2007/06/23(土)00:58
骸の爪(道尾秀介)
「背の眼」(日記は→こちらから)の続きになる,道尾秀介の「骸の爪」(2006)を読んだ。
「背の眼」の事件の10か月後の2003年11月末。
滋賀県の南端にある仏所「瑞祥房」を取材で訪れたホラー作家道尾秀介は,宿泊した晩に笑う千手観音を見たり,頭から血を流すウズサマ明王を見たりする。
同じ晩に仏師の一人が行方不明になるが,翌朝,道尾は「マリ」という声を聞きたと言ったことからそこを追い出され,町田の「真備霊現象探求所」に駆け込むことに……
真備庄介,北見凛とともに瑞祥房に戻った道尾だが,再び仏師の一人が行方不明になり……
今回の事件が「けっきょく死者の霊や魂というものとはまったく関わりがなかった」ことに真備はかなりがっかりしたようだが,それは読者としての自分も同じ。
前回の終わり方がとてもよかったので,かなり期待していたのだが……
逆に目立ったのは,「正しい言葉」を知らない道尾の聞き違えが「謎解き」のポイントになった点だが,あまり好きではない。
エバさんが「脱衣婆」からきていて,加藤さんは「火頭金剛」だったなどはまあよいのだが,「隆三やったから」が「立像やったから」だったり,「…マリ…マリ…」が真言の一部だったりというのは,知らなければ(もちろん知らなかった)推理の楽しみようがないので,連発されると愉快ではない。
極めつけが「骸の爪」で,それが「モグラの爪」の意味だといわれても,その他のもので食傷気味だったので,洒落たタイトルのはずが,興ざめなタイトルに変わってしまった。
道尾の「感じる力」や北見凛の「能力」をもう少し生かしたシリーズ(真備所長はあいかわらず鈍く,自分が求めている人をそばに感じられないままでよい,笑)として続けてほしいのだが……
道尾秀介の作品についての日記は,フリーページ 読了本(日本) (道尾秀介)からごらんください。
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