新たな炭水化物に注目した食事療法「カーボカウント」の活用法
さまざまなタイプの作用機序を持つ医薬品が開発されているのもかかわらず、なかなか病人数の減少が見られない糖尿病。2016年の国民健康・栄養調査(厚生労働省)によれば、糖尿病が強く疑われる患者数(20歳以上)は初めて推計1000万人を超え、その後も1000万を超えたまま、今もなお増え続けているのが実績です。生活習慣病の代表でもある糖尿病は、食事療法や運動療法が対策の基本として位置付けられています。中でも食事療法は、時代の流れとともに大きな変遷を重ねており、炭水化物を厳重に制限した時代から、炭水化物の制限を緩和した時代、そして食品交換表を使って栄養バランスを考える時代へと移り変わり、近年では、「カーボカウント」という手法が見いだせれてきています。カーボカウントとは、食事中の炭水化物に注目し、食材に含まれる糖質量を把握することで、食後血糖値の管理を行う糖尿病の食事療法のことです。従来の食事療法と異なる点は、カウントした糖質(カーボ)の量とインスリンの投与量が連動している点で、どのくらい食べればどのくらいのインスリンが必要になるかを具体的に把握することによって、良好な血統コントロールを目指すものです。糖尿病患者に対してインスリン投与による治療が実用的になったのは1922年のこと。それまでは、厳しく炭水化物を制限する食事療法が主流でした。その後、イギリスの研究者によって、食事から得られる栄養素を炭水化物・脂質・タンパク質に分けた上で、各々の摂取量を調整する食事療法が提唱され、それがカーボカウントの起源といわれています。このカーボカウントは、「基礎」と「応用」に分類され、基礎カーボカウントは炭水化物を含む食品を同定し、炭水化物の摂取量を一定量にすることで食後の高血圧を予防する方法で、糖尿病(1型・2型)の病人に限らず、食事療法のみの人、あるいは内服薬や一定量のインスリンで治療している人が対象となります。一方の応用カーボカウントは、摂取する炭水化物の量に合わせ、超即効型インスリン(より速い血統降下作用を示すインスリン製剤)の投与量を都度調節する方法で、強化インスリン療法を行う人が対象です。〇基礎カーボカウント三大栄養素の一つである炭水化物は、消化吸収されてから2時間以内に食後血糖値として反映されることが知られています。炭水化物のうち、ほとんどの食物繊維は、人の体内で消化吸収されないことから、食後の血糖値を管理する上では、食品中の糖質(炭水化物ー食物繊維)の量をカウントすることが必要ということになります。基礎カーボカウントでは、1日に必要な適正糖質量を決め、それを3食に分けて食べることで食後血糖値の上昇を一定に保ち、血統コントロールを図ります。1日の適正糖質量は、以下の式で、1日の指示エネルギー量(標準体重×作業強度で算出)に基づいて計算します。*作業強度(身体活動量)の目安=標準体重1㎏あたり=●やや低い(デスクワーク中心):25~30Kcal●適度 (立ち仕事中心 ):30~35Kcal●高い (力仕事中心 ):35Kcal~★ 適正糖質量(g)=指示エネルギー量(Kcal)×0.50~0.60÷4(Kcal) ★例えば、身長165cm(標準体重:59,9kg)で、デスクワークが中心の人や主婦の場合(作業強度:25~30kcal/kg)、必要なエネルギー量(指示エネルギー量)は、約1800Kcal(59,9kg×30kcal/kg)となり、1日の適正な糖質量は225~270gということになります。そして、「糖質10g=1カーボ」としてカウントし、1日22,5~27カーボ、すなわち1食7,5~9カーボの範囲内で、炭水化物を摂るようにすることで、食後の高血糖を防止することができるというわけです。では、日頃の食卓に上る食品が何カーボあるのか、代表的な食品について参考にご紹介しておきましょう。ごはん茶碗一杯(150g):5,5カーボ食パン(6枚切り)1切れ:3カーボ親子丼1人前(250g) :10カーボ中華丼1人前(260g) :11カーボカレーライス1人前(300g):13,5カーボきつねうどん1人前(200g):6カーボラーメン1人前(180g) :6カーボ焼きそば1人前(250g) :7カーボアンパン1個(80g) :6カーボお好み焼き1枚(350g) :5カーボ食後高血糖は、動脈硬化を促進させ、脳梗塞や心筋梗塞、認知症のリスクを高めることにもなります。(ホノミ漢方会報より)