まあぼの交差点

Keyword Search

▼キーワード検索

Freepage List

Comments

プロじゃないから恥ずかしくないもん@ 正統派美少女 正統派美少女正統派美少女正統派美少女正…
連絡お願いします@ 連絡お願いします 連絡お願いします連絡お願いします連絡お…
神待ち掲示板@ 神待ち掲示板 神待ち掲示板神待ち掲示板神待ち掲示板神…
ヒクヒクしちゃう@ ヒクヒクしちゃう ヒクヒクしちゃうヒクヒクしちゃうヒクヒ…
疼いちゃう@ 疼いちゃう 疼いちゃう疼いちゃう疼いちゃう疼いちゃ…
いいでしょ?@ いいでしょ? いいでしょ?いいでしょ?いいでしょ?い…
予定は決まりましたか?@ 予定は決まりましたか? 予定は決まりましたか?予定は決まりまし…
できれば年上が@ できれば年上が できれば年上ができれば年上ができれば年…
集結だよ@ 集結だよ 集結だよ集結だよ集結だよ集結だよ htt…
おさわりの導入@ おさわりの導入 おさわりの導入おさわりの導入おさわりの…

全38件 (38件中 1-10件目)

1 2 3 4 >

京極夏彦

2007/09/10
XML
カテゴリ:京極夏彦

京極夏彦の「旧怪談 耳袋より」(2007)

を読んだ。

根岸鎮衛というとどうしても,隼新八の主人というイメージが先に立ってしまうが,事実,彼は佐渡奉行→勘定奉行のあと南町奉行を18年間つとめている。

その彼が,佐渡奉行であった天明年間から文化12年に南町奉行在職中に死去するまでに同僚や知人などから聞き取って書き記したのが「耳?」である。

併録してある「耳?」と読み比べてみると,京極の「旧怪談」が「耳?」の単なる現代語訳でないことは明らだ。

もともとはなかった状況説明や解釈が微妙につけ加えられて,ある意味では無理やり「怪談」になってもいる(笑)

かといって,当然ながら全くのオリジナルではなく,なんとも独特の雰囲気をもった文章だ。

人名をアルファベット1字で表していることと,「高齢者認知症」や「ミーティング」などように文章の中で使われている現代的言葉が時代臭を消しているくせに,書かれているのが江戸時代の話であることを隠しているわけでもない。

おそらく,「『新耳袋』ふうに書き改めてみようという試み」のなせるわざかもしれないが,「新耳袋」のほうを読んでいないので確かではない。

ここらへんから,また新たな「京極節」が始まるとしたら,それはそれで楽しみだ。


京極夏彦の作品についての日記は,フリーページ 読了本(日本) (京極夏彦)からごらんください。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 → 京極夏彦の世界
           (↑関連トラバの集積場所)
こちらもクリックをよろしく! → 
このブログのRSSのURL →  RSS 
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

著者ホームページ大極宮

楽天ブックス


旧怪談     京極夏彦


記事関連のオススメ日記
日々のあぶく(kiyu25さん)  ゆかいなおっちゃんのついてる日記(拝大五郎さん)
氷雫の隠れ家(氷雫さん)






Last updated  2007/09/10 08:15:11 PM
2007/07/03
カテゴリ:京極夏彦

京極夏彦の「百怪図譜」(2007)

を見て,読んだ。

左ページには2000年に銀座の展示会に出品したリトグラフの複製35点,右ページにはその「妖怪」への京極夏彦の文。
多田克己の「百鬼解読」につけられた京極のイラストと比べてみると,ほとんど同じものやかなり違うものがあり,おもしろい。

それぞれとこれまで読んだ京極作品のおぼろげな記憶とからめて簡単に書いていく。

わいら
「塗仏の宴」で華仙姑と中尊寺淳子が気道会に襲われた章のタイトル。「わいら」自体の記憶がおぼろなのが悲しい(笑)
リトグラフ(以下「画」とする)の「わいら」はちょっとさみしそう。

鬼一口
「百鬼夜行-陰」で,柿崎写真館が娘芳美が姿を消す話のタイトルになっている。
この場合の「鬼」は「魍魎の匣」の久保竣公だろうが,画からは在原業平の逸話や,上半分からは手塚治虫の絵を連想させられる。

野寺坊
「鉄鼠の檻」で言及されているのだが,記憶があいまい!!
画は,「ぼろは着~てても,こころはホトケ」といいたいところだが,目と鼻が怪しすぎる(笑)

青坊主
どこかに出てきたような気もするが,不明。
画は1つだけの眼の向きと顔の向きのずれが不気味。

塗仏
「塗仏の宴」のタイトルでもあるし,その中で京極堂も多々良も正体をつかめずにいる。
画の眼と舌はもちろんだが,尾がなぜか印象に残った。

おとろし
「塗仏の宴」で織作茜が殺される章のタイトル。そこでは「おそろし」,「おどろおどろし」という言葉の響きが気になったのがが,赤と黒を基調とした画も印象的。

狂骨
「狂骨の夢」のタイトル。「骨」をめぐる執着や怨念や因果が印象的な作品だった。
画の頭蓋骨から「表情」が感じられるのに笑えた。

魍魎
「魍魎の匣」のタイトルだが画から作品の連想はしづらい。
「匣」のほうに重さがあったような気もする。

方相氏
「魍魎を制する者」とのことだが,印象は薄い。「追儺」の鬼なのだが「百器徒然袋」に出てきたような気もしない。

絡新婦
「絡新婦の理」のタイトル。美しい女性がおおぜい登場した作品だっただけに,画の女性の顔は嫌いだ(笑)

鉄鼠
「鉄鼠の檻」のタイトル。画の顔からストーリーが自然と浮かんでくる。尾が長くかすれていくのがよい。

精螻蛄
「塗仏の宴」で三木春子につきまとっていた工藤が岩川警部補に逮捕される章のタイトル。
覗き屋であり告げ口屋である感じが,画の右目と舌の赤からよくわかる。

ぬっぺっぽう
「塗仏の宴」で妹尾の依頼で戸人村へ行った関口が気を失うまでの章のタイトル。作品のメインキャラで粘菌がらみともなり,そういえば大学での関口の研究テーマだったなぁ……。
画は基本的に猥雑ではある(笑)

