逢坂剛(幻の翼)
2015年5月30日★★★★★テレビドラマ化されたMOZUシリーズの第1作を先月読んで、死んだはずの百舌こと新谷が再び登場するとある第2作が気になっていたので読んでみた。かつて、能登の断崖に消えた“百舌”は復讐を誓 い、北朝鮮の工作員として、日本に潜入した―。 稜徳会病院で起きた大量殺人事件は、明確な理由 もなく突然の捜査打ち切りが発表され、背後に政 治的な陰謀がからんでいるのではと、取り沙汰さ れていた。捜査に当った倉木尚武警視は、大杉良 太警部補、明星美希部長刑事などと共に闇に葬ら れようとする陰謀を執拗に追う。(裏表紙引用)前作の稜徳会病院事件後が描かれた作品で、物語は前作同様、主に倉木警視、大杉 警部補、明星部長刑事、津城警視正を中心にした息もつかせぬ波乱の展開で進んで行く。前作で死んだはずの新谷が生きていたという設定だが、それはさすがに前作で殺された双子の弟の新谷宏美ではなく、能登半島の岸壁から突き落とされ死んだと思われていた兄の新谷和彦が百舌として再登場する。弟が黒幕の森原法務大臣の陰謀で殺されたことを倉木の書いた告発原稿で知った百舌は復讐を誓うが、警察組織の腐敗に立ち向かう倉木らと百舌とのが絡みが面白い。また、ロボトミーや病名など時代を感じる描写が多数あるが、今読んでも古くささは全く感じることもなく、本当に面白い。新宿鮫と同様、ハードボイルド好きにはたまらない作品である。次作の「砕かれた鍵」を続いて読んでみたくなる。