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テーマ:ミステリはお好き?(1425)
カテゴリ:読書感想
ミステリではありますが、ハードボイルド要素がかなり加味された1冊でした。
窃盗罪での服役を終え出所した真壁修一(34)が真っ先に足を向けたのは警察署だった。二年前、自らが捕まった事件の謎を解くために。あの日忍び込んだ家の女は夫を焼き殺そうとしていた―。 生きている人間を焼き殺す。それは真壁の中で双子の弟・啓二の命を奪った事件と重なった。十五年前、空き巣を重ねた啓二を道連れに母が自宅に火を放った。法曹界を目指していた真壁の人生は…。一人の女性をめぐり業火に消えた双子の弟。残された兄。 三つの魂が絡み合う哀切のハード・サスペンス。 文庫本の帯のコピー「かつてこれどほ切ない犯罪小説があっただろうか。」 ……それは、普通にあるんじゃないの?と身も蓋もないことを思ってしまいました(笑) とりあえず、思いつくのは「青の炎」とか。 連作短編です。作品を追うごとに、兄と弟の関係もすこしずつ揺らいできます。 短編ごとのミステリ部分も楽しいですが、修一と啓二のイレギュラーな状態でい続けることの不自然さが、読み進むうちに大きくなり、この2人は最後にどこにたどり着くんだろうという興味で一気読みしてしまいました。 出てくる犯罪者たち(この場合は職業がということではなく、その人の本質がということで警察官も含みます)も、それぞれの特技やら性格やらが特徴的で興味深い。 泥棒刑事は「ドロケイ」っていうのはともかく、忍び込みを指す「ノビ」に始まってハコ師やら波引きやらバンカハズシやらっていう知らない隠語が山のように出てくるのも楽しかったです。 概ね高評価ではあるものの、若干気に食わないことが。 一つは、兄の修一が法曹界を目指していたって割には、その設定がたいして生かされてなかったこと。折角の設定が勿体無いように感じました。 で、それ以上に気になったのが、ハードボイルドは好きでそこそこ読むんですが、なんでこうも都合のいい女性しか出てこないんでしょう? ヒロインの久子は、修一をただ待つだけ。修一のとる行動に応じて動くだけ。 修一が犯罪を重ねるが故にその身にもたらされる理不尽な仕打ちに、少しは抵抗してみせたっていいのに、なされるがまま。 修一が戻ろうと思えば、いつでもその先に待ち構えている。 修一には、いつでも帰れる場所がある。 う~ん………男性側にしてみれば願ったり叶ったりな女性なんでしょうが、こうも受身でしかない女性ってのは好きになれない。 よっぽど 友人の玲子の方が人間味溢れてて好感がもてます。とはいえ、行動原理が恋愛至上主義なのはやっぱり気に食わないけれど。 全部がそうだとは言わないものの、ハードボイルド小説に出てくる女性ってのはどうしてこうも恋愛至上主義者ばかりなのか。世の中、他にも大事なことはあるんじゃないか?と野暮なことを言いたくなります。 作家さんの理想が女性の登場人物に投影されてるのかもしれませんが、某漫画家さん(男性)の言葉を借りるなら、「女なんてねェ みんな こえだめから生まれてきてんのよ 銀蠅の飛び交う中闘ってんのよ」。 これ、ものすごく至言だと思います。そんな心意気を持った女性が出てくると、ハードボイルド小説ももっと面白くなるのに。 警察小説ばかり書いてる作家というイメージを打ち砕く意表をついた主人公だし、双子でありながらすれ違った時間に存在し続ける兄弟間の葛藤も普通に面白い。 これで女性がもっと魅力的だと言うことなしなんですが、その辺がちょっと残念でした。 感想を読ませていただいた素敵サイト様 →まじょ。のミステリブロ愚 higeruの大活字読書録 日だまりで読書 メモ KEN太’s 日記 KITORA's Blog 日記/源氏の宝物 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
[読書感想] カテゴリの最新記事
日本の作家さんのミステリーはほとんど読まないので、何を選んだら良いのかも分からない私には嬉しい情報です。
横山秀夫さんのはいくつか読んでいますが、これは知りませんでした。 でもとりあえずかずはさんがあげていた「青の炎」にとっても魅力を感じたので、そちらから読もうかと・・・。 情報ありがとうございました。 かずはさんの小説における女性像の意見には大賛成!!。 毎回、「いるか、そんな女。」(いや、どっかにはいるかもですが)とか思いながら読んでいるもので。(笑 (2007年03月10日 10時24分19秒)
こんにちは!