うわん
「塗仏の宴」で村上兵吉が自殺を思いとどまる章のタイトル。そういえばやたらうるさい音がなっていたけれど,画がそれを表しているとしたら結構感じが出ている。

ひょうすべ
「塗仏の宴」で加藤麻美子が子供を水死させてしまったのが尾国による後催眠だったという章のタイトル。
泰氏やら河童やらやたらと背景を持つ妖怪だが画は悪意に満ちている姿をよく表している。

倩兮女
これまでにいろいろ書いているので,フリーページの倩兮女を起点にごらん下さい。

毛倡妓
これまでにいろいろ書いているので,フリーページの毛倡妓を起点にごらん下さい。

陰摩羅鬼
「陰摩羅鬼の瑕」のタイトル。由良伯爵の哀れさと潔さに涙した自分を画の黄色い眼が笑っているような気がする。

河童
「ひょうすべ」や「岸壁小僧」との関係で言及があったような気もするが,河童自体の印象は薄い。

豆腐小僧
未読。

ゑびす,福助,隠神刑部狸,鬼
隠神刑部狸の画がタヌキより「犬神」に見えることと鬼のポーズが印象に残った。

鳴釜
「百器徒然袋」で,ばか坊ちゃんたちが「カマ」に踊らされる話(薔薇十字探偵の憂鬱)のタイトル。金ちゃんは元気かなぁ(笑)

瓶長
「百器徒然袋」での壺の蒐集家と孫娘の話(薔薇十字探偵の鬱憤)のタイトルだが主役は榎木津元子爵の亀だったような気もする(笑)
画の瓶長の中に入っているのは「文」によると古酒だが「百鬼解読」のイラストと比べてこぼし方がかなり減っている。筆者の酒量が変わったのか……???(笑)

山颪
「百器徒然袋」で,「鉄鼠」の山から下りた常信,鉄信の話がきっかけとなった章(薔薇十字探偵の憤慨)のタイトルで,榎木津の暴れぶりが印象に残っている。

泥田坊
「今昔続百鬼-雲-」で沼上君と多々良センセイが忌み籠りして人が家から出ない村に入りこんでしまった事件のタイトル。
画は「土」の怨念をよく表していると思う。

岸涯小僧
「今昔続百鬼-雲-」で多々良センセイが「かっぱ」との声を聞いたと思い込んでしまった事件のタイトル。
画の歯が殺害現場を思い起こさせる。

手の目
「今昔続百鬼-雲-」で沼上君が結構頑張るが,結局多々良センセイ活躍してしまう賭博事件のタイトル。
画の手を含めた「表情」がよい。

火車
「魍魎の匣」に出てきたようだが,宮部みゆきの作品の印象が強かったせいか,影が薄い。

猫また
どこで出てきたのか,出てこなかったのかまったくわからないが,画はやたら色っぽくってよい(笑)
その色っぽさに「どんだけ~!」を連想してしまう自分が怖い(笑)

川赤子
これまでにいろいろ書いているので,フリーページの川赤子を起点にごらん下さい。
「画」と「百鬼解読」のイラストとが最も離れたテーマであると思う。

文車妖妃
これまでにいろいろ書いているので,フリーページの文車妖妃を起点にごらん下さい。

姑獲鳥
「姑獲鳥の夏」のタイトルだが,出発点を最後にもってきているところが意味深。「百鬼解読」のイラストとの乖離は「川赤子」が「最も」と書いたが,この「姑獲鳥」はさらにその上を行く。
ただし,画の「顔」はキライ! 嗜好はどうしようもないなぁ(笑)


京極夏彦の作品についての日記は,フリーページ 読了本(日本) (京極夏彦)からごらんください。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 → 京極夏彦の世界
           (↑関連トラバの集積場所)
こちらもクリックをよろしく! → 
このブログのRSSのURL →  RSS 
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

著者ホームページ大極宮

楽天ブックス


百怪図譜     京極夏彦


記事関連のオススメ日記
読書とジャンプ(むらきかずはさん)






Last updated  2007/07/03 01:08:01 AM
2007/06/24
カテゴリ:京極夏彦

京極夏彦の「前巷説百物語」(2007)

について,その1の続きです。

寝肥,周防大蟆,二口女,かみなり,山地乳については「その1」をごらん下さい。

旧鼠
霜月(11月)。5年前に打ち首になったはずの,見えない「稲荷坂祇右衛門」との壮絶な戦い。
麹町の自身番屋の火の見櫓にゑんま屋の巳之八,「仕事」の手伝いをしていた辰五郎,おしま,各章で顔を出していたおちかの死体がつるされ,林蔵は又市のすすめで江戸から消える(後に「巷説」の「帷子辻」に登場)。
仲蔵の家で偶然一緒になった又市と山崎は多勢の無宿人に襲われ動けないところを御燈の小右衛門に助けられいったんゑんま屋に。
又市が,「祇右衛門」への憎しみから野非人を殺している両国の小右衛門と話をしている間(又市とおぎんの最初の出会いがある)に,ゑんま屋が無宿野非人に襲われ,ゑんま屋が焼け,角助が死ぬ。
本所の外れの吹きだまりの山崎の住処に身を寄せた又市だが,山崎がその場所の古株三佐の孫娘に首を山刀で刺されて死に,又市も殺されかけたときに「まかしょう(御行)」が現れ,自分が祇右衛門だと名のる。
根津六道稲荷堂で,志方兵吾が祇右衛門と三佐を捕らえ,奉行所は祇右衛門を5年前の「祇右衛門」と別人だが本物の祇右衛門として打ち首獄門に(三佐は磔)。
「まかしょう」は一文字屋仁蔵が送り込んだ「公事宿世話役祇右衛門」の双子の兄で,騒動の間仲蔵の隠し部屋に匿われていた。
お甲は角助と巳之八の位牌をもって彼らの国元の飛騨に旅立ち,仲蔵が送ることに。
又市は小右衛門と組んで裏の世界に入りこむことにし,元結を切り,衣装,偈箱をつけて御行となる。

☆なんと「百介」が登場!!
夕暮喫茶店(奈羽さん)の日記を読んでいたところ,「久瀬さん繋がりとは…」とあり,あわてて読み返したらいました!!
「まかしょう」を追いかける蝋燭問屋の3代目の若造!!
棠庵先生は「生駒屋は必ず潰れましょう」といっていたが,若旦那はよい方法を見つけたようで……


「祇右衛門」との決着がつくのはこの10年後,「続巷説百物語」(日記は→こちらから)の「狐者異」においてである(そこでは,二人目の祇右衛門の処刑の意味・設定が「旧鼠」とは異なっている)。

また,シリーズの前作たちを読んで,「狐者異」を天保6年のことと推定しているので,「旧鼠」は文政8年(1825),最初の「寝肥」は文政6年のこととしておく(微笑)

それにしても,図書館で借りたので「相関図」を読めなかったのが悔しい!!!

