荻原浩(さよならバースディ)
2023年9月30日★★★9月に入って東野圭吾の新作の「魔女と過ごした7日間」を読んだあと、次は最近読んでいない作家の小説を読もうと決めていたのだが、いざ読むとなると色々有りすぎて決まらずに日が経ってしまい、そろそろ何か読まないとと未読の本棚を眺めていると、ミステリー小説の「噂」、涙なしでは語れない「明日の記憶」、ユーモアたっぷりの痛快小説「誘拐ラプソディー」、サラリーマンの奮闘記描いた「神様からのひと言 」、直木賞受賞作の「海の見える理髪店」など何を書かせても感動を与えてくれる荻原浩の小説を約6年ぶりに読んでみた。霊長類研究センター。猿のバースディに言語習得実験を行っている。プロジェクトの創始者安達助教授は一年前に自殺したが、助手の田中真と大学院生の由紀が研究を継いだ。実験は着実に成果をあげてきた。だが、真が由紀にプロポーズをした夜、彼女は窓から身を投げる。真は、目撃したバースディから、真相を聞き出そうと…。愛を失う哀しみと、学会の不条理に翻弄される研究者を描く、長編ミステリー。(BOOKデータベースより)荻原浩さんの過去に読んだミステリーは評価が高い「噂」のみだが、この作品は、少し暗い話だったはず、本作は感情を揺さぶられた作品だった。内容はというと、東京霊長類研究センターに勤務する研究者の田中真が主人公。彼の恋人で大学院生の研究スタッフである藤本由紀が窓から飛び降りて死んでしまう。死因は自殺?それとも他殺?事件当時に由紀と一緒に居たのが、人間と会話が出来るサルのバースディだけだった。唯一の目撃者がサルという設定だが、想像以上の言語能力を示すバースディは、本作の重要な役割を担っていく…。大学という組織の裏側など徐々に真相が明らかになっていくが、哀しい結末は是非読んで感じて欲しい。最後に言えることは真と由紀とバースディは人間以上の絆で結ばれていたと言うことだ。