ついつい飲みすぎたか心配だった朝。満員電車に揺られ、本を読んでいたが、やがて次第に気分が悪くなってきて、胃が逆流しちゃうよスタんばっているよ、という状態になりつつあった。本は、石狩バーガーがどうのこうのという記述で更に胸が悪くなった気もする。いやいや、石狩バーガーが悪いのではない、バンズの小麦粉を地元産100パーセントのものにせなあかんとか、まあそれはいいとして、駅に着くか、俺の脂汗がどこまで耐え切れるのか、孤独な戦いであった。自分との戦いであった。勝つか負けるかの引き分けや2位なしの真剣勝負である。勿論、敗れ去ることは、許されない。今まで、何度かそんな目にあったが、今日は、まあ、人生で50番目ぐらいの軽い感じの戦いで、勝利することは経験上、見えてはいたのであるが、油断大敵である。
恥を忍んでいうと、史上最悪だったのは、若き日の18歳、酒を飲んむのが許される年頃であった。もはや朝から死んでいた。電車を乗り換えると、もう俺と同様つまり若さ満点の不良学生や不良女子大生どもで満員となり、俺の胃も既に悲鳴を上げるどころか、急激に食道を逆流し始め、前兆の唾液が大量に口の中に溜まり始めた。朝、ベロベロで気分悪いのに、どうしても出ないと単位を落としてしまうので仕方なく出かけたのであるが、それに、何故か、朝からインスタントラーメンを食べてきてしまったのである。
扉が開き、不良セイガク共が吐き出されるより前に、一挙に皆を抑えて、俺は出た。車両から出たと同時に、口を押さえ、ゴミ箱に顔を突っ込み、時速120キロの勢いで体内摂取物を吐き出した。みじめ。後ろから、男女たちが、見るな見るな!と叫んでいるのが聞こえた。俺の鼻からはラーメンの端が出た。
俺も若かった。
暫くして、夜、ある駅で、駅員がゲロの掃除をしており、そこを通りがかった親子のお父さんのほうが子供に、「駅員さんはなあ、こういう大変な仕事もあるんやぞ」と子供に諭し、その横を通っていた私は、下を向いた。
飲みすぎて醜態さらすなよ、俺。