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熱帯魚のための濾過の知識

熱帯魚のため(だけ)の濾過の知識




生物濾過

熱帯魚は自分で自分の住む環境を汚しながら生きています。生物ならあたりまえのことですが、 糞をするわけです。問題は、その分泌物から発生したアンモニアが強い毒性を持ち、しかも 非常に水に溶けやすいと言うことです。
アンモニアは常態では気体ですので、水中に発生したアンモニアは水面から放散しそうなものですが、 アンモニアの吸収係数が非常に高く、かつPH7以下の酸性状態では殆んど(99%以上)がアンモニウムイオン (NH4+)の形態で存在するため、実際には殆んど放散しません。
一般的な水槽はPH7以下の弱酸性で管理していることが多いと思いますので、水槽内に排泄された アンモニアはそのままでは、殆んど全てアンモニウムイオンの状態で水槽水に溶解していると考えて 差し支えないでしょう。
蛋白質代謝の最終産物であるアンモニアは生体にとって猛毒であり、直ちに体外に排出する必要があります。 一般に、陸棲の生物は毒性の少ない尿素や尿酸に変換して尿として排泄するのですが、水生の生物、 しかも硬骨魚類(熱帯魚も含む)は、大半(60%~90%)をアンモニアのまま放出してしまいます。
よって、水槽中にはアンモニウムイオンがどんどん蓄積していき、熱帯魚が住めない猛毒の水に なってしまうわけです。

これを解決するのが、俗に濾過細菌と呼ばれる細菌です。
化学合成無機酸化独立栄養好気性細菌である 「アンモニア酸化菌(亜硝酸菌)」 (Nitrosomonas:ニトロソモナス属等)や、「亜硝酸酸化菌(硝酸菌)」 (Nitrobacter:ニトロバクター属等)が猛毒のアンモニアを比較的無害な硝酸に変換するわけです。

まず亜硝酸菌が、呼吸によりアンモニアを酸化し亜硝酸イオンを生成します。
そして、硝酸菌が、亜硝酸イオンを呼吸基質として取り込み、酸化して硝酸イオンを生成します。
還元されるのはいずれも遊離酸素ですので、水を生成します。
この菌はお互いに共生に近い形で繁殖し、結果としてアンモニアを硝酸イオンに変えることから、 総称して 「硝化菌」 と呼ばれます。 この両属は共にニトロバクター科に属するグラム陰性の桿菌で、化学合成独立栄養細菌に共通する 特徴として、エネルギー源及び炭素源としては無機物のみを利用し、とりわけ無機エネルギー源に 対する特異性は高く、被酸化物質としてのアンモニアや亜硝酸イオンの存在がなければ生育出来ません。
両属とも生育速度は遅く、亜硝酸菌の最少世代時間は1日強、硝酸菌の最少世代時間は2日強という例が 報告されています。このため、初期の水槽の立ち上げに数日から数週間の日数が必要になるのは 分かって頂けると思います。ただし、基質としてのアンモニアが無ければ増殖出来ないことを 忘れてはなりません。何も入っていない単なる水の入った水槽を数日間放置していても、バクテリアは 繁殖しない訳です。
初めて水槽をセットするときに限り、生物濾過を担うバクテリアの発生を早める目的で、 市販されているバクテリアの元と呼ばれる商品は、ある程度有効であるといえますが、 それ以後は、逆に今まで順調に増殖してきたバクテリアのバランスを台無しにし、 全く必要がないどころか、逆効果であることがお分かり頂けると思います。
また、せっかく出来上がった濾材を水道水などで洗浄してしまうと、水道水に含まれる 残留塩素によって、これらのバクテリアが死滅してしまう様な事態も起こりうるため、 「掃除したら逆に調子が悪くなった」と言う事態に陥るわけです。
さて、亜硝酸菌の呼吸により生成されるのは亜硝酸イオンと水だけではありません、 水素イオンも発生します。
この水素イオンだけは亜硝酸菌・硝酸菌の反応でも取り残されてしまい、水槽内にたまってゆきます。 これによって、水槽の水のPHがだんだんと酸性に傾いていくと言う現象が理解できたと思います。


還元濾過

「生物濾過」の項目で説明したのは、好気性細菌による酸化が基本となる濾過ですが、 この濾過の最終形である硝酸イオンは、濾過の第1段階で存在したアンモニアに比べれば 毒性は低いものの魚にとって有毒である事には変わりありません。自然界と同じ濾過システムである 生物濾過の最終段階であるはずの硝酸イオンが現実には水槽内のように蓄積されないのは なぜでしょうか?端的に言えば、天然の環境では、還元濾過と言われる第2段階の 濾過が行われているからです。
これは、嫌気細菌と言われる分子状酸素(O2)の存在下では生存できないか、 生存しにくい細菌の働きで硝酸イオンを窒素ガスとして空気中に放散してしまう反応の事を言います。

一口に嫌気性細菌と言っても沢山の種類があり、酸素の存在下では発育できない偏性嫌気性菌 であるClostridium:クロジストリウム族や古細菌に分類されるMethanobacteriales:メタン細菌 などがよく知られています。
嫌気性細菌によって好気性細菌の生成した細胞物質などが分解され、二酸化炭素、水素、アンモニア、 有機酸やアルコールなどが生成されます。これらの生産物は硫酸塩還元細菌やメタン細菌によって 嫌気的に酸化され、硫化水素や酢酸となります。硫化水素は光合成細菌である紅色硫黄細菌や 緑色硫黄細菌により還元剤として使用されます。二酸化炭素を同化して細胞物質を作るわけです。
酢酸は紅色非硫黄細菌(ロドスピリルム科など)が使用します。一方、メタン細菌によってできた メタンガスや二酸化炭素は、嫌気性環境の圏外に排出され、放散したり、好気性細菌や嫌気性細菌に 取り込まれたりするわけです。
この窒素固定は嫌気的条件下でのみ行われ、好気的条件下では行われません。
一般的な水槽内で嫌気性環境を作るのは難しいため、嫌気濾過はあまり一般的に使用されて居ない 事が理解できると思います。


このように、生物濾過には科学的な根拠があるのですが、アクアリウム業界には、何故かオカルト的な商品や、民間療法を薦める人が居ます。
それで効果があれば問題無いのですが、逆効果だったりする事もよくあります。
結局は趣味の世界ですので、自分が納得できるものを選択することが一番です。
このページに書いた事が、その判断の助けになれば・・・


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