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テーマ:創作童話(818)
カテゴリ:大人の童話
立派な森のかわら版 3
「だって、じいさんは病人なのだよ。森のかわら版に、ちゃんと書いてあったからね。病人は寝てなくちゃいけないよ」 心配を通り越したチュー助の声は、まるで怒るような、責めるような調子だった。 「ええっ、森のかわら版にか? 知らなかった。わしが病気だったなんて。・・・そういえば頭がボーとする。そうか、わし、病気だったのか」 「じいさんは、なんていったって森で一番の知恵者だからね。これからだって、いろいろ相談にのってもらわなくちゃいけない。そのためには、元気でいてもらわなくちゃ。だって、森のかわら版にそう書いてあるからね」 「うん、うん。そうじゃった。それじゃ、さっそく、寝るとしよう」 フクロウのじいさんは、弱々しく頷いた。 こうして、フクロウのじいさんは、本当の病人になっていった。 一方、チュー助のほうは、すがすがしい気持ちだった。顔が晴れ晴れと輝いている。やっぱり、良いことはするものだと心から思った。 「こんにちは、チュー助のおじさん」 と、山道を外れた横の方から声がする。ポンポコ小学校の子ダヌキのター坊だった。 「お母さんの具合は、どうだい?」 と、チュウ助が聞くと、ター坊はニコニコしながら、恐ろしいことを云った。 「はい。実は、里のやさしい人間のおじいさんおばあさんから、ご飯をもらっているのですが、それがいいようで、近ごろ、ずいぶん元気になってきました」 「なんだって!」 チュー助の顔色が変わった。 りっぱな森のかわら版によると、この世で人間ほど、アホな生き物はいないとのことだ。 もっともチュー助は、この森のかわら版の論調には、大賛成である。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2023.04.06 20:31:00
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