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カテゴリ:ロビンスメモリアル
この時、イギリスでなんとも言えない失望感にさいなまれていた私は早急に自分の国に帰りたい、と思いました。イギリスにいるのですからヨーロッパ旅行など思いのままのはず、どうしてそんなに早く帰りたいのか、2日、3日、を待つことが出来ませんでした。急遽、現地でキャセイパシフィックの片道切符を求めて香港経由で帰国しました。それも関空でなく成田着。東京駅に着けばもう新幹線も何もなく、唯一の残された手段東京~大阪間の深夜バスにて大阪に帰りました。 自宅マンションに着くと、玄関の土間には彼の糞便と猫のドライフードが一面に散らばり、廊下には点々と血の跡が……。
彼は一番奥の部屋の私の机の下に隠れるようにいました。もともと表情の豊かな猫でしたが、この時は怯えているように見えました。名前を呼ぶとそっと伺った後、のそのそと机の下から、出てきました。それも普段の彼にはない振る舞いでした。玄関にはドライフードが一面に散らばっていましたが、それは私がいつも彼に与えているものではありませんでした。からからに乾いて、干からびたエサの残っている彼のお皿をとりあえず洗い、新しい猫缶をあけ、ドライフードもいつものものを入れてやると、彼に似つかわしくなく、餓鬼の様に食べました。明らかに、何日かの間、食べ物を全く与えられていなかった事は確かでした。 彼が口をきくことが出来ればおきた事を訴える事が出来るのでしょうが、悲しいかな猫。 何も私に教えてくれません。せめて自分で自分を早く帰って来て良かった、と納得させるぐらいの事しか出来ませんでした。大慌てで世話を依頼していた女性の家に駆けつけました。すると彼女の顔には大きなガーゼに絆創膏。そしてロビンスにされた、と……。 顔に怪我を負った彼女に気の毒で、怒らせるようなことは口に出来ませんでしたが、状況にいくつか納得のできない事がありました。 まず、異常な体重のゆえに(当時約10kg)猫の癖に高い所に飛び上がる事の出来ない彼でした。食卓に飛び乗る時でも、椅子をワンクッションにようやくテーブルに……。テーブルの上に飛び上がられる事がイヤだった私が椅子を交わすと床で何度も必死で弾みをつけてそれでも自信がないのか、なかなか踏み切れず。その必死の姿はいつも部屋を訪問していた同僚の笑いの的でした。そんな彼が床から顔の高さまで飛び上がり、顔を引っ掻く事など到底出来ないはずでした。 加えて、仕事柄留守が多かった私は一晩留守にするときでさえも、いつも誰かに見回ってくれるように頼んでいました。前にも書いたように同僚が入り浸っていた状況でしたので、いつも誰かしらが快く、彼を見回り、新しい猫缶を与えてくれていました。そしてそれまでにそんな被害にあった人は全くいませんでした。唯、数日の留守になる時には、 「彼が寂しがって足にまとわりついてくる。」 とか、 「帰ろうとすると足をあま噛みされた。」 と言うコメントは聞くことがありました。しかし彼女が言ったような 「彼がきちがいの様になって私に向かって飛びかかって来た。」 と言ったコメントは聞いた事がありませんでした。私の推測は私の忠告を無視して彼に触ろうとあるいは抱こうとしたのではないか、と言うことでした。若し彼女がロビンスを抱いていたとしたら……。その位置からであれば彼の非常に貧しい跳躍力でも顔を引っ掻くことは可能ですし、最も被害を受けそうな場所でした。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2006年09月03日 08時40分07秒
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