わんころりん☆にゃんころりん

パピーウォーカーの依頼を何度断っただろう
一番可愛い盛りに家庭犬の躾を依頼される事が多かった　何をどう見込まれたのか　どういう伝手を辿ったのかは不明なのだがとにかく多くの団体から依頼があった
まず　無資格である事　　コレは協会の方では問題ない様だ
次に保護犬の躾で手一杯である事　つまり時間的余裕が無いと伝える
何時も同じ手でお断りをしてきた　どうしてもお受けできないと･･･

【本音】
私の手がけた子が苦労するのは忍びない

目の不自由な方が『杖』と共に頼りになり行動半径を広げるのに欠くことのできない『アイテム』である事は承知している
こんな事を私見のみで申し上げればお叱りを受けるかもしれないが　私には何かと言うと犬が危険にさらされる事がどうしても納得できないのである

軍用犬　地雷探知犬　災害救助犬　麻薬探知犬　警察犬・・・・危険と背中合わせの現場に引きずり出されて行き　活躍した犬の陰で命を落とした犬がどれだけ居るのだろう･･･

こういった危険は無いにせよ　犬の変化　体調の変化を見逃すことなく暮しているとは思えないのだ　
『アイテム』　『消耗品』　『使用』と言ったイメージが私の中から拭い去れないのである
使用希望の方が大勢お待ちであることも知っている
にも拘らず　老齢で退役した犬の代わりをすぐ手にしている方もある
譲渡の仕方に公平性を欠いている様に感じているのは私だけなのであろうか
譲渡時に泊り込みで犬と暮らす期間を経て　パートナーとして独立していく

目が不自由であれば　臭いで犬の体調はわかるのかもしれない
私自身２ワン４にゃんと暮しているが誰が何時排泄したか臭いで判別できる
病気の時も体臭の変化でわかる　散歩の時のリードの感覚で歩き方の異常もわかる

しかしある時　都内の乗降客の多い駅の階段にべっとりべっとり血の痕があった　よくよく見るとそれは犬の足跡のようである
生まれついてのお節介　辺りを見渡すと血まみれの足の盲導犬がいた
ちょうど滑り込んできた電車に誘導せんとしていた時だった

走り寄って『お急ぎのところ突然失礼ですが　犬の足が血まみれです　応急処置をさせて頂けませんか？』と声をかけてしまった
その方は怪訝そうに『時間は十分ありますが　どういう事ですか？』と問い返された
状況と事情と私が何者であるかを伝えたところ　治療する事の快諾を得られた
ガラスでも踏んでしまったのだろうパッドがざっくり切れてぶら下がっている状態だった
駅員さんに救急箱を借り　消毒と止血　応急処置を済ませ歩くのに支障がないようにテーピングを施した

大量の出血と　傷口が縫合を必要とするかもしれないことを伝え　獣医師を尋ねる様お願いをして別れた

あの傷と出血量・・・犬はさぞ辛かったろう
ハーネスを持つ手に何も伝わらなかったのだろうか･･･

あの日の事を思い出す度に盲導犬の存在に手を貸す事を躊躇している私がいる
老齢になり退役した盲導犬の預かりなら喜んでしたい
労をねぎらいただ亡くなるまでの安息な日々を過ごす事はさせてやりたい・・・