スチュワデスが呆れたドクタートヒモイ公式げすとはうす ~世界は基本的に広い~んですけど・・

ベルリンからプラハまで

ベルリンを出て暫くして、車内販売が始まった。小銭は両替してくれないので、ビールに替えてしまおうと思い、値段を確認した。出てきたのはチェコのブドワイザー。
 ホップが無尽蔵に利いており、ここ最近こんなに美味いビールを飲んだことがない、と思わず膝をパチンとたたいてしまった。
 外はもう暗くなっていて景色が分からない。列車に乗っている全員が降りた。ドレスデン。私も、乗り換えなのではないかと思って降りてしまう。どうやらベルリンからプラハに行く人が誰もいなかっただけのようであった。エルベ河を渡り、車窓から塔がいくつも見える。
 いつになったらチェコに入るのかと思っていたら、道路と平行に走り始め、道路標識を見ると、ドイツ語にはない文字があった。
 そうするうちにどかどかと制服を着た三名の男女がパスポートのチェックを始めた。乗客は、一枚の証明書のようなものを見せていた。日本人がビザが不要になってまだ半年たっていないので、少し緊張した。旧共産圏らしい疑い深い態度でのぞまれるのではと思っていたが、その女性は長々とパスポートを眺め、鋭い目つきで「シュプレッヘン ドイチェ?」と尋ねてきたので「ナイン」と答えた。彼女は仕方ないわねという顔をして去って行った。ドイツ語が話せなければ、もういいってことなのか、と私はスタンプも押してくれなかったことに多少の不安を感じた。未成年らしき一群が乗車して来た。舌にピアスをした青年。クリーム色の髪の毛の女の子、白に限りなく近い髪の女の子など、南スラブ系を基本にいろいろ交じっている。ビールをおいしそうに飲み交わし、ワインを回し飲みし、煙草を吸っている。正月祝いが初々しい。若いっていいことだぜ、なんて台詞を思いつくようでは私も寂しい。
 
 プラハ駅。午後九時半。降りる乗客もまばらで、駅も少し寂しい。両替をして、先日コペンハーゲンのネットで予約したホテルの場所を、地図を見て探す。そして、暫く歩いてみるが、石畳ではキャリアを転がしにくい。駅前からして中世的世界が始まった。どうやら遠いことが判明、タクシーに乗る。紙を渡すと、頷き、バルタバ河を越え、川沿いに浮かぶ船がホテルになっているのを発見する。中心から随分離れてしまったようだ。
タクシーを降り、フロントへ行くと、目の吊り上ったババアが面倒そうに「部屋はいっぱいだ」といい宿帳を広げて見せた。どこか近くにホテルはないかと尋ねると、ドイツ語で道を説明してくれた。何故か分かった。ホテルを出て歩こうとすると乗ってきたタクシーのおじさんが声をかけてきてくれた。ちゃんと私が無事チェックインしたかどうか、暫く待機してくれていたのだ。これが大人の仕事で当たり前の仕事なのかも知れないが、私は大いに感謝した。今からではどこもホテルはいっぱいだというので、ホテル紹介のある駅に戻ることにする。おじさんは来た道の半額でいいよ、といってくれた。来た道は、しかし、既に群集が出始めていて、警察に止められた。おじさんは食い下がった「この日本人は、わざわざ日本から来てくれたのにホテルがないんだ。ちょっとぐらい通してくれよ」と。警官は我々の車だけを通してくれた。
 駅に戻ったが、インフォメーションは既に閉まり、パネルで選んで電話予約できるコーナーへ行って十数本電話してみるが、どこもいっぱいだった。どうやらホテルにありつけなかった旅行者が何十人もいるようだ。一様にホテルは無い、君も同じ問題か、という話しになり、大きな荷物を駅のコインロッカーに仕舞う。宿無し青年が彼の母が作ってくれたというクッキーを一切れ分けてくれ、よい正月をといって街に繰り出して行った。
正月まで、あと一時間。時間を追うごとに爆竹の間隔が狭まっていく。ビールを買い、私も駅を出る。


ベルリンに向かう列車の中、キースリチャ-ズそっくりの危ないドイツ男に捕まった。彼の席は、既にドイツ語を話せないスエーデン在住のクロアチア人であった。ドイツ男のコートはいろんな派手な布でめったくたに貼りまくられ、ピチピチの皮かなんか原型を留めぬパンツ、これまたピチピチの嬉しくなる程悪趣味の蛇皮ブーツ、目を抑えたくなるほど素敵で安っぽいアクセサリー。どこに置いてもこれ以上汚くなりようのナイ鞄。右ポケットからは無尽蔵に缶ビールが飛び出し、私に勧める。優しい奴で、クロアチア人に席を譲り、自分は床にごろ寝するいい奴だった。アル中なのだが、何故か私を仲間意識で話しかけてきた。三国同盟の名残であろうか??


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