【お祝い】<三> ※要注意
※銀魂二次創作SS【お祝い】<二>の続きです。その瞬間に妙はすっと立ち上がり、銀時の後頭部を思いっきり足で蹴り飛ばした。銀時の身体は浮かび上がって橋の端まで飛んでいった。其処に並んで立っていた神楽と新八は、足元に転がる銀時を軽蔑の眼差しで見下ろしていた。更にその後ろには、万事屋階下の居酒屋の三人も加わっていた。頭を抱えながら痛そうに地面でうずくまる銀時の姿に指の関節を大音量で鳴らしながらゆっくりと近づいてくる妙の顔には真っ黒な影が落ち、さながら魔王とでも言うべきその貫禄で銀時の胸ぐらを片手で掴み軽々と持ち上げた。「銀さん、ちょっと?私にここまで言わせておいて今更どういうつもり?」「いやほら、何か照れる…でも十分だろ!いいだろもうコレで!」「一体誰が好き好んでこんな恥ずかしい真似してあげたと思ってるの?」一度口答えをする度に平手でなく拳で銀時に制裁を加える妙の姿に新八は何処か安堵感を覚えつつも、元来の性分故に口を出さずにはいられなかった。「いや、姉上ノリノリだったじゃないですか。超楽しそうだったじゃないですか」「黙りなさい新ちゃん」実の弟の言葉を妙はピシャリと一蹴した。新八の隣では神楽が、吊るし上げられた銀時を救助に入るでなく最早憐れみと言ったほうが適切かもしれない侮蔑と諦めの表情で其処にいた。「銀ちゃん…演技でも最後までいけねーとか…マジ見損なったアル」「最低ですね銀時様。山崎様の方がよっぽど男前でいらっしゃいました」「ほんっと、最低だよお前。辰五郎を見習いな」「私ヲ騙シタ詐欺師野郎ノガマダマシデスネ」一人の女から肉体的暴行を受けながら同時に四人の女から精神的ダメ出しをされるという稀有な状況下で反旗を翻す事が出来るのは流石だと褒めてやるべきかもしれない。伊達に遊び人ではなかったという事なのだろうか。「じゃぁお前らがやってみろよ!抱きしめてるのに胸の感触とか、そういうサービス的なアレが何も無いこのゴリラ女相手に俺はよく頑張っ…」「てめ今何つった?」しかしそんな遊び人が培ったノウハウも魔王の前では無力だったようだ。一方的且つ理にかなった暴力の応酬が止まらない。最早人間というより赤袋と言った方が上手く伝わるのでは無いか。そんな銀時の顔面に更に重い拳を一つ加えて、妙は言う。「さーぁ銀さん。私の何処が好き?一つ一つ言っていってくれないかしら…」「あ、えっと…すいませんほんと、つい口がすべっ…」己の失言を謝ろうとした銀時に、妙の拳がまた一つ振りぬかれた。「嫌だわ銀さんてば。私は謝って欲しいんじゃなくてよ」「あ、うん、そうだよね~…分かってるよ☆えっと、すっごく美人だよね!」また新たな拳の感触が生まれた。「ちょ、俺今褒めたよな!?何で殴られてん…」更にもう一発。「それから?」「えっとそれから、す、すっごく優しいよね!もう菩薩だよね菩薩!」ダメ押しに一発。「それから?」「あの…一つ聞いてもいいですかお妙さん…」「なぁに?」笑顔をそのまま顔面に張付けたような。まるで能面のように固まって動かないその面前で銀時は最早何処が痛いのかよく分からなくなった顔の中心から流れ出る血を拭った。「…コレ、褒めてもけなしてもダメなんですか?」「いいえ、まさか♪」「あ、そ、そうだよね~でもそうしたらオカしいなー、何で僕さっきから殴られてるのかな…」眉一つ動かさない妙に、銀時の口調は乱されてばかりだった。銀時は経験上、妙が笑っている時はまだとどめを刺す前の段階だということを重々承知していた。それはつまり、これ以上の暴力が待ち受けているという事を意味する。「私に殴ってもらえるなんて、最高のご褒美でしょ」「ちなみにけなした場合はどうなるアルか、姉御」銀時の真っ赤に腫上がった顔にかろうじて残っている正常な皮膚が青ざめていく何ともグロテスクなその光景に、ふと神楽が口を挟む。他の者たちは皆端の脇の長椅子に腰掛けて、のん気にその光景を眺めていた。「フフッ、銀さんが私をけなすなんてあり得ないけど・・そうね、『北斗の拳』の敵キャラよりも悲惨な状態になるのは確実ね♪」愛らしい笑顔でそう返事をした妙に、銀時はいよいよ命の危険を感じもがくように背後を振り返り、その先に見えた新八の後姿に助けを請う。この場において自分以外の唯一の男、新八。女の園にあって助けてくれる可能性のある唯一の存在であった。「おい新八、助けて…ちょっと…おい、なぁって…」しかし新八はその悲痛な声に無情にも無反応を決め込んでいる。