2009/01/29(木)22:22
ちょっと、遅いんじゃ・・・
今日、牛のお産があった。もう予定日を5日も過ぎているので、どうなっちゃったのかなと思っていたが、朝から乳が張って、牛乳がもれている。
ああもう、今日は生まれるなと何度か様子を見に行っているうちに、かなり大きな蹄が出ている。手を入れてみると、ちゃんと正常に頭も出てくるところだ。もうすぐである。
そのうち羊膜が破けて破水した。こうなってくると様子を見て、なかなか自力で出せないようなら軽く介助して分娩させなければいけない。子牛もかなり大きいので、しばらく様子を見た後、牽引して分娩させることにした。
子牛の足に産科バンドという太目のバンドを引っ掛けて、牧場主が引っ張る。いきむ牛と呼吸を合わせて「せーの!」と声をかけながら引っ張り、私は出てくるところを広げたり、出てきた子牛を抱えたりして介助する。
頭の横幅が広いところでつっかかり、腰骨のところでつっかかりしながら、子牛はようやく無事生まれた。
苦しさから解放されて、安心したのか親牛はぼやーーんと前方を見ている。子牛の身体はまだ羊膜がくっついたり、羊水で濡れているので、ここはひとつお母さんに舐めてもらいましょうと親牛の鼻先に子牛を引っ張っていった。すると、その子牛を見るなり親牛は、
んまーーーーー!(いやーー!何これ!)
と雄たけびをあげるなり、ばたばた暴れ始めた。いやいや、今生んだでしょうよ・・・といってみたところで、全然なめようとも、近づこうともしない。
そのうちあろうことか、子牛の頭をかぷっ!(甘噛み程度ですが・・・) こらっ!! 危険なので、子牛は別の場所に移した。
自分が生んだからって、必ずしも母性が生まれるわけじゃないのか。「母性」がこんこんと湧く泉の源は、いったいどこなのだろう・・・。
そういえば前に子牛の身体を舐めたり、添い寝してくれたりしたダッシュ(今は亡きイングリッシュセター)は男の子だったけど、かいがいしく子牛の世話をしてくれた。
命にまつわることは、私にとってまだ未知のことばかりだ。
そしてその後、子牛に飲ませる初乳を搾りに行くと、まだ私のヤッケにくっついたままの羊膜を嗅いで、親牛は私を舐め始めた。・・・子牛を舐めるときみたいな声を発しながら。
「あのさ、ちょっと遅いんじゃないの・・・。」
いろいろあったが、母子ともに無事でよかった。
そして、子牛が生まれた今日からさかのぼること45年。当牧場主もこの世に生を受けた。前日からものすごい吹雪で、馬そりをもってしても診療所までおりてこられず、途中の民家に一泊させてもらって、翌日の朝方に生まれたという。
というわけで、本日は以前にもらったお食事券でお祝いしてきます。どちらもいい年齢なので、お魚を中心にいただいてきます。
牧場主どの、いつもお疲れ様です。HAPPY BIRTHDAY