東野圭吾(ブラック・ショーマンと覚醒する女たち)
2024年6月4日★★★★ちょっと停滞していた読書だが、シリーズ化したら面白いと思った元マジシャンで今はバーのマスターを主人公にした連作短編小説が、単行本で年始に出版されているのを知り、地元の図書館に予約していたのだが、やっと自分に回って来たと連絡が入ったので先月末から読みかけていた本を置いて先に読んでみることにした。この人は人生をリノベーションするつもりだ――亡き夫から莫大な遺産を相続した女性の前に絶縁したはずの兄が現れ、「あんたは偽者だ」といいだす。女性は一笑に付すが、一部始終を聞いていた元マジシャンのマスターは驚くべき謎解きを披露する。果たして嘘をついているのはどちらなのか――。謎に包まれたバー『トラップハンド』のマスターと、彼の華麗なる魔術によって変貌を遂げていく女性たちの物語。その”マジック”は謎解きのための華麗な武器。全貌を知る時、彼女たちは何を思うか。そして、どう生きていくのか。(Amazon内容紹介より)ブラック・ショーマンこと武史はバー「TRAPHAND」のマスターであるが、序章を店のタイトルして、各編のタイトルの最後に「女」がつく作品が5編続くが、中でも「リノベの女」と「続・リノベの女」が傑作だ。「リノベの女」は、不動産会社のリフォーム部門に勤務する真世だが、ある顧客の女性の前に何年も会っていない兄が現れたのだが、それはあまりにも露骨な目的だっだ。武史がうまく追い払った後に明かされる真実とは…。「続・リノベの女」は、リノベしたはずの真世の顧客の女性だったが、困ったことが起こり、再び武史が首を突っ込む展開に…。自分を捨てた彼女だったが、実の親の変わり果てた姿をみたら、情までは捨てられないのは当たり前。これでよかったと私は思いたい。タイトルの通り、女たちを覚醒させるブラック・ショーマンの武史。何をやらせても超一流だが、嫌みの無い魅力的なキャラクターである。また、次作で再会できると信じてます。