フェリーはバルチック海を越えて4時間、ヘルシンキからタリンに到着した。
港で両替のため1万円を出すと、引き出しから薄いプラステックに入った1万円の見本を見比べていた。
バルト三国のひとつ、独立して間もないエストニアの首都タリンを散歩する。新しくそして近代的でガランとした港を後に、尖塔を目指してゆっくり近づき始めた。線路を横切り、舗装状態の悪い道を、車の運転の乱暴さが、譲り合いのなさが、情けない程に若々しく感じる。
城内に入り、石畳に変わり、中世の街になる。パリやミラノといった西ヨーロッパの昔の建物を意識して残しているのとは違い、結果的にはいいことなのだが、ロシアに併合されて、貧乏になって、街は昔のまま残ってしまいました、という感じがある。あの暗黒時代の強制移動の産物なのか、そういう歴史だったのかは分からないが、いろんな民族が交じり合っていて、いろんな顔が見られる。そして混血のおかげで美人美男子が結構見受けられる。どうもフィンランドの人々は、そういえば割と、何か実務的な顔をしていて顔が平均的であったなと思う。同時に、アジアやアラブでもあるまいのに、東洋人が珍しいのか結構見られている空気がある。
それにしても、経済状況が芳しくないのだろうか、十年前に独立の先陣を果たした国ということを考えれば少し若々しさというか活気がない面を感じてしまう。何か元気そうなのは対岸七十キロのフィンランドを主とした観光客らしき人々だけだ。おそらく、物価の安い国に買いだしに来ているのではないか。そうはいってもライティングにはやはりヨーロッパらしく力が入っていて、教会や聖堂、そして奥の細々道は趣きがある。
丘の上からは、街が一望でき、そしてバルト海が広がっていた
ロシア正教会
この旅行で、初めてネットで検索した。当時は勿論ダイヤル式。調べる要点を目星つけて探すが、歩き方もないこの国のことを日本語で書いてあるページが数点しかなかった1990年台であった。
中世ハンザ同盟都市。小さな都市なので、大掛かりなガイドブックも確かに必要なく、インフォメーションで地図を貰えば事足りる。
旧監獄の横を通る。
タリンを去って、またフェリーでストックホルムに向かう。