年表については,そこにあるのと同じかもしれない,前巷説百物語 京極夏彦を見つけた(URLから考えて,一過性かもしれない)。

起点を「182X年」として,「又市たちの活躍の始まりは、江戸時代末期の文政年間」とあったので,自分が勝手に考えた「時」がそれほど狂っていなかったのに一安心(笑)

ただ,
「年表は、又市たちの最初の活躍を描いた「寝肥」を基準に、何年後に起こった事件かを表したものです。」
に疑問もある。

「巷説」も「続」も「10年後」から始まっているが,
「狐者異」で祇右衛門の処刑について又市が百介に「最初は十五年前,それから丁度十年前に……」と言っていることから考えると,「小豆洗い」,「野鉄砲」「白蔵主」,「狐者異」は起点からは12年後のはずだと思う。

その他のにも自分が思っていたものと若干のずれもあり,必要ならそのうちに修正する予定。


「巷説百物語」についての記事は→こちら,「続巷説百物語」についての記事は→こちら,「後巷説百物語」についての記事は→こちらから。

各話の舞台,登場人物とあやかしは,フリーページの京極夏彦メモ(百物語シリーズ)に簡単にまとめてありますので,ごらんください。
シリーズ最初にあるリンク用のインデックスは時系列に並べてあります。

京極夏彦の他作品についての日記は,フリーページ 読了本(日本) (京極夏彦)からごらんください。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 → 京極夏彦の世界
           (↑関連トラバの集積場所)
こちらもクリックをよろしく! → 
このブログのRSSのURL →  RSS 
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

著者ホームページ大極宮

楽天ブックス






Last updated  2007/06/24 10:56:59 AM
カテゴリ:京極夏彦

京極夏彦の「前巷説百物語」(2007)

を読んだ。

小股潜りの又市が御行の又市になるまでの話で,「旧鼠」は「嗤う伊右衛門」の事件が始まる2年ほど前のようだ。

又市が上方を売って江戸に出てきた頃の話である。ひょんなきっかけから損料屋「ゑんま屋」の主人お甲に見込まれた又市は,損料仕事の手伝いから,だんだん仕掛けの中心になっていく。

「ゑんま屋」はあくまでも表の世界にいて「損料(「損した思いを晴らす対価)」を求めようとするのだが,裏の世界の力が必然的に迫ってきて……

結構悲しい話でもあった。

以下はまとめなのでかなりネタバレしています。


寝肥(ねぶとり)
秋。二重の殺人現場を,手遊び屋(玩具売り)長耳の仲蔵が加工した袋状の蛙の皮を使って,女がふくらんだ結果と圧死としてしまうのがおもしろいのだが,又市は「寝惚堕」という病気で「殺し」という「真実が消えた」ことに釈然としないようだった。
亭主に無理難題をいうおもとと,いわれるままに女衒まがいのことをする音吉の捩れた愛という意味では「嗤う伊右衛門」をも連想させる。

☆気にかかった女のために損料30両を出すという又市,一割引くから少々助けろという角助,身売りをして40両をゑびす屋に届けたお葉それぞれの金のやりとりが情のやりとりになっていてよかった。

周防大蟆
「寝肥」の3か月後の年明け。本所での仇討ちの場に大きな蝦蟇が出現して騒ぎになる。
蝦蟇を退治して姿を消したとされる川津盛行は仇の疋田伊織として殺され,討ち手の岩見平七は脱藩して疋田とともに姿を消す。
助太刀を殺してでも依頼人岩見の頼み通りに岩見が疋田に返り討ちにされるようにはかったお甲の図面を又市が引き直した。

☆武器をもたない元公儀鳥見役山崎寅之助の強さに感服。

二口女
使用人の評判もよく,姑との折り合いもよい旗本西川俊政の後妻縫が先妻の子を折檻死させた罪を償いたいが事件を公にもできず……と,ゑびす屋に依頼してくる。
林蔵の調べなどで,縫が町医者西田尾扇の助手と下男に脅されていることがわかり,仲蔵の細工物と本草学者久瀬棠庵の協力で「頭脳唇(ふたくち)」という奇病をでっち上げる。
真相は子供を殺したのも,さらには前妻を殺したのも姑の清だった。
なお,町医者の西田尾扇は「嗤う伊右衛門」(日記は→こちらから)にも登場する。

☆ここらへんからが「巷説」の又市の仕掛けの原形になるのだなぁ。

かみなり
梅雨時。領内の大百姓の依頼で瓦版に載るような仕掛けをして恥をかかせた立木藩江戸留守居役土田左門は蟄居を申しつけられ,又市たちの思惑を超え切腹。
しばらくして,ゑんま屋のお甲と角助が攫われ,角助は半死半生で戻される。又市,林蔵,山崎,巳之八も庚申堂で「裏の渡世」の人間に捕まるが,又市は5日の猶予をもらってゑんま屋に対する意趣返しの依頼の取り消しをはかろうとする。
土田の家族が依頼主はではないとわかり,藩の江戸屋敷に戻って途方に暮れる又市に「謎の老人」が近づき,土田が領内の大百姓としくんだ「隠し米」について教える。
岡っ引の万三が「かみなり」だといって棠庵に持ち込んだ鼬を使って,江戸屋敷にあった隠し米を領内の大百姓に戻し,依頼を取り消させた。
江戸屋敷の蔵を砕いて燃やしたのは「かみなり」ではなく,御燈の小右衛門でだった。

