東野圭吾(天使の耳)
2016年2月21日★★★★東野圭吾の短編集と言えば、物理学者である湯川准教授のガリレイシリーズが一番有名であるが、ガリレイシリーズを含めて何冊か読んでいるものの、この作家は短編集よりは絶対に長編の方が面白いと思っていた。先週、佐々木譲の巡査の休日を読んで、次は東野圭吾でも読んでみるかとAmazonの評価が高い中で探してみたところ4.5と極端に評価の高い本作が目についたので短編集と知りながら期待して読んでみた。深夜の交差点で衝突事故が発生。信号を無視したのはどちらの車か!? 死んだドライバーの妹が同乗していたが、少女は目が不自由だった。しかし、彼女は交通警察官も経験したことがないような驚くべく方法で兄の正当性を証明した。日常起こりうる交通事故がもたらす人々の運命の急転を活写した連作ミステリー。(裏表紙引用)読んでみての第一声は、評価通り面白い小説で、楽しませてもらった。★を5つにしようか迷ったが、迷ったときは、いつも4つにしているので、今回も4つとしたが、限りなく5つに近い面白さだった。本作は交通事故を題材にした6つの短編から構成されており、裏表紙に連作ミステリーとあるが、一つ一つの短編は完全に独立したもので、最後に何かが絡み合って答えが出るようなものでもない。交通事故は自分が気を付けていても起こりうるし、身近な出来事としても回りで起こるので、特殊なことでもなく、普段からよく見聞きするようなことばかりではあるが、それが東野圭吾にかかれば、こんなにも読み手を引き付ける小説に変わってしまうのかと、感心してしまった。内容的には、運転しながらのお喋りによる瞬間的な信号の見落としでの事故、急いでいて道路を横切ったための事故、車から空き缶を投げ捨てたための事故、路上駐車して道幅が狭くなったための事故、後方車から煽られたための焦りによる事故、米国等の右側通行を体が覚えていてとっさに反対車線へ侵入してしまった事故、これら本当にありふれた行為が自分ばかりか他人の人生をも大きく狂わせてしまうという、背筋が寒くなるような恐ろしい事件に発展するという内容である。普段から自動車を運転する自分としても最後の作品を読んだ後は、気を付けて運転しなければと戒めのような感覚をあたえてくれた小説で、いずれの短編も一味も二味も味付けされて、結末を知ると、うーんと唸らさせられる超お薦めの短篇集である。著者の初期作品であるが、普通短編集といえば、中には一つや二つは駄作が混じっているものだか、全ての短編が面白く、読んでない人は是非一読をお薦めします。