|
カテゴリ:熱闘広辞苑
こないだ電車に乗ったときのこと。
座席に座っていたとあるおじさんが、文庫本を熱心に(というか、目の高さに持ってきて読んでいたのでそう見えた)読んでらっしゃいました。 何読んではるんやろう、と表紙を見たらコレ↓ですよ。 ・・・おじさん・・・多分40代ではない、50代くらいであろうおじさん。 ・・・おじさん・・・多分ウチの父親よりかは、若干若いであろうおじさん。 なぜにこの本??? とまあ、余計なお世話や!と言われそうなことを疑問に思っていたわけですが。 きっと会社の若い女性(私達の年代)が自分の部下にうじゃうじゃいて、彼女らのことを理解できないのでとりあえず勉強してみようかという気にもなったんでしょうか。 全くの無責任な想像ですけど。 あれを読んだところで、あのおじさんが本の内容とか本に出てくるような女性のことを理解できたのかどうかも甚だ疑問ですけど。 ま、それほどインパクトあったんですよ、おじさんがこの本↑を読むって。 しかし、それ以上にびっくりしたのが おじさん・・・鉛筆で線引きまくり>本の中に ・・・いや、私も鉛筆で本に書き込みしますよ。 受験生の頃だって、大事だと思った箇所には線を引いたり、ぐりぐり丸で囲んだりしましたし。 去年の愛読書『電話帳』なんて、線ひいとかないと大事なところがどこかわからんし(←ポイントが掴めてなかったらこの線も意味はなくなるのだが)、何より「線を引く」という作業をしないと起きてられませんよ、あーた。 でも、そのおじさんの線の引き方は尋常ではない。 どれくらいの頻度かと言うと・・・試しに近くにある本で例示してみましょう。 えーっとさっき借りてきた本ですけどね。 (↑未読なのでネタバレ厳禁) この本の10頁目から抜粋して例示してみます。(太字になっているところは二重線が引かれていた、とお考え下さい) 車内で喫煙を控えていた火村は、さっそくキャメルに火を点けながらあたりを見渡す。今日の助教授のいでたちは、黒っぽいジャケットにパール・ホワイトのシャツ。殺人現場に白いジャケットで参上するくせに、休暇になると地味だ。わけが判らない。 きょろきょろしていると、漁具収納小屋らしきものの前にいたくわえ煙草に長靴履きの老人が一人、おもむろにこちらに歩いてきた。磯焼けした海の男で、タオルで鉢巻きをしている。 「あんたら、乗るか?」 (有栖川有栖『乱鴉の島』 新潮社刊より) まあ、こんなかんじですわ。 まるで「『火村』を説明する表現を文中から抜き出せ。」という国語の試験に備えるかのような気合の入れようです。 しかも、私が目撃したおじさんの場合、ただのエッセーに、ですよ。 もしかしたら将来、『負け犬の遠吠え』が中学校だか高校の国語の教科書に登場する日もあるかもしれませんが、だからといって、定年も近いであろうおじさんはそんなものに備えなくてもいいんですよ。 と、私はそこではたと思いつきました。 これって、本を読むためのテクニック???? というわけで、Googleで「読書 線を引く」と入力して私の考えを裏付けるような情報が得られないものかと検索してみました。 すると、出てきた出てきた。 どれどれ。 線を引くと得るものが増える。 ふむふむ。 線を引いたら、中身をちゃんと読むクセがつく。 へー。 本は汚して読め。 ・・・そうなん? やっぱりこういう読書テクニックってあるのねえ。 中には「万年筆で線を引いたら、すべりが良くて・・・」という人もいるそうで。 ・・・そういえば、ダラム時代のコースメートですごいのがおったな。 イタリア人のA。 彼のCompetition Lawのテキストの紙面は真っ黒。 重要な文章に、重要な用語に、というレベルではなく、片っ端から鉛筆で(しかも2Bとか濃い系のもの)で線を引いている。 こんなに線を引いているとどこが大事かわからんやん、と思いつつ 「それ、全部頭に入ってるの?」と驚いた顔で聞くと、 「いや。そうじゃなくて、これが俺の読み方。」 なんだそうで。 なるほどねー。 やっぱりそういうテクニックってあるんやー。 まあ、そういうテクニックって全ての人にいい、というわけではなく、やっぱり向き不向き、好き嫌いの問題ですよねー。 私などは、エッセーはかるーくささっと読んでがはがは笑って終わりってパターンなんで、線を引く気合はないですわ。 そんな私なので、あの電車の中で『負け犬の遠吠え』に立ち向かい、一生懸命線を引いていたおじさんの印象が一層強烈だったわけなのです。 第19回:「て:テクニック」 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2006/11/16 03:37:58 PM
|