2007/10/13(土)21:00
氷菓(米澤穂信)
古典部シリーズの1作目である,米澤穂信の「氷菓」(2001,You Can't Escape)を読んだ。
姉からの手紙による「勧め」で,部員ゼロで廃部の危機にある古典部に入部した折木奉太郎。
「秘密基地(部室)」を覗いてみる気になって地学講義室に行き,そこに「閉じ込め」られていた千反田えると出会ったことから,「省エネ」をスタイルとする生き方に若干の修正を余儀なくされることになる。
福部里志,伊原摩耶花も加わって4人になった古典部は,「えるが閉じ込められた謎」,「愛なき愛読書の謎」,「古典部文集のありかと壁新聞部室の謎」を解いた奉太郎を中心にして,33年前神山高校で起きた「偽りの英雄譚」の真相を探っていくことを活動の目的とする。
これは,失踪して7年になる伯父関谷純から,自分が小さい頃に「古典部に関して聞いて泣き出してしまったこと」を知りたいという,えるの入部の動機とも合致し,
神山高校文化祭をなぜカンヤ祭というのか?
古典部の文集のタイトルはなぜ「氷菓」なのか?
文集2号(1968年)の表紙になぜ兎の輪の中で兎と犬が噛み合う絵が書かれているのか?
に対して答えを求めることでもある。
古典部の4人それぞれ,なかなかよいキャラクターなのだが,手紙や電話を使って「裏で糸を引く」奉太郎の姉供恵の存在感が圧倒的。弟から「文武両道のハイパー大学生」といわれるだけのことはある(笑)
謎は解かれ,今年の文化祭の古典部の文集「氷菓」は,33年前の事件を追った経緯を千反田と奉太郎が書き,里志がゼノンのパラドックスに関するジョークを,伊原が古典的名作と呼ばれる漫画への思い入れを書くことになる。
この古典的名作は奉太郎によると「寺とかミューとかナンバーズ」とか言っていたことになるのだが……
実は,「クドリャフカの順番」を先に読んでしまった(日記は→こちらから)のだが,古典部の部屋で騒ぎが起きる前に,「あ,この『地球(テラ)へ…』って……」という野次馬の会話が聞かれるのは,ここからきていたんだ!!
ところで,古典部にとっては,すべて解決したのかもしれないが,少しだけ,疑問が残った。
1948年2月に事故で死んだ当時1年生の大出尚人は,顧問の大出先生と関係があるのか?
関谷純の裏にいた黒幕,おそらく「団結と祝砲」を書いた人物と思われるが,は誰なのか? ひょっとして,1967年7月にアメリカ留学した万年橋陽教諭ではないのか?
以上2点である。
「氷菓」というタイトルからの「声」には全く気づかなかった。
いいわけになるのだが,というかそれ以外のなにものでもないが,自分にとって「氷菓」とは乳脂肪分の少ない「ラクトアイス」でだったのだ(調べた結果→ここにだけ,自分の思い込みと同じことが書いてあったが,かなりマイナかもしれない)。
それで,読んでいる間ずっと,「ラクト」に関連するものはないかと網をはっていた(笑)
氷菓が「アイスクリーム」だとわかったところで英語変換はできたが,う~ん,悔しい!!
なお,姉の供恵が奉太郎へ出したイスタンブールからの手紙で出てくる,「城門の鍵」については,「読書とジャンプ」のむらきかずはさんの日記に詳しいので,興味がある方は参照してください。
時代,場所,登場人物などをフリーページの米澤穂信メモ(古典部シリーズ)に簡単にまとめてありますので,ごらんください。
米澤穂信の他作品についての日記は,フリーページ 読了本(日本) (米澤穂信)からごらんください。
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