥事は日本の企業の抱える問題が顕在化したケースかも知れません。日本の企業の危機管理は欧米に比べて甘いところがあるからです。危機対応マニュアルがあっても危機に対応できない経営者が余りにも多いからです。  欧米型の経営陣を頻繁に入れ替える経営手法は日本に馴染まないでしょうが、日本企業は経営者が経営責任を取らず居座り続ける旧来の悪習から解放されるべきです。公的資金を導入された銀行でさえも経営陣の居座りが目立ちました。  日本のシステムは責任を取る人間が存在しないシステムです。終身雇用、年功序列はその典型です。経済が拡大していた時には世界最高のシステムでしたが、分け合えるパイが限られてきた現在ではトップダウンのシステムも必要です。  サムソンには年俸1億円を越す従業員が100名もいるそうですが、定年は45歳だそうです。韓国のグローバル化の勝ち組の答えは徹底した能力給ですが、日本には馴染みません。緩い終身雇用、専門職の年功序列が相応しいと思います。  非正規の職員、フリーター、女子職員などの待遇を全体的に押し上げる政策がとられるべきです。男性と比べ能力差のない女性を活用しない社会は滅びます。北欧型のワークシェアも取り入れて、中産階級を増やすのが日本再生の道です。

続きを読む

総合記事ランキング

もっと見る