比較的姿勢の良いその後姿は、隣に座るお登勢と何やら話をしていた。「テメーシカトしてんじゃねぇぞォ!新八の分際で!いやゴメン今の嘘!つか…ほんと、助けて…ゴメンて!俺が悪かったって!!」新八は実の姉の怒りを前に介入を拒むというよりは新八自身何やら不満があるように見えた。銀時にはそれが何なのかさっぱりだったが、新八が助けてくれないという事だけは分かった。そして再開する妙の攻撃を後ろ目に、神楽はつついと新八の脇に近づき、その隣に腰を下ろす。「ごめんねアル」神楽に悪びれる様子は余り無いようだったが、少なくとも新八と仲直りしたいという意思が感じられた。そもそも喧嘩していた訳では無いのだが、余り上機嫌で無かったことはこの少々阿呆なお嬢さんにも伝わったようだと、新八は思った。「いいよもう、慣れてるし」我ながらそれは如何なものかと新八は思ったが。度を越えた暴力にも存在意義の扱いの軽さにも、いつの間にか愛しさが芽生えていたのかもしれない。だがしかし断じてマゾヒストでは無い。そこだけは勘違いしてもらっては困る。「怒ってないアルか?」そんな決意を頭の中で新八が固めていると神楽が少しほっとした様な様子でそう言ったので「こんな事でいちいち怒ってたら、君らと一緒にいられないよ」と新八は微笑んだ。「そんな事よりも、かずはさんに何て言おうか」やがて新八は本来の目的を思い出す。銀時と妙の二人が最終的にバイオレンスな展開になった事はもう平謝りするしか無いとして、せめて何か言葉だけでも伝えねばなるまい。「普通に『おめでとう』でいいんじゃないアルか?」「普通過ギジャナイデスカ?」「飾らない言葉が結局1番伝わるんだよ」会話に参加してきたお登勢とキャサリンにタマは己の脳内で閲覧したブログ記事から算出した統計を元に、意見を言う。「私は銀時様に何か言って頂くのが最善かと思われます。言葉の内容は二の次かと。」「…悔シイデスネ。アノ馬鹿ニ負ケルナンテ」「しょうがないねぇ。あんなろくでなしでも一応主人公だ」皆何とも附に落ちない様子ではあったが、妙に説得力のあるタマの案に何やかんやで落ち着いた。早速銀時を連れて来ようかとも考えたがやはり何処か釈然としない銀時に対する不快感は拭えず、皆暗黙のうちにその場から立ち上がろうとすらしなかった。「じゃぁもう少しボコられてるところ眺めてからにするアル」「そうしよっか」神楽がそう言い、新八が意地悪く笑いながら相槌を打った。「…さん、銀さん。起きてくださいよ」銀時はうっすらと目を開けた。新八の顔とその奥にやけに神々しい光が見えた。自分の部屋はこんなに明るかったろうか。そしていつの間に寝てしまっていたのか。寝る前の記憶が全く無い。この感覚は二日酔いとはまた別の感覚である。一体どういう事なのだろうかと考え始めると頭が猛烈に痛み、いや、頭というか頭部全体と言うべきか、寧ろ全身と言うべきか。何か自分は激しい戦いを終えた後だったかなと、銀時はぼやける視界にかろうじて認識した新八と神楽に問うた。「寝ぼけてんなヨ。早くおめでとう言うアル」ゆっくりと身体を起こしながら周りを見渡し、頭痛を抑えて甦る記憶の断片を繋ぎ合わせ銀時はようやく現状を理解すると、途端に酷く疲れた様子になった。「…最初っからそれだけで良かったんじゃね?」「ぐだぐだ言ってねーで早くしろや」「ハイ」妙の表情は能面のような笑みから極道とでも言うべきか。見るもの全てを無言のうちに従わせる風格を携えており銀時は口答えしようとする発想すら浮かばぬうちに立ち上がった。「今度は途中でやめるんじゃないよ」「ドウデスカネ?ミモノデスネ」「証拠採取なら任せてください」「うるせぇよ!やり辛いわ!」皆が好き勝手、多分に私情の入り混じった野次を飛ばしてくるのをあしらいながら、銀時は息を一つ、大きく吸い込んだ。「かずは」「あー…えーと、まぁ、何だ」「いつも応援してくれて、ありがとな」「おめっとさん」ヽ(*・ω・)ノ。・:*:・゚'★Happy Birthday☆,。・:*:・゚'ヽ(・ω・*)ノぽっぽさん・・・・・・まさかの誕生日小説ありがとうございました!☆(≧▽≦)☆!何から何まですごい楽しかったんですが、感想を書くと、同時にお祝いされてる自分がごっさ恥ずかしいっていう羞恥プレイ(笑)になるので、1人でしみじみかみ締めようと思いますwwwワーイ\(゚▽゚=))/…\((=゚▽゚)/ワーイぽっぽさんの素敵ブログはこちらです。→【popponoblog】