大沢在昌(無間人形 新宿鮫4)
2015年12月29日★★★★大沢在昌をメジャーにした新宿鮫シリーズはamazonのレビュー評価でも全10作全てが4.0以上と驚異的な数字をたたき出しているが、最近特に遅読傾向にあり、第8作の風化水脈が出版されるまで一番長い長編のため、少し読むのに躊躇していた直木賞受賞作にもなった本作をついに読んでみた。新宿の若者たちの間で、舐めるだけで効く新型覚せい剤(アイスキャンディ)が流行りだした。シャブを激しく憎む新宿署刑事・鮫島は、執拗に密売ルートを追う。財閥・香川家の昇・進兄弟の野望、シャブの独占を狙う藤野組・角の策略、麻薬取締官の露骨な妨害、そして、恋人晶は昇の手に……。直木賞受賞作が必ずしも作家の代表作と言うわけでもないのですが、その作家が超一流になった証ではあるはずなので、面白くないはずはないと読んだら、なんだかなぁーとなる小説も過去には何冊かありましたが、これは正真正銘の傑作であると断言できます。過去の4作の中ではやはり2作目の毒猿がハラハラドキドキと一番面白かったと思うのですが、ち密さや小説の構成など色々な要素を盛り込みながら物語は進んで行き、警察と麻薬取締官との対立や晶の危機など息をもつかせぬ展開に派手なアクションもあって毒猿に負けないぐらい楽しめた一作でした。新宿鮫シリーズと聞くと最初から読まないと話が分からないと思いがちですが、第1作は最初に読んだ方が良いかなとは思うぐらいで、単独小説として読んでも問題なく読めるのでお薦めです。また本書を読むと麻薬の怖さも実感させられます。まだ完全読破まで6作も残しているが、楽しみながら順に読んできたいと思う。