読書とジャンプ

2006/12/21(木)22:20

「ねこのばば」畠中恵

読書感想(284)

やっぱり畠中作品は時代ものが一押しです♪ お江戸長崎屋の離れでは、若だんな一太郎が昼ごはん。 寝込んでばかりのぼっちゃんが、えっ、今日はお代わり食べるって?  すべてが絶好調の長崎屋に来たのは福の神か、それとも…(「茶巾たまご」)、 世の中には取り返せないものがある(「ねこのばば」)、コワモテ佐助の真実の心(「産土」)ほか全五篇。若だんなと妖怪たちの不思議な人情推理帖。 シリーズ第三弾の、始まり始まり 重いテーマを扱いつつも、この、時間がゆっくりゆっくり流れてるようなまったり感。やっぱり畠中さんの書く小説は、現代ものより時代物の方が合ってると思います。 時間に追われる世知辛い「今」よりも、はるか時を越えて、人と妖(あやかし)の境界線が朧だった「今は昔」を描くほうが作風に似合ってるんじゃないでしょうか。 ……………という考察もどきはさておいてですね。 鳴家がかわいすぎるっ! ウチも時々夜中にぎしぎし音がするんですが、鳴家がいると思うだけで楽しいです。1匹でいいから、天井から落ちてきてくれないかしらん。そしたらかばんにしのばせて会社に行くのに(笑) 以下、短編ごとの感想です。 「茶巾たまご」 相変わらず、「お人よし」をこねて伸ばして叩いて焼き上げたような若旦那。 私も一度でいいからお金に苦労しない生活を送ってみたいです。 そして、金次さんはレギュラー化してほしいんですが、無理なんでしょうか。1回きりのゲストにしては惜しいキャラでした。 このシリーズ、装丁もあいまってほのぼの~なイメージがあるわりに、殺人はしっかりおきます。「本当に怖いものは何か」がテーマ。う~む、こうゆう事件が起きるのも、さすが、生き馬の目を抜くお江戸というべきか。 ところで、ちょっと気になったんですが、金次さんの前に普通に妖達が現れてるのに違和感が。 正体も分かってなかった相手に、鳴家達ってばそんなあっさり姿を見せていいもんなんでしょうか?それとも、私が何か読み逃してる? 「花かんざし」 事件は全てきれいに解決するとは限らない。やりきれない思いを残す作品ですが、お雛さんと正三郎さんの存在がほのぼの♪ 重くどよーんとしたテーマに一服の清涼剤でした。 「ねこのばば」 とりあえず、綿菓子が食べたくなりました。あれ、口の周りがべたべたするし、全部食べきれたためしがないのに、お祭りでみかけるといつも買ってしまいます。 と、そんなことはどうでもよく、寛朝さんがいいキャラでした。 このシリーズ、キャラクター小説の面も十分持ち合わせてまして、出てくるキャラが人間、妖怪、神様ひっくるめて、みんな魅力的です。特に鳴家が(笑)←しつこい。 まったく無関係に思える事件が全て繋がる様は、ありがちではあるものの、これぞミステリの醍醐味!と思わず膝を打ってしまいました。さすが表題作になるだけあります。 「産土」 ひねくれた(←すみません)ミステリ読みならすぐに気付いただろう叙述トリック(←反転)ちなみに、ワタクシ、ひねくれてはおりません(笑) 犬神について語られます。佐助がかなり人間臭くてちょっと意外でした。 それはそれとしても、犬神が対峙することになる魔物、怖すぎです。 雷を起こしたり嵐を読んだりと派手な力を振るう魔物は分かりやすく怖いですが、人の心の隙間に漬け込む魔物は、じわじわと怖い。 「たまやたまや」 お春ちゃんの縁談なんかどうでもよく、仁吉と佐助が若旦那の失踪にどれだけ肝をつぶしたか、若旦那がどれだけ怒られる羽目になるのか、そっちばかり気になってしまいました(笑) お春ちゃん、ごめんなさいm(_ _)m それにしても、若旦那もいつかは誰かと一緒になるんでしょうねえ…… 若旦那の恋愛ものもちょっと読んでみたいです。でも、二人の手代や鳴家や屏風のぞきやらその他の妖達に隠れてってのは絶対無理ですね。周りに全部バレバレって、それはそれで不憫かも(笑) キャラクターの設定を作りこみすぎて、ストーリーに活かしきれてないというのが所謂キャラクター小説にはありがちな欠点ですが、正直、このシリーズの1作目はその欠点を強く意識させられたものです。 それが、シリーズ3作目ともなると、そういった欠点も随分と解消されたようで、事件に対するあやかしの関与もわざとらしさを感じることもなく(特に表題作の「ねこのばば」)、素直に面白かったです。 次回作「おまけのこ」も読むのが楽しみになりました♪ その他感想を読ませていただいた素敵サイトさま →時代伝奇夢中道 主水血笑録 milk pan,milk crown  風と雲の郷(読書と時折の旅と・・) ミステリ読みの戯言 ミステリの部屋 スロウ スロウ ゴー スロウ 栄枯盛衰・前途洋洋  

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