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夢追人~Doremarz~

夢追人~Doremarz~

どこでもドア

使用頻度の高い道具、どこでもドア。希望する行き先を告げて(何も告げないことも多い)ドアを開ければ即、目的地である。これほど便利な道具がある未来の世界は、さぞ暮らしやすいだろう。

◆どこでもドアとは?

ドアノブに内蔵されている意志読み取りセンサーが、使用者の思念を瞬時に読み取ってコンピュータに伝達。それを解析して具体的な行き先を認識したら地図データベースにアクセス、空間座標決定機により目的地の座標が設定される。そして空間歪曲装置を作動させて空間を曲げ、隣接した現在地点と目標地点の2地点間を移動する、という仕組みではなかろうか。空間跳躍の方法は他にもあるので、それらを紹介しよう。

ワームホール

ワームホールとは、通常の時空間に空いた虫食い穴のようなもので、時空内の離れた領域を繋ぐトンネルのこと。ワームホールの中は時空が極端に歪み、時空の距離がほとんど0になるため、離れた場所へ瞬時に移動することが可能。偽の真空からインフレーションを通じて、もしくは量子の泡の中からワームホールを取り出してエキゾチックな物質(*1)によりマクロサイズに拡張し、どこでもドアに接続。

(*1・負の平均エネルギー密度を持つ物質であり、斥力を生み出す性質を帯びている。この物質でワームホールを支えなければ、トンネルが開いた状態を保つことはできない)

超ひも理論

別次元を利用して空間を跳躍しようとする考えがある。そこで登場するのが、超ひも理論。これは、全ての粒子はひも(10の-33乗cmのプランク長さ)の様々な振動状態であると捉える理論であり、4つの力(強い力・弱い力・電磁力・重力)を統一的に理解しようとする試みのひとつである。

この理論が無矛盾であるためには、10次元の時空間で定式化することが必要だという。つまり、通常の4次元時空では整合性のある理論はつくれないのだ。では、余分な次元はどうなっているのか。

宇宙の膨張とともに折り畳まれて(コンパクト化)小さな領域に閉じ込められてしまい、観測不可能になったと考えられている。この理論が真に特徴を見せるのは、エネルギーが10の19乗ギガ電子ボルトの領域なので、現在の科学技術では検証実験を行えないようである。作品世界では、プランクエネルギーを利用することは容易となっているだろう。

ツイスター

イギリスの数学者ロジャー・ペンローズが提唱する量子重力理論。光の幾何学を複素数に拡張して、相対論と量子論を統一しようという試み。ツイスターとは、ドーナツ状の光の渦巻きであり、スピノール(2乗すると大きさゼロのベクトルになるような数学的物体)をもとにしている。

ペンローズ宇宙は、4つの複素数(各々が実数部と虚数部から成る)で記述されるので8次元としている。その8次元宇宙の基本的な実在がツイスターである。我々の観測している宇宙は、高次元の「より本物らしい世界」の3次元的な影で、ツイスターによって高次元から3次元の存在に伝えられるのだという。

ツイスター宇宙の少しの歪みは、我々の知覚する宇宙の力となって現れるが、強い歪みは我々の知覚する時空の一部を抹消してしまう。つまり、8次元のツイスター空間を適当に歪めれば、現空間における非連続的な移動が可能になるのである。

◆どこでもドアのある世界

便利などこでもドアだが、犯罪対策はどうなっているのだろうか? ドアを使った犯罪が多ければ、
「未来の世界は、どこでもドアを使用した犯罪が多発しているんだ。」

などと、ドラえもんがのび太に愚痴をこぼすシーンがあってもおかしくはないのだが、そのようなことは一言も語られていないので、どこでもドアによる犯罪はほとんどないと考えるべきか(現代では静香が、のび太の不法侵入によって迷惑を被っているが)。

空間制御が確立されている22世紀のどこでもドアセキュリティ対策は、20世紀とは異なり万全なものだろう。ある場所にどこでもドアによる不法侵入を試みた場合、空間の歪みを検知すると同時にその領域にバリアのようなものが張られ、侵入を未然に阻止するシステムになっていると推察される。

しかし、その万全なセキュリティは、どうやら裏目に出ているようだ。コミックス11巻末で紹介されている22世紀トーキョーの図で、人々がパイプウェーを使って建物間を移動している姿を見ることができるのだが、どこでもドアがあればそのようなものは必要ないはず。やはり、利便性と危険性は相反しがちなのである。


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