☆土田左門のもつ2つの顔がよかった。また,岡っ引の万三が棠庵にすっかりなじんでしまっているのもほほえましい。又市と小右衛門が初めて出会う話でもあった。小右衛門の死をもって,又市が白から黒になることを考えると,感無量……

山地乳
年が変わった春先。名前を書くと相手が3日で死に,絵馬が黒く塗られるという渋谷道玄坂の縁切り堂の黒絵馬の話題が市中をにぎわわす。
同心の志方兵吾は,絵馬に自分の名前を書き,黒絵馬に霊験がないことを明かそうとする。
一方,ゑんま屋は又市の昔の仲間の文作,玉泉坊を通した大阪の一文字屋仁蔵からの依頼,野非人の弱みに付け込む「稲荷坂祇右衛門」の仕掛けの1つである黒絵馬をつぶすことを600両で引き受ける。
襲撃者があること覚悟をし手配もいていた志方だが,眠っているうちに,山地乳に襲われたが命を取りとめたことになって事件は片付く。
実際には,御燈の小右衛門に鬼蜘蛛(「かみなり」でゑんま屋を襲った賊)を特定してもらった山崎と玉泉坊が彼ら5人を殺し,長耳の仲蔵が山地乳に扮して志方の同僚同心多門英之進と万三を欺いた。

☆志方兵吾のまっすぐさがとてもまぶしかった。仲蔵は道具作りが巧みなだけでなく演技力もあるようだが,「長耳」の歌舞伎の大物って誰だろう?
玉泉坊は,「巷説」の「帷子辻」と「続巷説」の「死神」に,文作は「続巷説」の「船幽霊」に登場する。

文字数の関係で,その2に続きます。


「巷説百物語」についての記事は→こちら,「続巷説百物語」についての記事は→こちら,「後巷説百物語」についての記事は→こちらから。

各話の舞台,登場人物とあやかしは,フリーページの京極夏彦メモ(百物語シリーズ)に簡単にまとめてありますので,ごらんください。
シリーズ最初にあるリンク用のインデックスは時系列に並べてあります。

京極夏彦の他作品についての日記は,フリーページ 読了本(日本) (京極夏彦)からごらんください。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 → 京極夏彦の世界
           (↑関連トラバの集積場所)
こちらもクリックをよろしく! → 
このブログのRSSのURL →  RSS 
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

著者ホームページ大極宮

楽天ブックス


記事関連のオススメ日記
日々のあぶく(kiyu25さん)  のぽねこさん
読書とジャンプ(むらきかずはさん)  天竺堂通信さん






Last updated  2007/06/24 10:59:02 AM
2007/06/03
カテゴリ:京極夏彦
「嗤う伊右衛門」,「四谷雑談集」に続いて,

鶴屋南北の「東海道四谷怪談」

(河竹繁俊校訂,1956)を読んだ。

その1(「嗤う伊右衛門」の日記)
その2(「四谷雑談集」の日記)

歌舞伎には縁遠く,台本も初めて読んだのだが,「ぐだぐだかな?」と思った予想に反し(もちろんぐだぐだな部分もあった,笑),亡霊の出方,忠臣蔵とのつながりも含めてしっかりした構成だったので驚いた。

「東海道四谷怪談」は,「四谷雑談集」とその他の巷談を骨組みとして忠臣蔵と同時に上演される狂言の台本として書かれたものだが,現代の「ホラー物」の一部(としておこう,笑)より,よほどリアリティがあるように思える。

「東海道四谷怪談」の内容をごく簡単にまとめると以下のようになる。

序幕
浅草で,伊右衛門(岩の夫)が自分の旧悪(御用金横領)を知って岩を自分から離している四谷左門(岩,袖の親)を,直助が横恋慕で佐藤余茂七(袖の夫)を殺す。ただし,死んだのは余茂七ではなく奥田庄三郎。
直助は余茂七の仇を討つためと騙して袖と仮の夫婦になる。
左門,伊右衛門,余茂七らが元塩谷(←赤穂)藩士(直助は藩士の下男),伊東喜兵衛が高野(←吉良)師直の家臣であることも語られる。

二幕
産後の肥立ちが悪い岩は,孫の梅を伊右衛門と結婚させたい伊東喜兵衛からの毒で顔が崩れ,伊右衛門らを恨んで死ぬ(事故死に近い)。
民谷家秘蔵の薬を(病の旧主のため)盗んだ小仏小平に密通の罪を着せて伊右衛門が斬り,岩とともに戸板の裏表にくくって川に流す。
同日の夜,祝言を挙げ連れ帰った梅(岩の顔)と喜兵衛(小平の顔)の首を伊右衛門が斬り落とす。

三幕
深川の隠亡堀で,梅の乳母槇(岩に毒を持参)が鼠(岩)に引かれて川に流され,伊右衛門は戸板の岩と小平から恨み言をいわれる。
伊右衛門と彼の母「熊」との対話,秋山長兵衛のゆすり,直助が岩の櫛を拾う場面もある。

四幕
姉岩の死を宅悦から聞かされた袖はいよいよと思い「仮の夫」直助に身を許すが直後に余茂七が現れ,自分が二人から同時に殺されるように仕向ける。
自分が浅草で殺したのが旧主の息子であり,書き置きから袖が妹だと知った直助も自害する。
孫平の住まいに小平の幽霊が現れ,元塩谷藩士小汐田又之丞は民谷家の秘薬を飲んで回復する。

大詰
七夕の日に伊右衛門は振袖を着た村娘姿の岩に化かされる。
時がたち,塩谷浪士討ち入りの日。
伊右衛門は熊の手引きで高野家に仕官しようとするが,岩の死霊に縊り殺された秋山から取り戻した師直のお墨付きの印の部分が鼠にかじられていて不首尾となる。
母が岩の死霊にのど元を食い殺され,父新藤(ママ)源四郎が首をくくったあと,伊東喜兵衛・梅殺しで追われていると逃げてきた関口を罠だと見破った伊右衛門が斬る。伊右衛門はその他の捕り手も斬るが,鼠たちの助太刀を受けた余茂七の手にかかって死ぬ。

以上

「四谷雑談集」で,伊右衛門と梅の婚礼の日に現れた蛇と,伊右衛門を食い殺した鼠をそれぞれ小平,お岩の象徴としてうまく使っているのが印象的だった(「嗤う伊右衛門」の最後の場面では,その蛇と鼠がさらに印象的に使われている)。

