001007 ランダム
 ホーム | 日記 | プロフィール 【フォローする】 【ログイン】

イベントヴェルエス

【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! --/--
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

PR

カテゴリ

カテゴリ未分類

(0)

ワンちゃんの種類

(2)

大人の童話

(5)

家庭菜園

(1)

日記/記事の投稿

プロフィール

ブークwot

ブークwot

キーワードサーチ

▼キーワード検索

コメント新着

コメントに書き込みはありません。

フリーページ

サイド自由欄

設定されていません。

カレンダー

2023.04.06
XML
テーマ:創作童話(818)
カテゴリ:大人の童話
立派な森のかわら版​​ 3​​​

「だって、じいさんは病人なのだよ。森のかわら版に、ちゃんと書いてあったからね。病人は寝てなくちゃいけないよ」

 心配を通り越したチュー助の声は、まるで怒るような、責めるような調子だった。

「ええっ、森のかわら版にか? 知らなかった。わしが病気だったなんて。・・・そういえば頭がボーとする。そうか、わし、病気だったのか」

「じいさんは、なんていったって森で一番の知恵者だからね。これからだって、いろいろ相談にのってもらわなくちゃいけない。そのためには、元気でいてもらわなくちゃ。だって、森のかわら版にそう書いてあるからね」

「うん、うん。そうじゃった。それじゃ、さっそく、寝るとしよう」

 フクロウのじいさんは、弱々しく頷いた。

変だなぁと思いながら、ベッドに入った。でも、りっぱな森のかわら版にそう書いてあるのだから、きっと自分は病気なのに違いない。

そう思って横になってみると、なるほどそんな気がしてくる。森のかわら版にウソはない。あるはずがない。


 こうして、フクロウのじいさんは、本当の病人になっていった。

 一方、チュー助のほうは、すがすがしい気持ちだった。顔が晴れ晴れと輝いている。やっぱり、良いことはするものだと心から思った。

「こんにちは、チュー助のおじさん」

と、山道を外れた横の方から声がする。ポンポコ小学校の子ダヌキのター坊だった。
お母さんタヌキのため、煎じて飲ませる薬草をとっているところだったが、その手を休めて、ペコンとチュウ助にあいさつした。

ター坊のお母さんは、このところカラダの具合をこわして、床に伏せっていたのだ。

「お母さんの具合は、どうだい?」

と、チュウ助が聞くと、ター坊はニコニコしながら、恐ろしいことを云った。

「はい。実は、里のやさしい人間のおじいさんおばあさんから、ご飯をもらっているのですが、それがいいようで、近ごろ、ずいぶん元気になってきました」

「なんだって!」

 チュー助の顔色が変わった。

 りっぱな森のかわら版によると、この世で人間ほど、アホな生き物はいないとのことだ。

なぜって、人間は、自分たちの暮らしをよくしようとして、かえって自分たちのすみかをせっせとこわしている、というのだ。

自分たちがバカでかい機械でもって山をけずっておいて、それでもって、やれ緑が無くなったとか、自分たちでさんざん汚しておいて、やれ川が汚くなったとかいって嘆いている。

そんなに緑が好きなら、山をけずらなければいい。

木を切りさえしなければ、緑なんぞ腐るほどある。きれいな川がよければ、汚さなければ川はいつもきれいなままだ。

そんな簡単なことがまるっきり分からないのが、人間というアホな生き物である。こんなアホとはつき合ってはいけない。なぜなら、こちらまでアホになってしまうからだ、と森のかわら版はたいへんきびしい。

 もっともチュー助は、この森のかわら版の論調には、大賛成である。
結論するに、やはり人間とは、アホな生き物であるというのはまったく正しいと思っている。
つづく


松竹新喜劇 藤山寛美 大人の童話 [DVD]






お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  2023.04.06 20:31:00
コメント(0) | コメントを書く
[大人の童話] カテゴリの最新記事



© Rakuten Group, Inc.
X