スチュワデスが呆れたドクタートヒモイ公式げすとはうす ~世界は基本的に広い~んですけど・・

バリ島北部

大粒の雨が目立って仕様がない。勤め帰りに人々が雨に打たれながらも家路を急ぐ様子を眺めるのは悪くない。家路を急ぐことのない人生は悲しいか。ドラマも一過性。風景は捏ね繰り回し。
 
 私は、そこに居た。砂は共鳴し、花は祭と死体と女の傍にあった。波は高く、一筋縄で真似することさえできなかった。
 月に椰子は陳腐な程、お似合いで、太陽光線は裸体と悲しい程、調和していた。
 砂浜でさえ喧騒なバリに居た。体は静謐であった。私は、夜明け前に散歩し、外的なものと内的なものはけたたましく振動していた。視界はバネのように伸び縮みしていた。
 
 次に起きた時には、テラスのテーブルには冷え切ったバリコピとバナナが置かれていた。宿の主が寝坊の私を嫌な顔一つせずに何か言葉を発してくれた。2杯目のコーヒーはいつも前の屋台で啜っていた。屋台の裏の雑貨屋の娘は、私が来ると、いつも嬉しそうな笑顔を私に与えてくれた。その雑貨屋ではいつも誰かがたむろしていて、その誰かが、私をどこかへ連れていってくれた。
 
 概ね、1ヶ月の宴の後、バリ北部に向った。乗合タクシーは段々のライステラスを通り抜け、峠を越え、木で出来た橋を渡り、霧を抜けた。濃淡な緑を一貫して通り、窓を開けると深く深呼吸が出来た。北部の町シンガラジャに抜けた。再び海が現れた。

 穏やかな海。火山灰の為、砂は黒っぽく、海に注がれる小川と相性が良く感じた。
夕暮れになり、砂浜を歩く村人に宿を尋ね、小奇麗なロスメン(宿)を紹介してもらった。
 宿に落ちついてから、することはなくなり、バナナを中心とする森を、夜な夜なヘッドランプをつけて歩いていると、1件の家があり、オヤジが外で何かをしていた。親父は少し驚きながらも珍客を歓迎してくれた。同時に商売熱心でもあり、明日の早朝、是非沖合いの珊瑚礁を見にいかないかと誘われた。

 朝の水温は静かで張っていた。細いバンカで数百メートル沖合いに出た私は、潜水艇になり、目という司令部から幻想的な光景を観察した。悪党的に、圧倒的に美しい自然に触れると、世の中というのはあまりに単純で、理に適っていることが体感できる。そして些細なことが馬鹿馬鹿しくなる瞬間が訪れる。私はただ浮いているだけであった。自失状態で珊瑚礁群を眺めているだけであった。


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