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テーマ:創作童話(818)
カテゴリ:大人の童話
立派な森のかわら版 2
「おっ、おいっ! おいっ!」
ブルブルと森のかわら版を持つ手がふるえた。 「はい、はい。もうすぐ、ご飯よ」 大慌てに慌てたチュー助をよそに、返ってくる奥さんの返事は、いたって明るい。そんな奥さんを、喜びと不安の入りまじったような顔をしたチュ―助が、まじまじと見つめた。 「おまえ、いつ、子ども生んだのだい?」 「えっ、なんですって!」 「子どもだよ、子ども! おまえが子どもを生んだなんて、ぼくはぜんぜん知らなかった」 奥さんは、チュー助がからかっているのだろうと思って、相手にしなかった。が、チュー助のほうは、それどころじゃあなかった。森のかわら版を放り出し、家中、グルリグルリと、大騒ぎで探しはじめた。 「どこにいるのだい、ぼくの子どもたちは?」 でも、子どもなんてどこにもいなかった。 「なにバカなこと言ってるんですか。あたしが子どもを生んだかどうか、あなたが一番よく知っているでしょう」 とうとう奥さんは怒ってしまった。プンプンしている。恐れをなしたチュー助は、ゆっくりと森のかわら版を持ち上げた。その陰で、だんだんと小さくなっていった。 カリカリしている奥さんをおいて、チュー助は散歩に出た。明るい森の道を歩いていった。歩きながらチュー助は考えた。確かに子ネズミが十匹生まれたと、森のかわら版には書いてあったのだが・・・。 「どうも、変だ?」 頭をフリフリ、チュー助は一人つぶやいた。 顔を上げると、木々の間から抜けるような青空が見える。
と、だれかがチュー助を呼ぶ。 フクロウのじいさんだった。はて、病気のはずだが・・・。太い枝の上で、ニコニコと元気いっぱいだ。これはおかしい。 「フクロウのじいさん!」 チュー助は思い切り叫んだ。 「なっ、なんじゃ、大きな声をだして」 チュー助の声に驚いたフクロウのじいさんは、グリグリと眼をまわした。 「フクロウのじいさん、寝てなきゃダメじゃないか」 「わしがか? そりゃまた、なんでじゃ?」 【中古】 ヘタな人生論よりイソップ物語 こんなに奥が深い“大人の童話” / 植西 聰 / 河出書房新社 [文庫]【メール便送料無料】【あす楽対応】 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2023.04.06 20:28:27
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