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ある内科医の独り言

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2005.08.29
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日常の診療でもっともうれしい対価は高い給料でもなく、長い休暇でもない。受診した患者さんの感謝の気持ちだ。それは言葉であったり、笑顔であったり、時には手紙やはがきで綴られることもある。

僕が医者を志した理由というのはずいぶん昔の日記にも書いたのだけれども、あまりおおっぴらに自慢できるようなものではなく、人の体に対する興味だとか(当時はバイオテクノロジーが隆盛していた)自分を満足させてくれる、そういった理由だったように思う。

だから給料がいいとか悪いとかそんなことは全く考えてもいなかったし、実際に仕事を始めるまで気づくことさえなかった。修業年限は6年もの長期であったはずなのに医療現場で繰り広げられる実際の感動や醜聞などはほとんど見聞することなく、国試合格後はそのまま実戦へ配備されるといった感じだった。

実際に働きだしてみると、医者の仕事はとてつもなく多岐にわたることがわかった。特に下っ端のDr.であればあるほど雑用を数多くこなさなければならず大変だということも身をもって知った。その代わり上級になればなるほど責任は常に重くのしかかることも何となくわかるようになった。特に大学では「こんなの医者の仕事じゃない」と思われるような仕事も数多くあったが、今振り返ってみるとそれは精神力や忍耐力を鍛える上で役に立っているのかも知れない。単にマゾっ気があるだけなのかも知れないが。

いずれにせよ、信じられないスピードと広がりを見せる仕事の中に身を置くことになってからは医者という不思議な職業を改めて感じることとなった。と、同時に絶え間なくやってくる患者さんに対する考え方もずいぶん変わった。

いままでは自分が医療を受ける側であったのに、ある日突然医療を提供する側になったわけだから当然といえば当然なのだが、そこにはいくら表現しようとしても表現しきれないものがある。

僕はかつて(今でもそうなのだが)小児喘息を煩い約10年以上つらい日々を送った。季節の変わり目は必ずといっていいほど発作が出現した。発作は夜半が多く教科書通りだということは医学生になってから知ることとなった。発作が起こると母はうろたえ、父は嘆き、家族全員が思い雰囲気に包まれた。幼い僕自身でさえも自分が悪いことをしているような気がして両親に申し訳なかった。

夏の暑い日、発作が起こりあまりの辛さに早退したとき、炎天下の誰も通らないような細い通学路を這って家まで帰ったことなど忘れようとしても忘れられない。また、夜中に発作が起こった時、たまたま薬が切れてしまって母がかかりつけの先生に電話したとき、その先生がわざわざ診療所にまでやってこられてイヤな顔一つせず薬を処方されたときのこともまた忘れられない思い出だ。

自分が医療を受ける側で当たり前だった、こうした時期から医療を提供する側となった現在、いったい自分は何のために働いているのだろうと自問自答することがある。現実的に突き進めば理想は低くなり、理想を目指せば現実問題としてたちいかなくなってしまう……そうした矛盾をどのように解決していけばいいのか残念ながら僕にはわからない。

ただ、僕にわかることはこの矛盾を感じなければ前には進めない、ということだけだ。『社会的・身体的弱者』とされる患者さんたちが多く集うこの病院には大なり小なり矛盾など掃いて捨てるほどある。しかしうまく立ち回っていない現実があるからこそ、その現実をいかに改善し自分の糧にしていくか僕自身の度量が問われているような気もするのだ。

そして、いくら矛盾が渦巻いていようとも患者さんの笑顔に勝るものはない。彼らが良かったと思えるその気持ちこそが我々に力を与え、この矛盾を解決できる大きな原動力ではないかと思うのだ。







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最終更新日  2005.08.29 10:34:07
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