伊右衛門の,お岩の亡霊に怯えつつも最後まで対決姿勢を崩さない「ふてぶてしさ」もなかなかよかった。
高野家への仕官を「塩谷家のために内情を探るため」といってはばからない自分勝手さも,「よい男」の役者がやるとそれなりに味がありそうだ。
「雑談集」での,小心物ではあるがそれほど悪人ではない伊右衛門(岩を追い出したのは,又市に騙されたこと,岩の性格が悪いことなどもあり情状酌量の余地があるし,後妻の遺言で岩を探したり,亡霊と話し合いをしようとしたりしている)とも,「嗤う伊右衛門」での岩への愛を貫く伊右衛門とも違い,3者3様の伊右衛門像が見られておもしろかった。


登場人物について,簡単にまとめてみた。

両方に出てくる
伊右衛門…「嗤」「雑」では摂州浪人境野伊右衛門だが,「東」では元塩治藩士民谷伊右衛門(進藤家から民谷家に養子らしい)。

又左衛門…「嗤」「雑」では御先手組同心。「嗤」は民谷,「雑」田宮となっていて,「雑」では彼の死後に又市が婿養子の伊右衛門を探し出す。「東」では元塩治藩士四谷左門(四谷左門町から)。

岩…共通だが「東」では死ぬが,「嗤」「雑」では失踪。「東」では伊右衛門と駆け落ちし,後に左門によって別れさせられ,伊右衛門が左門を殺してから復縁,産後伊右衛門に疎まれ,宅悦から伊東・伊右衛門の企みを聞かされて恨みながら死ぬ。

梅…「嗤」では薬種問屋の娘で,伊東喜兵衛の妾のまま伊右衛門の後妻,「雑」では喜兵衛の妾のひとりというだけ(「花」が後妻になる),「東」では喜兵衛の孫娘。

伊藤喜兵衛…「嗤」「雑」では御先手組与力。「東」では高野師直の家臣。「嗤」では,独自のキャラクターが与えられている。

秋山長右衛門…「嗤」「雑」では御先手組同心(「雑」では伊右衛門と花(梅)の仲人をしただけで恨まれる損な役割)。「東」では不良浪人。

又市…「嗤」「雑」では「小股潜り」。「嗤」では裏の主役としてのキャラクターになっている。「東」では伊東喜兵衛の娘弓の婿で梅の父。


「嗤」と「雑」だけに出てくる
三宅彌次兵衛…どちらも御先手御鉄砲組組頭だが,「雑」では,伊東喜兵衛との血のつながりはない。

染…「嗤」も「雑」も伊東喜兵衛の胤で伊右衛門の子供。「嗤」では梅に殺されるが,「雑」では婿養子源五右衛門を取って田宮家の最後まで残るが25歳で病死,やがて源五右衛門も狂って田宮家は断絶となる。
なお,「東」に出てくる名のない赤子は伊右衛門と岩の子だが,鼠に引かれて失踪する。

紙屋…家を出た岩の請け人で,どちらも四谷塩町の紙屋だが,「嗤」では徳兵衛,「雑」では又兵衛となっている。岩の失踪で徳兵衛は2両,又兵衛は2両2分払うことになる。


「嗤」と「東」だけに出てくる
堰口官蔵…「嗤」では御先手組同心,「東」の「関口」は伴助を小物とする不良浪人。

西田尾扇…「嗤」も「東」も伊東喜兵衛の取り巻きの町医者だが,「東」には西田という姓は出てこない。

直助…「嗤」では西田尾扇の下働き,「東」では薬売りからウナギ取りになった元塩谷藩士奥田将監の下男。袖の仮の夫。「嗤」も「東」も途中で権兵衛と名を変えるが,これは享保年間の「深川万年町の医師殺し権兵衛」の話を下敷きにしたため。

袖…「嗤」では直助の妹,「東」では佐藤余茂七の妻で岩の義理の妹だが,実は元宮三太夫の娘で直助の妹。

宅悦…「嗤」も「東」も按摩で,どちらも岩に真相を打ち明ける役を負わされているが,「東」では岩に殺されない。「東」では売春や仕事の取り持ちもする。「雑」では登場しない宅悦のかわりに煙草の行商「茂助」が岩に真相を知らせる。

槇…「嗤」では首吊りをした針売りの老婆で又市の母,「東」では岩に毒をもっていった梅の乳母で,隠亡堀で鼠に引かれる。

利倉屋茂介…「嗤」では薬種問屋で梅の父,「東」では「茂助」で民谷家に出入りする質屋。

小平…「嗤」では担ぎの薬売り,「東」では岩の産後に宅悦の口入で伊右衛門が雇った臨時の下男(小仏小平)。元塩谷藩士小汐田又之丞の小物で,伊右衛門の薬を盗んで秋山に捕まり,密通の罪を着せられて斬られる。

孫平…どちらも小平の父だが,「嗤」では利倉屋から薬を盗み,「東」では伊右衛門の母「熊」の再婚相手。

佐藤余茂七…「嗤」では民谷家の遠縁の御書物同心,「東」では元塩谷藩士で袖の夫。

「嗤う伊右衛門」の時代・場所,登場人物をフリーページの京極夏彦メモ(嗤う伊右衛門)に簡単にまとめてありますので,ごらんください。
京極夏彦の他作品についての日記は,フリーページ 読了本(日本) (京極夏彦)からごらんください。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 → 京極夏彦の世界
           (↑関連トラバの集積場所)
こちらもクリックをよろしく! → 
このブログのRSSのURL →  RSS 
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

楽天ブックス






Last updated  2007/06/03 09:09:00 PM
カテゴリ:京極夏彦
「嗤う伊右衛門」(日記は→こちらから)の中公文庫版解説にあった,

高田衛編・訳の「四谷雑談集」(1992)

