池井戸潤(陸王)
2016年10月29日★★★★★今年3月にMISTを読んで池井戸潤の作品を全部で読みきってしまったので、あとは読売新聞に連載していた花咲舞が黙ってないが唯一の楽しみだったのですが、それも先日連載終了となり、ガックリしていたところ、下町ロケットと同様に弱小企業が大企業に立ち向かい最後は社員みんなの思いを実現させるという、サクセスストーリーの本作の単行本が発売されている事を知り、超期待して読んでみた。埼玉県行田市にある「こはぜ屋」は、百年の歴史を有する老舗足袋業者だ。といっても、その実態は従業員二十名の零細企業で、業績はジリ貧。社長の宮沢は、銀行から融資を引き出すのにも 苦労する日々を送っていた。そんなある日、ふとしたことから新たな事業計画を思いつく。長年培ってきた足袋業者のノウハウを生かしたランニングシューズを開発してはどうか? 社内にプロジェクトチームを立ち上げ、開発に着手する宮沢。しかしその前には様々な障壁が立ちはだかる。資金難、素材探し、困難を極めるソール(靴底)開発。 大手シューズメーカーの妨害。チームワーク、ものづくりへの情熱、そして仲間との熱い結びつきで難局に立ち向かっていく零細企業・こはぜ屋。はたして、彼らに未来はあるのか?勝利を信じろ。足袋作り百年の老舗が、ランニングシューズに挑む。(BOOKデータベースより)まず読み終えての感想は面白かったの一言です。本作は弱小メーカーがランニングシューズ作りに挑戦し、幾多の困難を乗り越え、 夢をかなえるという足袋製造会社のサクセスストーリーを時間軸を長く使いゆっくり描いた会社物語である。 半沢直樹シリーズや下町ロケット、ルーズベルトゲームのような敵になる大企業(今回はアトランティス)の執拗な嫌がらせはあるものの、読んでいて腹が立つことや胃が痛くなるほど気分が悪くなることはなかったし、切迫感がひしひしと伝わってくる感じは受けなかったのだが、それでもストーリーに引き込まれてページをめくる手が止まらなくなったのは同じでした。特にこはぜ屋の夢が凝縮された陸王を履いた茂木が走る ロードレースのシーンが圧巻で息詰まるレース展開、気迫、緊張感に人生をかけたアスリートの姿に感動を受けたのは私だけではないでしょう。こはぜ屋のメーンバンクであった銀行が最後にこはぜ屋を支援しなかったことに後悔するところなど池井戸潤のお決まりの締めもあり読後感は言うまでもなく最高で読み終えられました。次の池井戸潤の作品を読める日が来るのを待ちたいと思います。