男性主役作品に登場する女性って、脇役に甘んじる作品って多い気がします。 登場させるなら、現実味があって、登場した意味というものを持たせて欲しいなぁと思ってしまいます~。多いに賛同します! いや、この作品は読んでないのですが、今クライマーズハイを読んでるので、釣られてしまいましたっ!! >某漫画家さん(男性)の言葉を借りるなら、「女なんてねェ みんな こえだめから生まれてきてんのよ 銀蠅の飛び交う中闘ってんのよ このセリフが感想に入れられてるだけで嬉しくなってしまいました☆★☆ (2007年03月10日 13時45分43秒)
横山さんのは『半落ち』しか読んだ事ないです。
あれには女性キャラは出てこなかったからなぁ。私も男性作家の造形するありえない女性キャラ苦手です。作品的にすっごく面白くてもそういう女が出てくるだけで評価は急降下ですね。 逆に男性からみれば、女性の理想の男性像とか「こんな男が一番性質が悪いで!」てなもんなんでしょうね。 (2007年03月10日 14時18分48秒)
☆mamさん、こんばんは♪
>でもとりあえずかずはさんがあげていた「青の炎」にとっても魅力を感じたので、そちらから読もうかと・・・。 あれは、反則的に切ないですから、覚悟を決めて読んでください(笑) 他の作品も楽しいので、青の炎が気に入ったら是非是非どうぞ♪ >かずはさんの小説における女性像の意見には大賛成!!。 私も、「いやしねーよ、そんな都合のいい飯炊き女!(←ひどい)」と思います、ホントに。 まあ、ヒロインがダダを捏ねだしたら、話が終わらなくなるってのもあるんでしょうけど(笑) 少なくとも、私だったらこいつには三行半だ!……と「影踏み」を読みながら思ったってのは内緒ですw (2007年03月11日 18時24分38秒)
せりざわはなさん、こんばんは\(^▽^)/
ストーリー自体は楽しいのに、女性描写だけおざなりっていうかステレオタイプだとがっかりするんですが、私と同じような考えの方が結構いらっしゃるようで、ちょっと嬉しい今日この頃♪ 「クライマーズ・ハイ」をお読みとのことで、あれはいろいろ考えさせられた作品でした。 ちょっと無理やり感もあれど、それもきっと作戦のうちなんだろな……みたいな。 >このセリフが感想に入れられてるだけで嬉しくなってしまいました☆★☆ この台詞に気付いていただけただけで、かなり嬉しいです!☆(≧▽≦)☆! (2007年03月11日 18時28分40秒)
なかさん☆さん、こんばんは♪
私も男性作家の造形するありえない女性キャラ苦手です。作品的にすっごく面白くてもそういう女が出てくるだけで評価は急降下ですね。 そうそう、読んでると、アイタタタタタ……となるので残念なことこの上ないです。 >逆に男性からみれば、女性の理想の男性像とか「こんな男が一番性質が悪いで!」てなもんなんでしょうね。 ボーイズラブなんかは特に! という冗談はともかく、女性作家さんが男性二人組みを主人公におくと、時々妙にホモっぽくなるのも苦手です。ああゆう風に男の人に夢は見れない……(笑) (2007年03月11日 18時39分22秒)
何度かTBさせていただき、お世話になっておりましたまじょ。と申します。
確かにヒロインの久子は、男にとって都合の良い女に描かれておりますよね!普通あんな風に袖にされたら(?)自転車の件で通報を受けたときに裏切ってしまいそうなものなのに。 良い女…とは云い難い、幸の薄すぎる女性だと思いました。 本作にもTBさせていただいたのですが、謝って違う作品のTBまでしてしまいましたので、削除していただけると幸いです。す、すみません。 (2007年03月11日 23時17分23秒)
かずはさん、こんにちはっ♪
『青の炎』!これは切なかったですねぇ。 もう切なくて、主人公が哀しくて、泣きました。 で、『影踏み』…どこかに女性が出てきたっけ?というくらい、女の人の印象がありません(汗)読み直してみるかなぁ。。。(*^_^*) (2007年03月12日 08時28分29秒)
まじょ。さん、こちらこそお世話になってます!☆(≧▽≦)☆!
>良い女…とは云い難い、幸の薄すぎる女性だと思いました。 もうちょっと自分を主張してみてもいいのでは? っていうかもっとごねろ!ケンカしろ!ぶん殴れ!と読み進めるうちにどんどん過激なことを思ってしまいました(笑) それはともかく、兄弟の描写にばかりページが割かれてたのがちょっと残念な横山作品でした。 >本作にもTBさせていただいたのですが、謝って違う作品のTBまでしてしまいましたので、削除していただけると幸いです。す、すみません。 合点です! 私もうっかりやっちゃうので、お気になさらず\(^▽^)/ (2007年03月14日 06時10分48秒)
そらさん、こんにちは\(^▽^)/
>『青の炎』!これは切なかったですねぇ。 いやもう、痛くて痛くて、読むの止めたいけれど止められない。 読むんじゃなかった!でも読んでよかった! と混乱しながら読んだ覚えがあります。 >で、『影踏み』…どこかに女性が出てきたっけ? そう。でも、解説じゃ、「三つの魂が絡み合う哀切のハード・サスペンス。」となってるんですよね。 三つ?二つの間違いじゃ? ……と素で思ったのは内緒です(笑) (2007年03月14日 06時14分17秒)
『影踏み』ではないのですが、TBさせて頂きました。
かずはさんとはたぶん“切ない”の感じる場所が違っているのではないかなと思いましたが、私なりに確かに“切なく”て“哀しい”小説でした。 ご紹介、ありがとうございました。 これを機に、貴志祐介さんの小説をあれこれ読んでみようかと思っています。 (2007年04月08日 22時04分30秒)
☆mamさん、TBありがとうございましたw
私もTB返したいとこなんですけど、リンクはっていただいてたので、遠慮させていただきましたm(_ _)m 貴志さんは好きな作家さんなので、確か初版で勝手すぐ読んだものの、1回も読み返してないので内容もあやふやにしか覚えてないんですが、切ないと同時に痛い小説だったことだけは強く印象に残ってます。 >これを機に、貴志祐介さんの小説をあれこれ読んでみようかと思っています。 かなりホラー色の強い作家さんですけど、是非♪ (2007年04月09日 18時08分05秒) |