2007/04/14(土)01:28
深淵のガランス(北森鴻)
北森鴻の「深淵のガランス」(2006)を読んだ。
契約した店に華道ともフラワーアレンジメントとも違う独自の美意識で花を飾る「花師」のオフィスを東銀座の裏通りに構える佐月恭壱は,腕のよい絵画修復師でもある。
腕のよい絵画修復師というのは,そのままで腕のよい贋作師になることができるわけで,絵画の贋作や真贋の鑑定の話が随所にでてきておもしろい。
恭壱の父のときからの助手であった前畑善次朗(日本の贋作者に精通),つまみはクラッカーとナッツしかないバーのママ朱明花,絵画研究所の鑑定部研究員である若槻伸吾などサブキャラクターも多彩で楽しい。
ところで,恭壱に絵画修復の以来を仲介するかなり重要な女性が出てくるのだが,最後まで名前が明かされない。
海千山千の世界で孤高を保っているらしいこと,民俗学者とちょっとしたで知り合いであることや「女狐」と呼ばれていることなどから,「冬狐堂」の宇佐見陶子なのではないかと思うが,どうだろう?
深淵のガランス
大正末から昭和の初めにかけて活躍した人気画家長谷川宗司の孫から,3点の絵の修復を頼まれた佐月だが,その1点である風景画の下にもう1つの絵が隠されていることに気づく。
「深淵のガランス」というタイトルがついた隠された絵を表に出そうと暗躍する秋本誠一郎の動機とそれに対する佐月恭壱の対応がとてもおもしろかった。
ガランスは「茜色」や「やや沈んだ赤色」と訳されるようだが,「茜色ってどんな色?」といわれてもイマイチわからん(笑)
ただ,作中に出てくる村山槐多が得意とした色のようで,Wikipedia(→こちらから)の「自画像」を見るとなんとなくイメージがわく。
血色夢
岩手県雫石での洞窟壁画の修復と,分割された絵画の事件が同時に進行していくが,その裏で糸を引いていたのは,父である朱建民だった。
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