(「日本怪談集 江戸編」(河出文庫)に収録)を読んだ。

内容をごく簡単にまとめると,

疱瘡にかかって醜悪な容姿となり性質も悪い田宮岩が御先手組同心であった父又左衛門の死後,小股潜りの又市の口利きに騙された摂州浪人伊右衛門を婿にする。

自分の子を孕んだ花(梅は伊東のもう一人の妾として名前だけ出てくる)を他人に縁付けたい与力伊東喜兵衛と花に気がある伊右衛門が組んで岩を騙し,岩は田宮家を出て紙屋又兵衛を請け人にして旗本屋敷に奉公する。

同心秋山長兵衛が仲人となって,伊右衛門とお花が婚姻。煙草の行商から事情を聞いたお岩は,3人を呪い旗本屋敷で暴れて姿を消す。

お岩の祟りで,田宮,伊東,秋山3家が断絶する。

以上

「雑談集」では,「岩の祟りで……」の部分にいろいろな話があり,最後に秋山家が断絶するまで30年かかるのだが,その間生身(幽霊の形も含めて)の岩が登場することはない。

伊右衛門と花の婚姻の夜に蛇の姿で現れ,15年後,4人の子どもを持つ伊右衛門の前に「白い物」と声で現れて末娘が死ぬきっかけを作り,その秋,お花のもとに通う「男」の姿で現れ,3年後に死んだ末娘の姿を見た長男が死ぬことになり……山伏を使って霊媒の少女にお岩の霊を呼び伊右衛門と対話する場面もあるのだが,結局,お岩の「お化け」は出てこない。

伊東家の場合,養子にした二代目喜兵衛の不始末でお家断絶となるのだが,それがお岩の「祟り」とされ,秋山家では,息子が女乞食を見てお岩に似ていると考えたことから,息子も長兵衛も死んでいく。

「お化け」を出したのは鶴屋南北のすぐれた想像力であり,あえて「お化け」を消したのは京極夏彦のすぐれた創造力だといえるだろう。

登場人物については「その3」でまとめるが,
佐藤余茂七,直助,袖,宅悦,小平・孫平,利倉屋茂介,堰口官蔵,西田尾扇などは「雑」には出てこない。
これらは,「忠臣蔵」との関連などのために鶴屋南北が作ったキャラクターであり,それをまた「嗤」で京極夏彦が別のキャラクターに作り変えている。

「雑」ではお岩の性格が悪く,伊右衛門の後妻となったお花の性格(容姿も)がよい点が印象に残った。

その他,「嗤う伊右衛門」との共通点,相違点がいろいろあっておもしろく,それほど長くもないし,現代語だし,興味のある人には一度読んでみることがオススメです。


PS
全体として最も印象に残ったのは,「家」とのかかわりでの「婚姻」や「養子」に対する考え方。

因縁話としての「雑談集」の主眼は,岩の怨念によって田宮家,伊東家,秋山家が絶えることにあるのだが,「家を守ること」と「血筋を守ること」は直接的にはつながっていない点が興味深かった。

与力の伊東喜兵衛は妾は持つが妻は持たず,持参金つきの養子を迎え,その二代目喜兵衛もまた持参金つきの養子をもらうが,そこに「親戚から」という条件はついていないし,問題にもなっていない。
「家名」が続くということが守られさえすれば(儒教的考え方で,先祖を祀ることが続きさえすれば),「血」はどうでもよいという考え方だったのかもしれない。

伊右衛門と花の婚姻についても岩を追い出したうしろめたさは出てくるが,伊東の子を宿した妾との婚姻という点に関してのうしろめたさも非難もまったくない。
生まれた女の子が伊東の子供であること認めつつ,夫婦の子としてふつうに育てているし,最後に残ったのが子供が彼女だったため,婿をとって「家を継がせる」ことを当然と考え,そこでも「血」は重要視されていない。

これが江戸時代の一般的考え方であったのかは不明だが,少なくとも「雑談集」の世界ではそうであり,将軍家や有力大名から送り込まれる小大名家の「養子」と同じような匂いが感じられる。

最も,御三家や御三卿などは「血を絶やさない」ための方策であるので,江戸時代の「家」に「血」はどうでもよかったと一概に言うことはできないのだが……


その1(「嗤う伊右衛門」の日記)
その3(「東海道四谷怪談」の日記)


「嗤う伊右衛門」の時代・場所,登場人物をフリーページの京極夏彦メモ(嗤う伊右衛門)に簡単にまとめてありますので,ごらんください。
京極夏彦の他作品についての日記は,フリーページ 読了本(日本) (京極夏彦)からごらんください。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 → 京極夏彦の世界
           (↑関連トラバの集積場所)
こちらもクリックをよろしく! → 
このブログのRSSのURL →  RSS 
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

著者ホームページ大極宮

楽天ブックス






Last updated  2007/06/03 12:49:30 PM
カテゴリ:京極夏彦
「巷説百物語」シリーズや「覘き小平次」に先行する,

京極夏彦の「嗤う伊右衛門」(1997)

を読んだ。

エコロジーや薬品アレルギーの観点から見直されているとはいえ,最近めったに(というか全然)見ることのなくなった「蚊帳」(→蚊帳の博物館)が実に効果的に使われている作品である。

蚊から身を守ってくれるはずの蚊帳だが,いったん蚊が紛れ込んでしまうと,その中の人間は蚊のエサになってしまう(笑) そのときの「恐怖」と羽音を聞かされ続ける「苛立ち」は経験してみないとわからないかもしれないが,冒頭の伊右衛門と直助の会話の後半には,その状況が実に巧みに使われている。

蚊帳は「結界」でもある。その中から見た風景は通常よりぼんやりとして見え,伊右衛門は嫌いなようだが,何かの内側にいるという安心感を与え,外から見た蚊帳の中は「一まとまりの世界」であり,そのことから「蚊帳の外」という言葉も生まれてくる。

蚊が紛れ込むのは「破れ穴」からだけではない。蚊帳の出入りには蚊を入れないための作法があり,小さい頃,大きく広げて出入りしては叱られたことを思い出す。

この作法を守らずに「結界」に入ろうとする無礼な侵入者は排除されなければならず,そのような意味合いで,「民谷家の惨劇」において伊東喜兵衛は伊右衛門に斬られたのだ……

そして最後には,蚊帳の結界に守られた伊右衛門と岩の「愛の形」が明らかにされる。


ここに書かれているのは,お岩の亡霊で知られる「東海道四谷怪談」(関連して書いた日記は→こちらから)と(中公文庫版解説によると「怪談」の種本である)「四谷雑談集」(関連して書いた日記は→こちらから)を素材に京極夏彦が創り上げた,歪んだラブストーリーの世界といっていいだろう。

