横山秀夫(臨場)
2016年7月25日★★★★警察ものの短編小説を書かせたら右に出るものはいないと言われる横山秀夫の小説でドラマ化や映画化もされた検視官を主人公にした代表作の本作「臨場」を年始依頼ではあるが期待して読んでみた。臨場―警察組織では、事件現場に臨み、初動捜査に当たることをいう。捜査一課調査官・倉石義男は死者からのメッセージを的確に掴み取る。誰もが自殺や病死と疑わない案件を殺人と見破り、また、殺人の見立てを「事件性なし」 と覆してきた。人呼んで『終身検死官』―。組織に与せず、 己の道を貫く男の生き様を、スト イックに描いた傑作警察小説集。全八編。 (BOOKデータベースより)本作の主人公である終身検視官の異名をとる倉石義男。臨場現場からの様々なメッセージを読み取り、真相を見通す眼力は伝説化し、校長などと呼ばれて信奉者も多い。そんな検視官とし ての活躍を8つの物語で綴った短編集である。 それぞれの短編は中心人物が別にいて、倉石がその中心人物をあくまでも他者の視点から描かれている。倉石の言動や挙動、それらから衝撃を受けたり感情を揺さぶられる中心人物の姿を通して、間接的に描かれるストーリーは読み応え十分の面白さである。倉石の身体には異変が起こっていることを知り、彼の検視官としての仕事の終わりに近づく最終章がまた良い終わり方で締めくくってくれてます。伝説の人物は、 本当に伝説の人になってしまったのか?次作がでないのが残念だ。著者の未読の短編集はまだ数冊あるので時間をかけて順に読んでいきたい