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会社を辞めて旅に出た ~いつのまにか雲南定住~

会社を辞めて旅に出た ~いつのまにか雲南定住~

ランテパオ周辺を歩く

ランテパオ周辺を歩く

ケテケスの伝統家屋
ケテケス村の伝統的トコナンハウス。屋根は竹を並べて作られている。
 タナトラジャは盛大な葬儀以外にもいろいろと見所が多い(*1)。舟形をした屋根の古いトコナンハウスがいくつも残っていることで有名なケテケス。ただし、今では観光用の残されているだけで実際には使われてはいないのが残念だ。村の背後の崖には、かなり古い木製の棺が、幾つも張り付くように置かれている。その棺には水牛(トラジャ族の富の象徴)の装飾が施されていたり、トコナンハウスの屋根の形をしたものがあった。きっと、これらの棺の主達は盛大な葬儀をしてもらった後、村人達に運ばれ、この崖に安置されたのだろう。いわばこの崖は墓地というところか。

レモのお墓群
レモ村の背後にある崖には、タウタウ人形を伴った先祖を祀る棺が納められている。
タウタウ人形
タウタウ人形は崖のバルコニーから村を眺めているようだ。
 レモの村は、先祖を埋葬している崖に、タウタウ人形が置かれていることで有名だ。ガイドブックにもよくここの崖とそこに置かれているタウタウ人形の写真が載っている。私の持っていたロンプラ(*2)にも、堂々、1ページカラー写真となっている。そんなわけで行く前、かなり期待が高かった。だが、実際着いてみると、畑の端にちょっとした崖があり、そこにこぢんまりとタウタウ人形が置かれているといった様子。はっきり言ってちょっとばかり拍子抜けだったが、それは奇観であることには違いなく、よく見てみるとタウタウ人形はそれぞれ特徴があり結構興味深い。どうもガイドブックの写真は想像を随分と高める効果があるようで、実物を目にしたときガッカリすることが多いようだ。特にレモの写真は。ここには観光客も結構訪れるようで(と言ってもスラウェシ島自体少ないほうだけれど)、土産物屋が10軒ほどあり、売り子が気だるそうに旅行者に声をかけていた。彼ら売り子の旅行者への呼びかけは、あくまで控えめで、個人的にはなかなか好感が持てた。でも、店に並べているものはどこも同じで、ミニチュアタウタウ人形とトラジャ族の伝統文様の木彫り、それと織物といったところで、心に揺さぶりをかけてくるようなコレといったものは見当たらない。まあ当然か。

 レモから2キロほどランテパオに戻り脇道に入っていくとロンダの村がある。ここはケテケスの崖のお墓とレモのタウタウ人形を足して、3で割った感じ。要するにケテケスにもレモにも見劣りがするというのが私の正直な印象だ。ただ、ここの崖には洞窟があり、多くの棺が納められているとのこと。頭蓋骨等の遺骨もその辺に転がっているらしい。墓ばかり見るのもどうかなと思い、結局、私は洞窟の中には入らなかった。というか、ランプの貸し出し及び中のガイド料が別途いるという、現実的な問題のせいかもしれない・・・。

バトゥトゥモンガの棚田
バトゥトゥモンガの美しい棚田。鮮やかな緑色が目に染みる。
 私にとって、これらの代表的観光スポットよりも、ぶらりとベモ(乗り合いミニバン)に乗って出かけたバトゥトゥモンガ(*2)とその背後にそびえるセセアン山トレッキングの方が強く印象に残っている。バトゥトゥモンガはセセアン山(標高2150m)の山麓にあり、棚田とそのあちこちに点在する大きな岩が美しい。また、見晴らしの良いレストランからはランテパオを一望できる雄大な眺めを堪能できる。私も、その見晴らしの良いレストランでビールを1本飲み昼食を食べていたら、スイス人旅行者とそのガイド、ドライバーがやって来た。そのドライバーと話をしてみたら、背後のセセアン山にはここから1時間くらいで登れると教えてくれた。心が動かされる。ビールを1本飲んでしまったが、まあいいだろう。セセアン山頂まで行ってみることに決める。

 途中、民家を2、3軒通り、コーヒー畑の小道を歩いて尾根まで上った。山頂までの道に迷わないか少し不安があったが、尾根まで上がってしまえばあとは見晴らしがきくので迷うことはなさそう。ただ、太陽が真上から強烈に照らしていて、皮膚から汗が吹き出してくる。先ほどのビールの酔いもまだ少し残っている。それでも、ここまで来たのだからと思い更に進んでいく。山頂付近に近づくとそこには先客が数人いた。いずれもインドネシア人でもう3日くらいここで過ごしているとのこと。確かに岩陰にはテントが見えた。インドネシア人でもトレッキングを楽しむのだなと感心していたら、その楽しみ方がちょっと違うようだ。なんと、ラジカセやギターを持って来ている。こればかりはどうも理解できない。彼らと10分ばかり話した後、山頂に行ってぼんやりと下の景色を眺めたりして、ゆっくりとした時間が流れるのを楽しんだ。1時間ばかり山頂にいただろうか。下方から続々とインドネシア人が集団で上ってくるのが見えたので、そろそろ降りることにした。途中彼らとすれ違うと、彼らは高校生のグループで、なんと50人くらいもいる。今晩は山頂付近にテントをはって泊まるそうだ。なんかよく分からないが、このセセアン山はインドネシア人の間では人気の山らしい。山頂から昼食をしたレストランまでは30分強で到着。ベモの通る道路まで出たら、ちょうどインドネシア人のオバチャンが前方から歩いてきたので、ランテパオまでの近道を尋ねた。すると、ついて来いというので、彼女の横を一緒に路上を歩き、それからすぐに道路脇の人ひとりが通れるほどの小さな山道を下り始めた。そのオバチャンの下るスピードは恐ろしく速い。彼女は10キロ位はありそうな草を、額から背中に提げた籠の中に入れて運んでいるというのに。しかも、彼女は裸足だ。私はというと、ちゃんとしたトレッキングブーツを履いているのに彼女についていくのがやっとだ。全くたいしたもんである。しまいには、情けないかな、私の方が膝を痛めてしまった。そんなこともあり、ベモが通る道路にまた出たところでベモを待ち、ランテパオまで引き返したのだった。

 ホテルに着く直前から雨がポツリ、ポツリと落ちだして、着いた頃には土砂降りに変わっていた。もう少し帰るのが遅かったならば、ずぶ濡れになっていたことだろう。そんな安堵の気持ちで部屋に入ると疲れがどっと押し寄せ、横になると知らぬ間に眠り入り、そのまま朝まで寝てしまった。


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*1 これらの観光スポットはランテパオ中心部から10キロ以内なので、ベモと徒歩で手軽に訪れることができる。いずれも入場料として10,000ルピアだった(2002年夏)。

*2 LONELY PLANET、バックパッカーの間では有名なガイドブックの出版社。英語だけれども情報量が多く、比較的詳細な地図が使える。国立公園等の自然観察に関する情報も、このガイドがベスト。というかこれ以外は全くお粗末なもの。ただ、レストランの項目は、欧米人ツーリスト・テイストの店が殆どで、こればかりはオススメできない。でも、そこに結構ページがさかれているんだなあ・・・。

   *3 バトゥトゥモンガは気に入り、その後レンタルバイクを借りて日帰りで出かけた。ベモはあまり本数がないので、レンタルバイクを利用したほうがオススメ。途中の景色も美しいので寄り道もできるのが良い。レンタルバイクは1日40,000ルピアだった(当時のレートで約560円)。



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