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テーマ:連載戯曲(36)
カテゴリ:Space
Ver.00
暗闇の中、幾つかの声が時に混じり合い響き渡る 暗闇の中にうっすらと人影が見える 人影はやがて3つに分れる 謎の声 私は廊下を歩いている。長くて細い廊下を、足を忍ばせゆっくり歩いている。右にも左にも幾つものドアが並び、全てのドアはこちらからは開かない。 私は廊下を歩いている。後ろをついてくる足音も聞こえるが、それは相も変わらずいつものコト。私の歩幅に合わせて、私の歩調に合わせて。 私は廊下を歩いている。ただゆっくりと、足を忍ばせ、ただゆっくりと。 「あなたはそこにいますか?」 「私はここにいます」 「私はそこにいますか?」 「あなたはここにいます」 私は廊下を歩いている。天井の蛍光灯は遙か前に切れたモノともうすぐ切れるモノだけ。かすかに点滅を続ける、その光にいらつきを感じながら、ゆっくりとただゆっくりと。 「ドアは決して開けてはいけない」 「ドアを開けなければ決して先には進めない」 「でもドアはこちらからは開かない」 「大丈夫、私が開けるから」 「大丈夫、ドアはあなたが開けるから」 私は廊下を歩いている。誰にも気付かれないように。でも立ち止まれない。足を止めて休憩しようと思った瞬間、私の左足は私の右足を越えて行く。 「あなたはドアの先に何があるのか知っているのか?」 「私はドアの先に何があるのか知らない」 「あなたはドアの先に何もないと分かっても歩き続けるの?」 「ドアの先に何かなんてあるはずないじゃない」 「ドアの先には何もない?」 「ドアの先には何もない?」 「ドアの先には何もない」 私は廊下を歩いている。開かないドアを開けたいと願い、開かないドアを開けようと挑み、開かないドアを開かないと思い、ノブに手をかける 「開いたドアにただ入ればいいんだ」 「ドアは開くの?」 「ドアは開いたと同時に閉まるよ」 「ドアは閉まるの」 「閉まったドアは、多分もう開かないよ」 「ドアは待っていても開かない」 「ドアは願っていても開かない」 「ドアは信じていても開かない」 私は廊下を歩いている。後ろをついてくる足音が、時にとぎれても私には興味の無いこと。 「付いてきてるのは誰?」 「振り向いてはいけない」 「私の後ろを付いてきているのは誰?」 「決して振り向いてはいけない」 「後ろに付いてきているのは・・・・・」 「私」 「私の手を掴むのは・・・」 「私の足を掴むのは・・・」 「・・・私の首を絞めるのは・・・」 「・・・・・私。」 人影の先のドアが開き、強い光が包み込む 人影が再び、1つに戻る ver.00 終了 やる気変動アイテム使用中!!一日一回ランキングを確認されたし・・・。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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