We're Not Gonna Take It

2006/02/21(火)20:55

力道山

映画レビュー(53)

3月4日より全国公開される「力道山」を見た。 日本プロレス界を作り上げた伝説の男、力道山。 相撲取り時代から、酒の席で刺されて死ぬまでの、短くも太い一生を描いた作品。 韓国籍でありながら、日本での成功を手に入れるために日本人として振舞った人間と言う認識のためか、韓国本国での興行成績は今一だったらしいが、日本には未だに多くのファンが居る氏のことだから、そこそこブレイクするだろう。 なぜ国籍を隠していたのかと言う根底のトラウマの意味も、この映画を見ればよく分ると言うもの。 と言うか、力道山が(後に日本国籍を取得するが)韓国籍だと言う事を知らない人が結構居ると言う所に軽いショックを受ける。 さらに言えば「力道山って誰?」と言う人も大量に居たり。ジェネレーションギャップだ。 力道山に関しては人それぞれ違ったイメージを持っていると思うが、俺的には猪木寛至+馬場正平と言うイメージを持っていた。策士であり、優れた興行師であり、イメージ戦略を上手に使えるカリスマを持った男だと。 少なくともそういうイメージを持っていた俺の期待は裏切らない出来だったと言える。 力道山役に「シルミド/SILMIDO」のソル・ギョング。力道山の妻あや役に中谷美紀。 そして、その他に船木誠勝、秋山準、橋本真也、武藤敬司、モハメド・ヨネ、リック・スタイナー等の本職のプロレスラーが多数出演している。 ちなみに橋本は第40代横綱東富士(作品中では東浪)役。橋本・・・なぜ死んだ(T-T) ソル・ギョングの日本語は力道山ほど上手くは無いが、韓国籍を隠して日本人として生きる男を象徴するには、あのくらいの日本語が良いのかも知れない。 正直、劇団一人のコントを思い出すので嫌なのだが。 演技については特に感想も無いが、プロレスの動きを結構上手に表現してると思った。全編日本語のセリフと言い、力道山の身体(元力士のレスラーの身体)を作っている事と言い、プロなんだなと思う。 でも、いきなり一番最初の興行がシャープ兄弟戦だったり、百田光浩の名が一度も出てこなかったりと史実を歪曲している所が所々気になるし、木村政彦が井村まさひこだったり、二所ノ関部屋が二所ノ山部屋だったりと日本側の名前がパチもん臭い名前に変えられて居たりするのも、「事実を元に再構成された」と銘打っている映画にしてはお粗末と言わざるを得ない。 日本側との意思疎通と言うかマーケティングと言うか、名前を使用する事について承諾を取る位やってくれないと。 特に木村政彦の名前が変わっていたりする部分は、わりと重要な部分だと思うんだが・・・大木金太郎ですらキム・イルと言う本名で出てるのに。韓国方面の名前だけまともで、日本方面だけ違うので違和感倍増だ。 しかし、そんな不満はあるものの、大筋で力道山の生き方や苦悩を上手く表現してると思うし、かなり美化されているところはあるものの、良い出来の映画だと思う。 格闘技ブームの裏で桧舞台に現れる事の少ないプロレス。 現在、日本マット界には、ムーブメントを作り出す事の出来る人が必要なのではないかと思わせる映画だった。

続きを読む

総合記事ランキング

もっと見る