精神病は心の病気ではない
精神病は脳の病気です。現代医学ではまだ解明されていませんが、脳内伝達物質、セロトニン、ノルアドレナリン、ドーパミンなどの代謝異常だと考えられています。脳が正常に機能しなくなるので結果として心も病んでしまうのです。 脳の機能が侵される原因は様々ですが、ストレスに弱い体質の人が過剰なストレスを受けて発病する場合が多いようです。脳の機能を正常に戻すためには薬を服用する必要があります。脳内の化学物質の代謝を調整する必要があるからです。 過剰なストレスで心、ソフトが破壊され、次に脳、ハードが破壊され、さらに心、ソフトが破壊されたのですから、先ず薬の薬理作用で脳の機能を回復させることが必要なのです。脳の機能が回復すれば心のリハビリを始めればよいのです。 大切なのは脳、ハードが回復しない限り心、ソフトは回復しないのです。パソコン、ハードが壊れていればソフトを修復することは不可能だからです。しかし、病的な状態にある人は病気の自覚がなく、薬の服用を拒否する人が多いのです。 副作用を気にして薬を服用しない人もいますが、副作用のない薬はありません。現代医学は副作用が少なくて劇的に効く新薬を次々に開発しています。現代医学の進歩と共に精神病は特殊な病気から普通の病気へと変わりつつあります。 しかし、社会からは「何をするのか分からない人」と見られていますが、一時代前の精神医学の水準が医療の名に値しなかった時代に芽生えた偏見です。現在では仕事をしながら精神科に通院し、治療を受けている人も少なくありません。 精神科では早期発見、早期治療が特に大切なようです。心身に異常を感じても精神科を受診する人が少なく、受診しても外来通院を自分の判断で止める人が多いのです。例え薬が処方されても、継続して服用し続ける人が少ないのです。 発病しても早期に適切な治療を受けた人は回復が早く、社会的に破綻する場合も少ないのです。多くの人は社会的に破綻を来してから精神科の診察を受けに来るのです。若ければ若いほど回復も早く、社会的な地位も失わずに済むのです。 精神科の患者が薬を飲み続けるのは簡単なようで簡単ではありません。本人が病気を認められない場合が多いのですが、家族が病気を受け入れられない場合も多いのです。本人と家族が連帯できなければ、適切な治療を受けられないのです。 精神病は家族が一丸となって取り組まなければならない点で家族の病気です。病院での治療が効果を上げてきたら、脳のリハビリが必要です。脳の生理学的な機能が回復しても心が回復し、社会復帰できるまでにはリハビリが必要です。 リハビリは単調な繰り返しを気長に行う必要がありますが、回復してくれば加速度的に回復します。大切なのは目標の設定です。客観的に自分の能力を評価する必要があります。病気で失ったものを冷静に勘定に入れなければなりません。 病気が具体的に癒やされなくても、それなりの人生設計を立てられれば癒やされたのです。精神障害者は身体障害者と同じレベルの障害、脳に障害を負っていますが、心を回復させることができます。精神病は心の病気ではないからです。