「巷説百物語」のシリーズや「覘き小平次」(表には出てこない)の中心人物である御行の又市が初めて登場する作品でもある。
「四谷雑談集」に出てくる「小股潜りの又市」を京極夏彦がここで主要キャラクターとして採用したことが,その後の「巷説百物語」のシリーズのきっかけとなったのかもしれない。

ということもあり,ここでの又市はそれ以降の又市と若干異なっている。
彼特有の緻密な仕掛けがないし,「まとめ」はするものの結果的には後手,後手にまわることになり,「かっこいい」ことに変わりはないが,事態は彼の手を離れたところで進んでいく。

その意味でやはりこれは伊右衛門と岩を中心として,そのまわりの人々をも含めた「愛」の物語であるといえるだろう。

生真面目,寡黙で,剣の腕が立つのにそれをひけらかすこともない伊右衛門と民谷家の娘であることに矜持を持つ岩だが,お互いを想いあっているにもかかわらず,口から出てくるのは相手への罵詈雑言で,隣家へも届くほどの仲違い。
岩は伊右衛門のことを思って民谷家を出,伊右衛門は岩の戻る「家」のために梅と再婚する。
この「歪み」が四谷左門町の亡霊騒ぎと「民谷家の惨劇」につながっていくのだが,「歪んだ愛」はそれだけではない。

民谷又左衛門の,毒を与えて顔を醜くしてまでも婚姻をさせたくない岩への愛,
梅の,子供を殺しまでした伊右衛門への思い込みの愛,
直助の,彼女を首吊りさせることになった袖への愛,
伊東喜兵衛のお梅への天邪鬼な愛,
など盛りだくさんで,物語に独特の陰影を与えている。

PS
「覘き小平次」(日記は→こちらから)は,薬売り孫平の子となった小平の骸が見つかってから1年後の話となっている。
秋山長右衛門の死体とともに見つかった白骨が小平のもので,「孫平・小平」が共通の人物だとしたら,「覘き小平次」の話は民谷家の惨劇の1年後となるのだが,どうだろう?

その2(「四谷雑談集」の日記)
その3(「東海道四谷怪談」の日記)

時代・場所,登場人物をフリーページの京極夏彦メモ(嗤う伊右衛門)に簡単にまとめてありますので,ごらんください。
京極夏彦の他作品についての日記は,フリーページ 読了本(日本) (京極夏彦)からごらんください。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 → 京極夏彦の世界
           (↑関連トラバの集積場所)
こちらもクリックをよろしく! → 
このブログのRSSのURL →  RSS 
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

著者ホームページ大極宮

楽天ブックス


記事関連のオススメ日記
未来の予定~ラビ的(みっつ君)  ながらにっき(danke3さん)






Last updated  2007/06/03 12:51:46 AM
2007/05/27
カテゴリ:京極夏彦

京極夏彦の「覘き小平次」(2002)

を読んだ。

役者としての才能がなく,音羽屋から破門され,地方まわりの幽霊しかできない役者小平次の生き方というか,生きているのかいないのかわからないありさまを軸に,

長男の嫁の姦計で家を追われる若い後妻,
仇を恩と思い続ける男,
絵の中の男に惚れ,恵まれた家族を捨てる女,
娘を殺され,大きな仕掛けで極道に意趣返しをする商人,
半端な育ち方をして,最後までそれに気づかない男,
「無」のふりをしながらも「名前」にこだわる男,
売れない役者の「存在感」に嫉妬する女形,
機会さえあれば相手を殺し,金を奪う悪党,

などの話がからみながら,それぞれが結構スッキリと収束する。

ところで,又市と治平が初めて組んだときの話であること,「巷説百物語」では放下師の親分である四球の徳次郎が江戸に来て3年目の一匹狼であることなどから,時代が天保より前であることはわかるのだが,特定するには至らなかった。
「前巷説百物語」を読んだらわかるかなぁなどと期待している(笑)

北斎の「こはだ小平二」(画像は→こちらから)がモチーフの一部であるという感じはした。

「指」が怖い!! 話の中で斬りたくなる!!

って,ちょっと考えすぎかな(笑)


時代・場所,登場人物をフリーページの京極夏彦メモ(覘き小平次)に簡単にまとめてありますので,ごらんください。
京極夏彦の他作品についての日記は,フリーページ 読了本(日本) (京極夏彦)からごらんください。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 → 京極夏彦の世界
           (↑関連トラバの集積場所)
こちらもクリックをよろしく! → 
このブログのRSSのURL →  RSS 
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

著者ホームページ大極宮

楽天ブックス


記事関連のオススメ日記
日々のあぶく(kiyu25さん)






Last updated  2007/05/27 12:17:15 AM
2007/05/06
カテゴリ:京極夏彦

京極夏彦の「今昔続百鬼-雲-」(2001)

を読んだ。

沼上君が多々良センセイ(読みは「せんせー」)について,あれこれ語る話で,「稀譚月報」の「失われた妖怪たち」が好評連載中ということから,書いているのは昭和28年6月以降だが,各短編で起きる事件はその数年前のことである。

京極堂の周りにはあやしげな人物が集まる(笑)が,「生活の基盤をもたない」という意味では,多々良,沼上のコンビがもっともあやしいのかもしれない。
2人で同じ印刷会社に住み,多々良の立場は間借り人,沼上の立場は住み込みの社員であるにもかかわらず,ときどき「数か月頑張ってアルバイト」をし,「旅」に出かけてしまうのだから……。
あやしげな常連メンバーの1人である査問委員会常連の刑事(木場のこと)も首にはなっていないし,「探偵」(榎木津)は自分の思惑とは別に大きな報酬が時々入ってくるし,古本屋(中禅寺秋彦)も熱心でないわりに大きな商いができているようだし,作家(関口)も単行本を出したし……

稀譚月報で多々良の連載が始まった(経緯は「塗仏の宴」に詳しいが,昭和28年正月に中禅寺淳子が多々良の話に興味をもったことがきっかけ)ところから始まっているので「あやしさ」はやや薄まっているが……(笑)

