2017/02/14(火)20:07
みえないところ
本日、牛の寝床のマットの新調工事を行った。
業者さん3人と、牛の移動をお願いしたヘルパーさん2人、それに牧場主と私。
午前9時からスタートして午後4時までで、ほぼ半分。
26頭分のマットを敷いた。
牛の寝床のマット、牛床マット(ぎゅうしょうマット)は、大きくて重い。
130×180センチ、ゴム製で、重さは大人の男性3人がかりでようやく持って移動するくらい。
それを敷き詰めていく。
牛の寝床にはストールといって、一頭ずつの仕切りがあるので、そこをよけるように工作し、
動かないようにビスで固定する。
かなり時間と労力がかかる仕事である。
何枚か敷いたところで、触ってみた。
細かな波状のギザギザがびっしり入っている。
そして、ところどころに、縦の二重線がはいる。
牛の蹄がひっかかって、滑らず、しっかり立てるようになっている。
上にのぼって歩いてみると、しとっと足に吸い付くような感触。
まだゴムも新しく、適度な硬さも厚みもあるため、緩衝材としてもかなりよい。
やっぱり、新しくしてよかったと実感した。
昨年の春、「今年の10月くらいに入れてほしい」と、業者さんに依頼してほぼ一年。
さかのぼって、牧場主が地元の組合にマットを入れたい旨を相談してから三年。
さらにさかのぼって、今の牛舎にきて、マットを新調したいと牧場主に提案してから十五年。
ようやくマットを新しくできた。
牛は毎日、乳を出す。もしくは、そのための準備をしている。
休みなく働いている。
せめて、健全な環境のもとで生かしてやらいで、なんとする。
マットを全頭分入れると、軽乗用車の新車を買えるような金額。
だが、毎日のもの、と思うと高くはない。
牛が気持ちよく、脚や体への負担が少なくなるなら、安いもんだ。
どこの世界もそうかもしれないけれど、うちの業界は、「見えるところ」に金をかけたがる。
家一軒建てられるほどもするトラクタ―。
高級国産車が買えるくらいの作業機。
それらは外で使うので、みせて歩ける。
もちろん、それらも使うし、大事だけどね。
敷いたマットはすぐに牛に踏まれ、糞尿がつき、シーツがわりのかんなくずに埋もれて見えなくなる。
だけどその上の牛たちの立ち姿は、脚や背筋がすっくとのびて、見違えるようだ。