桐野夏生(猿の見る夢)
2016年11月27日★★★★週刊現代で連載中に女性から見て最低の男を描いた作品として、人気連載されていた本作が単行本化されているのは知っていたが、桐野夏生の作風すら忘れるぐらい前に読んだのがいったいいつ頃だったのかと調べてみると、江戸川乱歩賞受賞を受賞した桐野夏生のデビュー作である「顔に降りかかる雨」を3年以上前に読んでいたことがわかり、じゃぁ久しぶりに読んでみるかと言うことで手に取ってみた。薄井正明、59歳。元大手銀行勤務で、出向先ではプチ・エリート生活を謳歌している。近く都内に二世帯住宅を建築予定で、十年来の愛人・美優樹との関係も良好。一方、最近は会長秘書の朝川真奈のことが気になって仕方ない。目下の悩みは社内での生き残りだが、そんな時、会長から社長のセクハラ問題を相談される。どちらにつくか、ここが人生の分かれ道―。帰宅した薄井を待っていたのは、妻が呼び寄せたという謎の占い師・長峰。この女が指し示すのは栄達の道か、それとも破滅の一歩か…(BOOKデータベースより)うーん。なんて嫌な男なんだろうか思ったのが、読んでいての感想です。主人公は自分勝手、優柔不断、冷酷で芯のない、女と金の欲望しか頭にないようなそんな男です。また、家庭に居場所がないと言い訳に愛人を作り、愛人とうまくいかない時はまた他の恋人を探し、それがだめになった時は「やっぱり家が一番」といって転がるような男。本当に最低です。なのにこの本はやめられませんでした。なぜと問われると答えにくいのですが、なんとなく共感できるとこがあり、なんとなくこんな男もありかなって思うところもあり、こんな男の最後を見届けたいという心境からではなかったかと思う。そして何よりも謎の夢を見ることにより、未来を占うという、占い師が登場するので、この後どうなるんだろうかと妙に惹かれたところがあったからではないかと感じる。ただ最後のエンディングは個人的にはいまいちであの占い師はどうなったのかと思った読者は多かったのではないだろうか。まぁ全体的に読みやすかったし、久しぶりの作品だったが楽しめたので良しとすることにします。最近はミステリー小説は殆ど書かなくなった著者ですが、直木賞受賞作など沢山の文学賞を受賞されているので、何冊か読んでみたいと思う。