この本では,多々良のとんでもない発言や行動がなぜか「事件」を解決してしまうところが楽しい。
ただし,最後の事件ではそれがもとで……

岸涯小僧
昭和25年初夏に山梨で多々良が「かっぱ」との声を聞き,それが実は犬の名前だったのだが,それをきっかけに多々良は村木作左衛門という後ろ盾を得,沼上は富美という伴侶候補(予想)を得る。

泥田坊
昭和26年2月8日頃,雪の山から村に出た多々良と沼上は忌み籠りして人が家から出ない村をうろつく黒くて動きのぎこちないモノを目撃する。これは,首にナイフが刺さった被害者だった。

手の目
「泥田坊」の時点で無一文になったコンビが村木に援助を求め,駆けつけた富美がお目付けとなるのだが,群馬まで足を伸ばしてしまい,雪のせいで滞在を余儀なくされた村全体でかかわった博打のけりを沼上がつけることになる。

古庫裏婆
昭和26年秋,山形県の聖地湯殿山への入口で,沼上が殺されそうになり,多々良が痩せさせられそうになった話(笑)

インスタント即身仏の作り方の話ではあるのだが,多々良・沼上と京極堂との初めての出会いの話でもあり,「陰摩羅鬼の瑕」に登場する伊庭と京極堂・里村との出会いの話でもある。


時代・場所,登場人物,妖怪などをフリーページの京極夏彦メモ3(今昔続百鬼-雲)に簡単にまとめてありますので,ごらんください。
京極夏彦の他作品についての日記は,フリーページ 読了本(日本) (京極夏彦)からごらんください。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 → 京極夏彦の世界
           (↑関連トラバの集積場所)
こちらもクリックをよろしく! → 
このブログのRSSのURL →  RSS 
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

著者ホームページ大極宮

楽天ブックス


記事関連のオススメ日記
○o。.サスライスロウリィ。.。o○(猫柳ナツメさん)  cascade0920さん
日々のあぶく(kiyu25さん)  楽園に吼える豹(なまけいぬさん)
のぽねこさん  未来の予定~ラビ的(みっつ君)
雑記(時計2230さん)






Last updated  2007/05/06 02:19:48 AM
2007/04/06
カテゴリ:京極夏彦
京極堂シリーズ本編第6作である,

京極夏彦の「陰摩羅鬼の瑕」(2003)

を読んだ(再読)。

あまり人気のないキャラクターの関口だが,嫌いではない。
榎木津から「猿」,中禅寺から「友人ではなく知人」と呼ばれ,木場にとっては戦争中の頼りにならなく保護すべき上官である彼が,たどたどしくオタオタしながらであるが,白樺湖畔の由良伯爵邸(通称「鳥の城」)で「大活躍」する。

「大活躍」という言葉はあまりふさわしくはなさそうだが,目の見えない榎木津を重要な現場に導いて警官と格闘するきっかけを作ったり,由良伯爵と話をして謎の真相に至ったり……
最後には伊庭の家に足を運んで事件後の経過を語り,その後は雪絵と買い物に行くらしいし……

「塗仏の宴」の事件での後遺症から立ち直るきっかけが横溝正史との出会いで,しかも,横溝のほうから望んだものだったということも含めて,今回の関口には120点をあげてもよいだろう。

登場人物が比較的少ない,舞台があまり動かないなどのせいか,今回の作品はシリーズ中では「わかりやすい」ほうに入ると思う。
林羅山による「儒教の仏教への寄生説」(←maboの解釈)も,とてもおもしろくて説得力もあった。

「わかりやす」くはあるのだが,由良伯爵に与えられた世界は壮絶な世界であり,ある意味では言葉遊びの世界でもある。
鳥たちに対する伯爵の呼びかけと,婚約者である奥貫薫子との会話を改めて読み返してみると,そこに世界のズレが見事に集約されているようにも思える。

「鳥の城」を建築したのがフランス人のベルナールというところにも,織作家とベルナール学院から引き続いての「家の崩壊」を思わせる暗合があった。


PS
伊庭元刑事が京極堂を訪ねる際,出羽で起きた事件を「五年前」と回想しているのだが,「今昔続百鬼」で昭和26年の事件となっており,「陰摩羅鬼」の事件が昭和28年であること,中禅寺が古書店を始めたのが昭和25年であることなどから,「五年前(昭和23年)」ではなさそうだ。
伊庭の思い違いということにしたい。

PPS
上で「シリーズ中では「わかりやすい」ほうに入ると思う」などと書いたが,由良昂允の祖父である公篤と曾祖父である公房,その弟で,本作で登場した胤篤(公篤の弟)を養子にした公胤などが「後巷説百物語」(日記は→こちらから)に登場していた。
う~ん,京極ワールドは奥が深い!!

時代・場所,登場人物,妖怪などをフリーページの京極夏彦メモ(陰摩羅鬼の瑕)に簡単にまとめてありますので,ごらんください。
京極夏彦の他作品についての日記は,フリーページ 読了本(日本) (京極夏彦)からごらんください。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 → 京極夏彦の世界
           (↑関連トラバの集積場所)
こちらもクリックをよろしく! → 
このブログのRSSのURL →  RSS 
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

著者ホームページ大極宮

楽天ブックス


記事関連のオススメ日記
ながらにっき(danke3さん)  イーヨーのミミ(深町りなさん)
未来の予定~ラビ的(みっつ君)  楽園に吼える豹(なまけいぬさん)






Last updated  2007/04/06 01:02:25 AM
このブログでよく読まれている記事

全38件 (38件中 1-10件目)

1 2 3 4 >

PR

Category

Favorite Blog

「盲剣楼奇譚」島田… New! りぶらりさん

『犬婿入り ペルソ… ばあチャルさん

有為転変 静流2495さん
風雅 風雅1100さん
フォッカーといえば・… ベローソフさん
とりあえず知っとけ! Aokageさん
harumiffyのMiffy… harumiffyさん
日々のあぶく? kiyuさん
未定の予定~ラビ的… みっつ君さん
ちゃっちゃんの大冒険 ちゃっちゃん♪さん

Recent Posts


Copyright (c) 1997-2019 Rakuten, Inc. All Rights Reserved.